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2013年01月01日

定額法への変更

平成25年3月期第1四半期(平成24年6月期)に減価償却方法に関する会計方針の変更が多く行われています。これらは、資産の使用状況の実態により適合するため、従来の定率法から定額法への変更を行っているものです。今回は、この定額法への変更についてまとめていきたいと思います。

IFRSにおける減価償却方法

<IFRSにおける減価償却方法の規定>

資産の償却可能価額を耐用年数にわたって規則的に配分するために、種々の減価償却方法が用いられる。そうした方法には、定額法、定率法及び生産高比例法がある。定額法では、資産の残存価額が変化しない場合には、耐用年数にわたり一定額の費用が計上されることになる。定率法では、耐用年数にわたり、逓減的な費用が計上されることになる。生産高比例法では、予測される使用や生産高に応じて費用が計上されることになる。企業は資産に具現化された将来の経済的便益の予測消費パターンを最も近く反映している方法を選択する。適用される方法は、将来の経済的便益の予測消費パターンに変更がない限り、毎期継続して適用される。
「IAS第16号62項」
(下線は筆者が付記)

上記(下線部分)のように、IFRSでは、有形固定資産の減価償却方法について資産の将来の経済的便益の予測消費パターンを最も反映する方法を選択しなければいけません。

この将来の経済的便益の予測消費パターンを考えた時に、設備等の利用により一定の生産量が達成できると考えて、これに応じて減価償却費を定額で計上することに不合理はありません。そのため、減価償却方法として定額法を採用することについての説明は容易なものとなります。
一方で、逓減的に生産量が減少していくことになれば、耐用年数にわたり定率法で減価償却費が計上されることになります。しかし、特殊なケースを除いて生産量が逓減していくケースは、多くはないと考えられています。このため、定率法の償却パターンについては、使用状況の実態に適合していることの合理性の説明が困難になることが多いと言われています。

「IFRSに関する誤解」における回答

そのような状況から、IFRSが導入されると有形固定資産の減価償却の方法として定率法は使えなくなるのではないかという疑問が持たれることがあります。
金融庁から公表された「国際会計基準(IFRS)に関する誤解 個別事項6」では、このような疑問に対して「IFRSは、減価償却は資産の償却可能価額を耐用年数にわたって規則的に配分するものであり、償却方法は、将来的な資産の経済的便益の消費パターンを反映したものを採用しなければならないとされている。定率法と定額法との間に優劣はない。」との回答を示しています。

定額法への変更の増加

有形固定資産の減価償却方法の変更の事例を示すと以下のようになります。

<減価償却方法の変更の事例(第1四半期)>

(有形固定資産の減価償却方法の変更)
当社グループは、有形固定資産(リース資産を除く)の減価償却方法について、従来、定率法(平成10年4月1日以降取得した建物(建物附属設備を除く)は定額法)を採用しておりましたが、連結決算を行っている親会社と会計処理を統一するため、当第1四半期連結会計期間から定額法に変更しております。
この変更は、・・・・・のため、定額法が資産の使用状況の実態により適合すると判断したことによるものであります。
この変更により、従来の方法によった場合に比べ、当第1四半期連結累計期間の営業利益、経常利益および税金等調整前四半期純利益はそれぞれ○○百万円増加しております。

IFRSにおける定率法の使用の可否については議論があるものの、最近では、上記のような減価償却方法に関する会計方針の変更が多く行われています。
上場会社において平成24年度で50社、平成25年3月期第1四半期(平成24年6月期)で80社が有形固定資産の減価償却方法を定率法から定額法に変更しているという状況です。(出所:㈱税務研究会「週刊経営財務」No.3088)
このように多くの会社が、税務上のメリットを放棄した上で減価償却方法の変更を行っている理由は、IFRS導入に向けた準備活動という側面がありますし、資産の使用状況と償却パターンの適合性を検討し直した結果であると考えられています。
いずれにしても減価償却方法を定額法に変更するこのような傾向は、今後も継続する可能性があるかもしれません。

2013年1月

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