社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2015年09月01日

採用活動から見える産学のあり方と連携

すすき

今年は政府の要請を請けた経済団体の意向によって大手企業の採用活動開始時期が3カ月遅くなりました。例年であればすでに内定をもらい、夏休みを大いにエンジョイできた学生諸君も多かったはずですが、今年は暑い街中を夏には不似合いなリクルートスーツを着た学生を見かけることが多かったですね。本当に大変だと思います。「学生は学業優先」と言う政府の主旨ですが、もっと根本のところを議論して変える必要があると思います。現状では、採用する企業側も学生も混乱しているのではないでしょうか。書類選考や何次にもわたる面接をしても、どうしても表面的で双方の一部分のみで評価せざるを得ないですし、どちらももっと納得できる相手を選びたいはずです。何といっても「企業、大学のあり方」という本質に言及しない限り何も変わらないのではと危惧します。

同じIT産業でも、アメリカではインターンシップが採用活動で大きな比重を占めています。インターンシップの期間にお互いを見極めることもできるし、学生も希望する職種がどんなものか、希望する企業はどんな所か、どんな人々が働いているのか、自分の能力でやっていけるのかなどを、実際に確認することができると思います。一方、無償で実務をさせるなど、社会問題になっている部分もあります。

昨年、シリコンバレーでスタンフォード大学や周辺のスタートアップ企業などを見学した際に印象的だったのは、学生が即戦力の力を身につけようと必死に企業のセミナーや講習などに参加し、企業側からも多くのエンジニア、研究者が学生と一緒に勉強している姿でした。ここでは、大学と企業の垣根が非常に低くて一体となっていることが実感できます。事実、全米でもトップクラスのスタンフォード大学は企業からお金を集めるのもトップクラスだそうです。

それはITエンジニアの人気度や年収にも表れており、毎年行われる「なりたい職業」のトップ10には必ずITエンジニアが入っています。それを反映して平均年収も9万ドルを超えています。イノベーション産業が活発であり、企業の攻めのIT投資が積極的なアメリカでは、ITエンジニアは憧れの職業です。トップクラスの企業に採用されるのは学生にとっても大変な競争ですし、企業にとってもトップクラスの優秀な学生を採用することは非常に大変です。日本でもすでに一部の大学は変わってきているし、企業側も変わってきていると思いますが、まだまだ全体が変わっていくのには時間が掛かるかもしれません。

そういう環境の違いがある日本では、学生時代の勉強が企業の実務に必ずしも直結しないので、多くの企業が、採用してから研修し、OJTで一人前のエンジニアやセールスに育てていくことに力を注いでいるのが現状です。現時点で学生の方々にアドバイスしたいのは、まずは一人前のエンジニア、セールスに育成してくれるプログラムがしっかりしているか、その会社にいる先輩などからしっかりと確認することです。その社風が自分に合うかどうかなど入ってから気付くこともありますし、今は業績の良い会社も、企業寿命40年説もありますから、今後10年、20年にわたって好調かどうかわかりません。不幸にしてその会社を離れる場合でも、IT産業は他の産業に比べて技術や製品・サービスの共通性が高いので、一人前になれば、転職は比較的容易かもしれません。したがって、まずは希望する職種に対する理解を深めること、しっかりとした研修、育成の仕組みがあるかに重点を置いて企業研究をしてください。当社でも充実したプログラムを用意していますので、学生の皆さんにそういう所もしっかりと見て欲しいと思います。

学生、企業共に、産学連携のあり方の根本的解決には時間が必要ですが、採用活動にあたっては、現在の制約の中でも、企業側から学校側や学生に働きかけて、もっと会社や仕事を理解してもらう努力をする必要があると思います。当社としても産学協働、インターシップ、オープンオフィスなど、今後さらに活発に取り組まねばと思っています。


2015年9月

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