社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2018年06月01日

壁に耳あり 障子に目あり
~デジタル時代に事実は隠ぺい・改ざんはできない~

ROSE

6月になり早いもので既に2018年も折り返し地点に近づいてきました。本年度の目標値や重要施策のKPIに対する進捗を半期の節目に確認し、軌道修正を行いアクセルやブレーキを踏むタイミングを計る事は、当たり前のこととはいえ大切です。当社も足元のITサービスの旺盛な需要に支えられ、ありがたい事に繁忙を極めておりますが、半期ごとのリソース配分の見直しも最重要課題と捉えています。また忙しさにかまけて外してはいけないルールやプロセスがおろそかになる事の無い様に社内にコンプライアンスの遵守については肝に銘じて周知徹底しています。

コンプライアンスに関して言えば、まずは皆様にご迷惑とご心配をおかけした神鋼グループの品質問題につきましては、グループの一員として再発防止に協力してまいる所存です。しかしながら世間では国政での財務省、防衛相、文科省などの対応や、週刊誌報道など、グレーな話題がとかく多いこの頃ですね。最近では大学スポーツに関するニュースが毎日のように報道されています。

これらの話題に共通していると思うことは、時代の変化に対し当事者たちの感度が鈍いということです。昭和の高度成長期から平成そして新元号の時代に移りゆく4~50年のなかで、いくつもの切り口で変化があるのが当然です。しかしながら、旧態依然として昭和の感性で判断・行動している人が、いまだに存在しているという証ではないかと思います。

何が変わったと言うと、大きく分ければ以下があげられます。

  1. (アウトかセーフかの)ルール・基準が人権・環境保護寄りに大きく変化
  2. IT環境の変化(どこでもいつでも誰でもデータ記録)
  3. 報道統制が効かない(週刊誌の過剰報道やSNSの炎上など)

これらの変化がなければ昨今の不祥事の大半はもみ消されるか、報道はされても辞任や辞職、懲戒にまで追い込まれることはなかったのではないかと思います。不祥事を起こした当事者はこの変化の影響を甘く見ていた、つまりは感度が鈍かったのでしょう。

上記のうち①と③はいろいろな専門家のご意見にお任せしまして、②のIT環境の変化についての考えを業界の一員として述べさせていただきます。

昨今の不正の動機・原因は様々ですが、共通するのは不正を起こした事実を隠ぺいしたり、改ざん・ねつ造をしている事です。ところが隠ぺいが表面化し、さらには改ざんやねつ造の事実が発覚しているのです。これはどういう意味を持つかというと、昔は記録がデジタル化されていないので、「事実があってもなかった」、「廃却したので現存しない」で済まされましたが、今は原本記録がデジタルで作成されます。そのバックアップがコピーされ、分散して展開されるので記録データを完全抹消・隠ぺいすることは不可能という事です。また昔は「オフレコだよ」というと本当に録音しなかったのに対し、今はスマホでも録音が可能ですし、オフレコのルールそのものも変化している様に思えますし、マスコミの報道姿勢も従来とは変わってきています。更に言えば、センサーやモニター機器が安価になり、大量に世の中へ出ることで、街中での防犯ビデオや車のドライブレコーダーなどが普及し、一般人の不正・不法行為もデジタル録画・保存される時代になっています。もう、「誰も見ていないからバレないだろう」、とか「ここだけの話」なんてありえません。データの改ざん、ねつ造はデジタル時代には消滅するでしょう。すべてのヒト・モノ・カネ・情報の動きはブロックチェーン技術で、タイムスタンプが押されたデジタルデータが分散記録されるので隠ぺいも改ざんもできないのです。

「安全には問題がないし、私欲ではなく会社が儲かるためにやるのだから、約束基準を守らず使いまわしをしても良いだろう、お客様には分からないのだし」、という考えは現在は許されないのですね。(これは日本の高度成長期では普通だったのかもしれませんし、今もアジアの途上国ではまだ残っているところもあるでしょう)

表題の「壁に耳あり 障子に目あり」は、そこに人が隠れて見張っていて秘密が漏れるたとえですが、それは盗聴器や盗撮機に置き換えられますね。さらにはサイバーアタックも含めて、事実はどこかで、誰かによって、いつも記録され、隠ぺいできなくなっていることを現代人はすべからく自覚しなくては行けません。
一方でポジティブに捉えれば、これは犯罪抑制に寄与するものです。犯罪や暴力、子供のいじめもそうですが、大抵は誰も見ていないところで発生するものです。それを誰かがどこかで見ている、というリスクを意識すればそれらのブラックな行為は抑制されるのではないか、と期待できます。

自身の行動の善行は厳しく、悪行は楽で誘惑に満ちています。どちらの道を行くか判断に迷うとき、昔は誰が見てなくても神様や天に見られて恥ずかしくないように行動する、というのが判断基準でした。でも自分に甘くなる時、そんなもの存在しない、誰も見てないからと楽な方に行きがちなのが人間の煩悩ですね。それが、デジタル時代には何かのセンサーやレコーダーがモニターしているので、悪いことはできず、してもすぐに捕まる、だからやらないという時代になりそうです。(子供が自分でグレーゾーンの判断をしなくなるのは逆に心配ですが)

コベルコシステムも冒頭で述べたようにコンプライアンスの遵守について周知徹底しています。不正には多様なものがあり完全になくすことはできませんが、事実は覆すことができないので、おかしいと思ったことはそれに気付いた人が、その時点でマネジメントや同僚に相談することを奨励しています。これはIBMのビジネス・コンダクト・ガイドラインに準拠したものですが、このガイドに準拠するからコンプライアンスが遵守できるのではなく、ガイドの意味することを理解して正しい行動を取る社員がいるからこそ遵守できるのだ、ということも社員に言い続けています。悪い事実を隠すのではなく、天の視点で対処する、すべての社員、マネジメントがそういう考えに賛同し行動すれば、CSR企業として胸を張れるでしょう。そうなりたいと願っています。

2018年6月

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