社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2015年08月01日

宇宙からの便り、探査衛星

滝

最近、TVや新聞などで話題になっていますが、2006年1月に打ち上げられ、9年と6カ月かけて冥王星(何時の間にか準惑星になっていた)に最接近中のNASAの惑星探査機ニューホライズン。遠い宇宙から鮮明な画像や様々な観測データが順次送られてきており、茶色くて白いハートの模様の表面の鮮明な写真はSF小説の世界のよう。2004年に打ち上げられた欧州宇宙機関(ESA)の彗星探査機「ロゼッタ」に搭載された着陸機「フィラエ」が2014年11月にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星にかろうじて着陸。軟着陸には失敗し、予定の平原ではなく、太陽の当たらない窪みに落ち込んだために太陽電池が働かず、休眠状態に。太陽に近づくにしたがって太陽電池が機能し、今年6月に7カ月振りに信号を送ってきました。それまでに蓄積した観測データなどもこれから送られてくるとのことなので、地球などの惑星も太陽が誕生した際の小さなチリがやがてくっついて彗星となり、さらにそれが寄せ集まって惑星ができたという仮説を実証できるデータがあるかも知れません。そこで思い起こすのは2010年に帰還した「はやぶさ」。すでに3本も映画化され、皆さんもよくご存じと思いますが、その生みの親でありプロジェクトマネージャーであった川口淳一郎博士のお話を直接聞く機会がありましたので、皆さんに少し紹介をしたいと思います。

2003年に地球を出発後2年以上かけて小惑星「イトカワ」に着陸し、岩石のサンプルを採取し、離陸して再び地球に帰還するという、月以外の天体では世界で初めて試みた挑戦的なプロジェクトでした。NASAは“世界で初めて”は全てアメリカがやるというプライドのもと、着々と各種の探査機の実績をあげてきました。それを横目に羨望の目で見ながら「はやぶさ」を開発していたのだそうですが、アメリカのまねではなくオンリーワン、世界初のチャレンジをしようということでイオンエンジン3基同時稼働、1000時間稼働、イオンエンジンでの地球スイングバイ、そして、「イトカワ」にタッチダウンしてサンプルを採取、地球に帰還するというオンリーワンを目指したのです。ご承知のように途中でも様々なトラブルが発生しながら、それを克服して4年で戻ってくる予定が7年以上もかかりましたが、2010年に無事帰還、鉱物の微粒子の採取に成功したのはご存じの通りです。

川口博士のお話から「はやぶさ」そのもよりも、「はやぶさ」始め多くの困難なプロジェクトを経験し、また多くの優秀な人材を育ててきた経験から得た、多くのメッセージをいただきました。印象的だった言葉を紹介します。

  • プロジェクトを成し遂げたとき、総理大臣に『いちばん大切だったことは何ですか?』と聞かれ、私は『技術はもちろんですが、根性です』と答えました。
  • 何かを成し遂げるためには、やれない理由を探すより、やれる理由を探す。
  • 予算や人材が十分に確保されたプロジェクトなんてない。プロジェクトスケジュールは必ず遅れるものであって、理想でしかない。
  • 人材の育成では、思い切って後輩に任せる、自分はアドバイザーに徹することで、人材が育成できる。自分が一番できるが、それをやってはいつまでたっても人材が育たない。マニュアルだけでは人は育たない。その場で一緒にやって見せ、そこで経験したことが身になる。
  • 一流はリスクなどあらゆることが分かっているので、なにもなかったようにやりぬく、二流は予想外のトラブルも起こすが、なんとかやりきる、三流は予想通り失敗する。問題も起こったが、良くやり遂げたと二流の人が注目されるが、一流こそ評価してあげるべき。
  • 今回のプロジェクトはコスト、スケジュール、技術の3大リスクの塊。その中でプロジェクトマネージャーの仕事はコストやスケジュール管理よりも飛行計画というシナリオを描いて、目的を達するまでメンバーを導く役目。

宇宙開発のプロジェクトもITのプロジェクトもそれを成功させるためのポイントや人材育成など多くの共通点があり、我々の仕事でも大いに役立つなるほどというメッセージをいただきました。

映画「はやぶさ 遥かなる帰還」では渡辺謙が川口博士を演じていましたが、当のご本人は似ても似つかなくて小柄で温和な方でした。ダジャレやユーモアあふれるお話連発で最後まで笑いっぱなし。実はこれが壮大な困難に満ちたプロジェクトに当たり、メンバーのモチベーションを失うことなくやりとげることができた真因なのかと思いました。


2015年8月

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