社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2015年02月01日

トマ・ピケティが今注目を集める

雪ウサギ

大寒も過ぎましたが、まだまだ寒さが続いています。しかしながら、少しずつ日も長くなり、桜の枝先には硬い皮に覆われた芽が一杯付いてきているのを見ると、なんとなく日差しも暖かくなった気がして「冬来りなば春遠からじ」というのがぴったりの季節となりました。

さて、最近の経済関連の書籍では、資本主義やグローバリゼーション、民主主義などを関連付けたテーマがヒットしていますが、多くの人々がこのテーマに関心を持っているからだと思います。水野和夫著「資本主義の終焉と歴史の危機」、ダニ・ロドリック著「グローバリゼーション・パラドックス」、トマ・ピケティ著「21世紀の資本」など、様々な本が出ています。それらの本では欧米の「行き過ぎたグローバリゼーションは資本主義と民主主義の健全な発展の弊害になる」との観点から疑問を呈しています。

資本集中と所得格差は低成長国では第一次世界大戦前のヨーロッパ並みになり、世襲制に逆戻りしつつある。また、資本主義の根幹である「資本が利子(利益)を生む」という構造が金融緩和で金利がゼロにまでなり、さらに、先進国はもちろん新興国でも経済発展の根幹である人口の減少が起こっている。その結果、資本主義と共に発展してきた民主主義に危機が迫り、近代国家の仕組みが崩壊し、歴史的転換が起こるのであろうと。

また、グローバル企業が利益のために新興国の安い人件費を求めた結果、国内での雇用が減少し、その失業対策に税金が使われる。一方、グローバル企業はより法人税の少ない国に本社を移転登記し、税金の支払いを少しでも減らそうとしている。企業の社会的責任は、雇用を確保し、利益を上げて税金を払うことですが、この論理(倫理)が崩れようとしているのではないかと警告しています。

このように、今の経済は人類が初めて直面する大きな問題をはらんでいるという指摘がありますが、前述の水野氏は次のように述べています。「我々は現状否定ではなく、現状を認識した上で、人類が経験したことのない世界の転換期において、もっともっと英知を出して乗り越えていかなくてはいけない」と。英知は経済学者に挑戦してもらうとして、私は、一企業人として、利潤の追求と、株主、社員、地域社会などステークホルダーへの還元、法令遵守・企業倫理などのバランスを取るという経営の軸をしっかりと持っていきたいと思います。


2015年2月

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