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2025年12月01日

自動運転、自動プログラミング-AIが推し進める自動化にどう向き合うか?

AIの急速な進化とともに、さまざまな分野で自動化が加速しています。自動化は単に業務効率化にとどまらず、労働力不足解消そして技術的失業など多様な影響を社会にもたらします。今回は、自動化の中でも特に社会に大きなインパクトを与えるであろう2つの自動化領域、「自動運転」と「自動プログラミング」を対象に、将来の見通しと課題を考察します。異なる分野に属する2つの大きな自動化を併せて考察し、今後世の中で急速に進んでいく自動化にどう向き合っていくべきかを探ります。

社会に大きな影響をもたらす象徴的な自動化:自動運転と自動プログラミング

ものづくりの分野において、工場内ではロボットや自動搬送機による製造の自動化が進み、家庭内でも掃除ロボットなど自動化された製品が普及しています。こうした自動化の中で、社会に与える変化という点で最も注目すべきは車の自動運転です。自動運転は単なる工場内の効率化にとどまらず、人やモノの移動という社会インフラを大きく変える力を持っています。
もう一つ、注目すべきは自動プログラミングです。昨今の急速に進化した生成AIは文章や絵画などさまざまなものを自動作成できますが、中でもプログラムの自動作成は真に社会を変える実用的生成の代表例です。自動プログラミングが本格化することで、企業や社会が取り組むデジタル化が一気に加速していくと期待できます。
このように自動運転と自動プログラミングは、分野は異なるものの、社会に大きなインパクトを与える”AIによる自動化“の象徴的存在と言えます。

自動運転の見通しと課題

自動運転のレベル(国交省資料を基に編集加工)
図表1:自動運転のレベル(国交省資料を基に編集加工)
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自動運転は国際基準で定められたレベルに従い、段階的に普及していくと想定されます。レベル1の自動ブレーキは既に新車では義務化され、レベル2も実用化が進んでいます。レベル5の自動運転の社会実装は2030年代、そして普及は2040年代と予測されています。現状でも、自動運転の評価は、物損事故、人身事故とも大幅に減少し、人の運転より安全性が高いと言われています。今後の高齢化による交通事故減少、物流効率化、渋滞解消などの便益が明確であれば、社会が自動運転を受け入れる可能性は十分高いでしょう。
一方で、AIのミスは致命的な結果になるため、AIモデルの更なる精度向上と異常検知が必須です。例えば悪天候や予測不能な人間行動などに対し、膨大な走行シナリオでの安全性検証が不可欠です。同時に、自動運転は交通法、保険制度、事故時の刑事責任など、社会インフラ全体に関わり、レベル5となるとその整備がこれからの大きな課題となります。

自動プログラミングの見通しと課題

生成AIの出現に伴い、自動プログラミングの期待・利用も急速に拡大しています。そこで、プログラミング局面の中でも特に自動化が期待できる、コーディング・テスト局面の自動化について、自動運転に倣ってレベル化してみました。

自動コーディング・テストのレベル図表2:自動コーディング・テストのレベル
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コーディングの自動化は単純なタスクやプロトタイピングではAIが圧倒的に速いため、既に実用されています。これからのIT人材不足解消、開発スピード向上、コスト削減の観点からも、今後10年で急速に必要性が高まっていくと予測されています。
一方で、複雑な業務ロジックや企業固有のルールをAIが正しく理解・実装できるか、セキュリティ脆弱性やコンプライアンス違反の自動検知ができるかなど、技術的な課題があります。直接的な人命リスクはないものの、AIのミスが業務停止、取引停止などの大きな経済的損失につながるリスクへの対応は不可欠です。さらに、AIツール提供者やシステム開発会社、企業のIT部門間での自動プログラミングの責任の所在について明確化も必要です。

革新的な自動化を社会が受け入れる条件

どちらの自動化も“人が行ってきた難しい判断や作業をAIに任せる”という点で共通し、社会に革命を起こす可能性を秘めています。しかし、人間のミスは仕方ないと感じるのに対し、AIのミスは「設計不良」、「誰かの過失」と見なされ、心理的なハードルは高くなります。そこで、革新性の高いこれら2つの自動化が本格的に普及していくには、以下3つの条件が満たされることが必要です。

インパクトの大きい自動化普及の3条件図表3:インパクトの大きい自動化普及の3条件
(クリックして拡大できます)

条件1:便益の大きさ
これまでよりも利便性が大きく高まる、或いは大幅にコストが安くなるなど、その便益の大きさを実感できることがまず必要です。
条件2:リスクの軽減
運転の安全性担保やプログラムの品質保証によるリスクの軽減が前提条件となります。
条件3:責任所在の明確化
リスクが低くても、責任の所在が不明確であれば人や社会は受け入れません。

「どこまでAIに任せるべきなのか?」この問いに答えることは、単なる技術論ではなく、社会のあり方を考えることそのものです。同時に、「どこまでAIに任せたいか?」という各人の価値観に関わる本質的な問答にもなります。これからさらに増えてくる自動化への期待と不安に対して、正しく判断し、対応していきたいものです。

ご参考
自動運転の最新技術や事例は、こちらのページでご紹介しています。
https://www.kobelcosys.co.jp/search/index.html?query=自動運転

2025年12月

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