代表取締役社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2026年01月01日

逆転劇から学ぶ「現状維持」のワナと克服法
~「チャレンジ」を推進するために~

逆境を乗り越えていく安青錦の強さ  あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。

今年開催されるサッカーのFIFAワールドカップ2026 (開催国:カナダ、メキシコ、アメリカ)。グループステージの組み合わせが決まり、「優勝」を目標に掲げる森保ジャパンは、オランダ、チュニジア、そして欧州プレーオフの勝者と同じ組に入りました。 スポーツ界では世界大会が続きます。来年のラグビーワールドカップ・オーストラリア大会(Men's Rugby World Cup 2027)の組み合わせ抽選も昨年12月3日に行われ、世界ランク12位で「バンド2」(いわゆる第2シードグループ)に入った日本は、予選プールでフランス、アメリカ、サモアと対戦することが決まりました。
ラグビー日本代表は、組み合わせ抽選前の最後の欧州遠征でジョージアと対戦。22―23とリードされた残り1分、相手の反則から李承信選手がPG(ペナルティーゴール)を決め、25―23で逆転勝利しました。この試合前、日本は世界ランク13位、ジョージアは11位でしたが、この勝利によって日本は7-12位の「バンド2」に滑り込み、逆にジョージアは13位へ後退して「バンド3」になりました。
まさに土壇場での大逆転勝利でしたが、その前のウェールズ戦は全く逆の展開で、最後のワンプレーで逆転PGを決められ、23-24で惜敗。この試合に勝っていれば、その時点で「バンド2」入りが確定していただけに、相手が一人少ない状況でPGを失敗した李選手は、「優位な状況で“決めないといけない”と、自分にプレッシャーをかけてしまった」と、逆転負けに悔しさをにじませました。

こうした終盤での逆転劇は、なぜ起こるのでしょうか。プロスペクト理論によると、人は「参照点」と呼ばれる基準をもとに利益や損失を考え、利益がある状況では安全を重視し、損失がある状況ではリスクを取る傾向があるとされています。
勝っているチームは「今の状態=勝利の維持」を基準にしているため、安全を重視し、守備を固めるなど消極的になりやすい傾向があります。一方、負けているチームは「今のままでは負け」という損失の状態にあるため、失敗を恐れず攻撃に人数をかけたり、守備を薄くしたりするなど、リスクを取る判断がしやすくなります。しかも、スポーツでは1点差でも10点差でも負けは負けなので、「逆転できる可能性」を最優先に考えます。
さらに、残り時間が少なくなると、判断は「守るか攻めるか」という単純な二択になりがちです。勝っている側は安全策を選び、負けている側はリスクの高い攻撃を選ぶことで、試合の流れ自体が逆転しやすい状況になります。加えて、プレッシャーは勝っている側に強くかかり、負けている側は「失うものはない」という気持ちから大胆になり集中力も高まります。こうした「追う側の強み」と「追われる側の弱み」は、参照点の違いをはじめとした心理的要因が大きく影響した結果だといえます。

では、「追われる側の弱み」を乗り越えるにはどうすればよいのでしょうか。プロ野球では、1979年の日本シリーズ第7戦・広島東洋カープ対近鉄バファローズの試合が「江夏の21球」として有名ですが、無死一、三塁の場面で広島ベンチが交代の準備を始めたことで、江夏豊投手は「信頼されていないのか」と憤り、闘争心を燃やしました。それを見た衣笠祥雄選手が「中途半端にだけは打たれるな」「もしお前に何かあったら、オレもユニフォームを脱ぐよ」と声をかけたことで、江夏投手は冷静さを取り戻し、強気の投球ができたと言われています。
結果的に、広島ベンチがリリーフ投手を準備させたことによって江夏投手の参照点が揺さぶられ「攻め」の姿勢を促したこと、さらに仲間の言葉によって不安が取り除かれ冷静になれたこと。この二つの働きかけによって、「追われる側の弱み」を克服できたと考えられます。

ビジネスの現場でも、人は「失敗による損失」を過大に評価し、現状維持を基準(参照点)としてリスクを避ける傾向があります。多くの経営者が「失敗を恐れずチャレンジしよう」と声を上げていますが、実際には社員の多くが「チャレンジの重要性を理解しながらも動けない」状態に陥っているのではないでしょうか。新しいことに取り組むたびにリスクの有無や必要性を繰り返し問われると、「何もしないこと」が正解のように感じてしまいます。さらに、人事評価で「失敗」がマイナスに扱われる環境では、「失敗を避けること」が最優先になってしまいます。

しかし、現状維持にとどまっている限り、組織も個人も成長は望めません。萎縮せずにチャレンジし、数多くの失敗から学ぶことが重要なのです。
まずは、組織の評価基準の一つに「チャレンジ」を明確に位置づけることが不可欠です。「成功」だけでなく「チャレンジによる失敗も評価する」と宣言し、人事評価を加点主義に改め、チャレンジの難易度などを考慮し、失敗を適切にプラス評価する仕組みが求められます。さらに、上司による事前承認プロセスや、周囲からサポートを受けやすくする仕組みを設けることも有効だと考えます。
当社も、今年は「チャレンジ元年」となるよう、さまざまな変革を進めていきたいと考えています。


2026年1月

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