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2019年12月01日

第30回 お客様のビジネスの発展に貢献するために
常務取締役 技術開発本部長 林 高弘

当社は、2019年1月に「技術開発本部」を発足させ、私が本部長に就任いたしました。今回は、そのご紹介をさせていただきたいと思います。

1.設立の背景

今、日本のIT業界は繁忙を極めています。これは主要なパッケージソフトのサポート切れが迫っているという要因もありますが、何と言っても各企業が日本全体の「深刻な人手不足」を実感したうえに、政府が進める「働き方改革」により、労働時間が短縮されIT化が必須となっていることが背景にあると思われます。「日本のITはパッケージをそのまま利用せず、個別開発が主流、日本のITは世界に比べると異常」と言われ、もう20年以上経ちます。今もIT業界繁忙の内訳は、個別ニーズの受託開発やパッケージのカストマイズが主流のようです。

一方、AI、IoT、データ活用などの新技術が大きく取り上げられています。個人の購買データを分析し、次の販売戦略に活かす、あるいは製造装置の各種のセンサー情報を解析し、故障予知や予防保全に利用する、などの応用が確実に浸透しています。
今、我々もこれら技術に遅れることなく、追随しなければ、いずれは競合他社に劣後するのではないか、この受託開発が旺盛な時期にアクションを、という危機感がありました。

2.両利きの経営

最近、経営書で良く語られている言葉で「両利きの経営」というものがあります。両利きとは、右手と左手を器用に使いこなすことですが、ここで言う「両利き」とは「知の探索」と「知の深化」を指します。すなわち、「知の探索」とは従来には無い、新しい製品やサービスを開発することであり、「知の深化」とは、今の事業の主流となっている従来の製品やサービスを磨く事にあります。

ITサービス産業に例えますと「知の探索」は新しい技術の開発であり、「知の深化」は従来の受託開発の生産性向上に相当します。
では、この2つはどちらが簡単でしょうか?
これは明らかに「知の深化」の方が簡単で、経営者はつい、今実際に収益を上げている技術・製品を磨く事に注力しがちです。また、「知の探索」によって生まれる技術・製品も、最初は売上も小さく、収益は赤字となるため、継続して進める事が難しくなります。
そこで、この両者をバランスよく進めるためには下記の3つの事が重要だと言われています。

  1. 「知の探索」部門に必要な機能(例:開発、生産、営業)をすべて持たせて、「独立性を保たせる」こと。(出島の設置)
  2. 「知の探索」部門と「知の深化」部門の間での異なるルール・評価基準をいとわない。
  3. トップレベル(例:担当役員レベル)では、その新規部署が既存の部署から孤立せずに、両者が互いに知見や資源を活用しあえるよう、「統合と交流」を促す。
3.技術開発部門の設立

正直に申しますと、前述のようなところまで深く考えたわけではないのですが、少なくとも「技術開発部門を従来の部門から独立させ、活動をしてみよう」、ということで、2019年1月より本部を設立、活動をスタートさせました。これは社外の皆さんへのメッセージであると同時に、当社従業員に対し「新技術にも取り組むぞ」、というメッセージでもありました。したがって、本部発足にあたっては一部、社内公募による募集も行っています。

4.技術開発本部の活動概要

この本部では、主に下記のような活動を行っています。

  1. AI、IoT関連の技術開発
    当社は日本IBMの子会社ではありますが、もう一方の株主である神戸製鋼所の研究開発部門や、製造部門と連携し、その土俵を利用させていただき、一部は共同にて技術開発を行っています。現在、AI技術の開発は、まずは画像認識やRPAとの連携技術に力点を置いています。
  2. クラウドネイティブでの開発技術
    コンテナ、Web-API、マイクロサービスなどに象徴される、クラウド上での開発技術が今後の主流になると思われ、それらの検証、開発を積極的に行っています。また、クラウド上でのセキュリティ確保についての技術開発も行っています。
  3. デザイン思考、要求仕様技術
    ここ数年、世の中に浸透しつつある「デザイン思考」の考え方を全従業員が習得し、お客様の潜在ニーズに基づくシステム構築が出来るよう、教育、研修を行っています。
  4. プロジェクトマネジメント強化
    システム開発の重要な要素であるプロジェクトマネジメントの強化のための教育、研修を行っています。
  5. 社内コミュニティ
    社内では、特定の技術に興味を持った人間が集まるコミュニティが出来つつあります。これら有志での活動を支援する活動も当本部の役割です。

最後に、受託業務の旺盛な現況に甘んずることなく、新技術への取り組みと両利きの経営で進め、当社だけでなく様々な会社やグループのオープンシステムやエコ(共生)システムとの連携も活用していく方針です。当コラムを読んでいただいているお客様に、Trusted Partnerとしてこの分野でのIT化を促進させ、お客様のビジネスの発展に貢献できることこそがCustomer Satisfaction(CS)であると考えます。ぜひそのような機会が訪れることを心待ちにしております。いつでも気軽にお声掛けください。

2019年12月

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