2026年02月01日
大学女子スポーツの成功例に学ぶ「選択と集中」
~競争のない市場を切り開く~

正月の風物詩となっている箱根駅伝*1が今年も1月2日、3日に行われ、青山学院大学が史上初となる2度目の3連覇を達成しました。
もともと箱根駅伝は、関東学生陸上競技連盟が主催する、いわばローカル大会です。しかし、その長い歴史と高い注目度から、全国の高校から優秀なランナーが関東の大学に集まります。その結果、全国の大学が出場する出雲駅伝*2や全日本大学駅伝*3においても、関東勢が上位を占めています。出雲駅伝は過去35回すべて、全日本大学駅伝も1986年の京都産業大学を最後に、その後はすべて関東勢が優勝しており、関東の大学とその他の地域の大学との間に大きな力の差があることが分かります。
ところが大学女子駅伝となると、ガラッと様相が変わります。全日本大学女子駅伝*4では2003年から2024年までの21年間、関東以外の大学が連続して優勝しています。特に、立命館大学は5連覇を含む11度、名城大学は7連覇を含む8度の優勝と圧倒的な強さを誇ってきました。
なぜこのような違いがあるのでしょうか。
箱根駅伝は高校の長距離選手にとって憧れの舞台であり、出場の可能性がある大学への進学を希望するのは自然な流れです。また、大学側にとっても、連日メディアに取り上げられることで大学のイメージや認知度が高まり、練習施設などの環境整備を進めて強化を図る動機となります。大会は2日間で10時間以上にわたりテレビで生中継され、沿道にも多くのファンが集まって声援を送ります。各スポンサーの広告効果は約60億円相当と言われており、いかに大きなイベントになっているかが分かります。
これに対して、女子の大会ははるかに注目度が低いため、費用対効果を考えても「強化するなら男子を」という判断を関東の大学が下すのも無理はありません。また、女子の最大のレースである全日本大学女子駅伝は1983年の第1回大会から2004年までは大阪で、2005年以降は宮城で開催されています。地元大阪での開催が、関西の大学が力を入れてきた一因といえます。さらに、宮城開催になってからは東北福祉大学が強化に乗り出し、2022年から13位→8位→5位→4位と着実に順位を上げてきています。
このように、関東以外の地域の大学は一部の競技に特化して強化する「選択と集中」により、差別化を図るとともに、地域に根差した大学のイメージ向上につなげていると考えられます。
他にも関東以外の地域の大学による成功例として有名なのは、吉田沙保里氏や伊調馨氏といった多くの金メダリストを輩出している女子レスリングの至学館大学(以下、至学館)です。
至学館の成功もまた「選択と集中」にあります。1980年代後半、世界女子レスリングが国際競技として整備され始めた段階でいち早く参入しました。この頃の女子レスリング界はまだ競争が少なく、先行者利益を獲得できるブルーオーシャン*5の状況にあったといえます。
また、創部当初から「世界で戦える選手を育てる」という明確で高い目標を掲げ、国内外の有力指導者の招聘、海外遠征や国際大会への継続的な参加を通じて、国際基準の経験と戦術力を養ってきました。強化が進むにつれて、専用練習施設の整備や国際競技団体である世界レスリング連合(UWW)との提携など、大学の限られた人的・施設的リソースを集中投下することで、世界水準に近い育成環境を構築し、継続的なトップ選手の輩出を実現しました。
このように、至学館の成功は、競争の少ない段階(ブルーオーシャン)での先行参入、国内の枠にとらわれない高い目標とそれに根付いた文化の醸成、そして限られたリソースの集中投下によるものだと考えられます。
企業の持続的成長のためには、既存の厳しい競争環境(レッドオーシャン)から脱却し、他社が十分に対応できていない市場、すなわちブルーオーシャンの創出を常に狙うことが重要です。
現在、AIによる大きな技術革新の時代を迎えています。過去を振り返ると、大きな技術革新を契機としてブルーオーシャンが創出されてきました。例えば、インターネットの普及により、Amazonに象徴されるEC市場や、Googleを中心とした検索連動型広告といった新市場が誕生し、既存産業とは異なる価値を提供する企業が急成長しました。また、スマートフォンの登場は、個人に密着したサービスを可能にし、UberやAirbnbなど従来の業界構造を超えた市場を創出しました。
AIもまた、ブルーオーシャンを生み出す「機会」を与えてくれるでしょう。当社もこの変化を好機と捉え、既存ビジネスの常識にとらわれることなく、潜在的な顧客ニーズやこれまで十分に応えられてこなかった領域に目を向けなければなりません。そのためには、失敗を恐れず、既存事業の枠を超えた挑戦を歓迎する組織文化を徹底的に育てていくとともに、新たな顧客価値を創出し、持続可能なビジネスモデルとして社会に提供できる事業領域に集中して経営資源を投下していきたいと考えています。
ご参考
*1:東京箱根間往復大学駅伝競走
*2:出雲全日本大学選抜駅伝競走
*3:秩父宮賜杯 全日本大学駅伝対校選手権大会
*4:全日本大学女子駅伝対校選手権大会
*5:「ブルーオーシャン戦略」Kim, W. C. and R. Mauborgne著
既存の競争の激しい事業領域をレッドオーシャン(血みどろの海)、新たに創造された市場をブルーオーシャン(血に染まっていない海)に例え、企業の持続的成長のためにはブルーオーシャンを創り出すことが必要であると説いている。
2026年2月
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