社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2018年04月01日

お客様の信頼を得るには
~その③ ゴールの共有と実現~

さくら

4月は入社式、新入社員を迎え桜の花とともに会社もフレッシュな気分になりますね。私が当社の社長に就任して丸1年となりました。この1年はお客様をはじめとするステークホルダの皆様へのご挨拶、30周年の記念行事、次期中期経営計画の策定と取り組むことも多くあっという間に過ぎてしまいました。2年目に入りましたので少しはゆとりを持って会社経営とはどうあるべきかじっくり考えながら社長業を務めたいと思います。どうぞ皆様のご指導ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。

さて今月は「お客様の信頼を得るには」シリーズの締めとして、その③「ゴールの共有と実現」に焦点を当てます。その①「お客様を理解する」でお客様の真の課題を理解し、その②「自分を磨く」で自身の知恵と洞察力でどうあるべきかというゴールの仮説を描き、お客様に確認する。
そしてその③になるわけですが、そのゴール(あるべき姿)が共有できたら、そこに到達するまでの時間軸を引いてマイルストンを置き、各時点での成果をセット・共有する。まずはこのゴールの共有がとても大切です。この時点でお客様は、自分の思いが具現化できるロードマップができて大変喜び信頼関係が高まります。一方で、それが実現できないと信頼は一気に崩れますね。

当社の属するITサービス産業はお客様との長いお付き合いを前提とした農耕型ビジネスモデルなので、売りっ放しではなく予定通りのQCDで本番稼働し、そして効果が出てはじめて満足いただけるものであると社員にはCS教育しています。

ゴールの共有まではこれまで①②で述べたようなデザイン思考の意識変革が必要ですが、実現に向けての活動からは範囲やQCDがプロジェクト管理の能力そのものであり、加えて従来のCS活動による行動変革が大切になります。
プロジェクト管理の勘所についてはこのコラムの2017年8月※1に述べたものや、計画と実行どちらが重要?(2018年1月※2)などでも述べていますのでここでは割愛します。

※1 プロジェクトマネジメントの勘所
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20170801/

※2 計画と実行 どちらが重要?
https://www.kobelcosys.co.jp/column/president/20180101/

CS活動において重要なポイントは2点あり、一つはゴールやマイルストン成果へのお客様の期待値をマネジメントすることです。期待値を実績が大きく上回れば満足から感動へと広がりますね。しかしながら良くあるのが、成約するまでは営業が期待値を上げておきながら受注したとたんにデリバリーチームが実現レベル以下に期待値を極端に下げてしまうケースです。これでは最初から不満が出ますね。信頼を得るには、期待値を下げるのではなく、丁寧にスコープやゴールの達成基準、そして実行にあたっての想定リスクを説明することが重要です。そしてプロジェクトの進行中にも状況は都度変化するので、その時点でのゴールまでの見通しやリスクを適宜報告する、こういった一連のコミュニケーションが期待値マネジメントということだと考えています。そうすればお客様は難易度を理解しているので自ずから期待値レベルを下げてくれますし、予定通りの成果となった時に「これくらい出来て当たり前」ではなく、「よくここまでやってくれた」という満足、感動の評価をしていただけます。

成果レベルでの満足とは別にもう一つCSの肝となるものに、プロセス品質というものがあります。これは、プロジェクトのスタートからサービスインまでの過程の各プロセスを正確・迅速・柔軟にお客様とコミュニケーションすることで、共感・安心・好感を得ることができるという考え方です。プロジェクトの成果だけで満足を得て信頼が深まれば良いのですが、お客様は一人の感情を持った人間です。共感、好感を得ることがなければ、なかなか信頼を勝ち得ることはできません。CSに関する知見によると、顧客満足には論理的満足と感情的満足があります。論理的満足はリピートにつながらず、感情的満足は圧倒的にリピートや顧客紹介につながるという事だそうですが、まさに本質をついていると思います。

当社はITサービス会社として導入させていただいたプロジェクトのお客様満足度調査を導入完了後に実施いたしております。そこでの質問項目は、A:成果物、B体制・スキル・進め方、C:態度・行動姿勢、D:契約プロセスと分類し、このBからDは上述のプロセス品質に関するものです。調査の結果は、総じて成果・スキル・コストといった項目は厳しい評価をいただき真摯に受け止めるべき点です。一方、進め方や態度・行動姿勢は高い評価をいただいているのが当社の傾向です。つまり当社は論理的満足よりは感情的満足でお客様と繋がっているわけで、これは課題が明確で複雑な心境ではありますが、ある意味では嬉しい結果です。CS調査は定点観測を継続することで課題や重要指標についての変化や成長を確認する貴重なセンサーです。これからもお客様の信頼を高めるためにも継続し、CS改善活動につなげていきたいと思います。

さて、以上3か月にわたってお客様の信頼を得るための構成要素について述べましたが、振り返ってみるとすべてに共通する重要なことは、押付けではなく都度お客様と我々がコミュニケーションして納得しながら次の工程に進めることだと思います。例えばデザイン思考で問題の本質が発見できたが、お客様は気付かれていないとします。その場合、上から目線で押し付けるのではなく質問形式で自ら気付いていただく、といった姿勢が信頼と共に共感を得られる秘訣ではないでしょうか。幸いにして当社の企業文化には「お客様に寄り添う」「最後までやり抜く」という行動姿勢があります。この社風にデザイン思考を加えれば、それこそGet Trustが実現できるのではないかと思っています。そしてその日は、そう遠くないと確信しています。

2018年4月

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