社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2017年06月01日

論文のすゝめ

論文

5月18日、19日に京都国際会館にて第55回IBMユーザーシンポジウムが開催されました。これはIBMユーザー研究会が毎年この時期に主催しているもので、全国の会員から応募された論文の中から優秀なものを選出・表彰し、発表・聴講する機会を提供しています。全国各地区の研究会が主催地を持ち回りで担当するのですが、今回は関西IBMユーザー研究会(関西研)がホスト役で、京都で開催されました。
関西研の会長を当社関連会社であるコベルコソフトサービスの青方社長が拝命していることもあり、コベルコシステムグループとして精力的に論文応募し、シンポジウムにも私を含めてたくさんの社員が参加しました。その甲斐あってか、応募総数124件のうち当社からは銀賞2件、奨励賞3件が入賞しました。加えて神戸製鋼所も銀賞、コベルコソフトサービスも銅賞を受賞。さらに当社には、これまでの論文応募と受賞の功績が認められ「IBMユーザー論文活動貢献賞」をいただけて嬉しい限りでした。
シンポジウムでは金賞、銀賞の論文発表があり、私は当社の発表をすべて聴講してきましたが、各々が良く準備しており、手前味噌ですが説明も内容も立派ですばらしく、こういう社員が当社にいることを誇りに思いました。私はコンサルティングサービスのビジネスに従事して以来、折に触れ論文執筆の重要性を訴えてきているのですが、今回のシンポジウム参加で改めてその価値を感じましたので、この場を借りてその思いをお伝えしたいと思います。

論文を書くことの効用はいくつかありますが、まず「文章で表現することで考えが整理されること」が挙げられます。推敲を加えることで5W1Hが明確になり曖昧さが排除されること、自分は何を言いたかったのかを再認識し的確に表現することができます。
次には「論理的思考が身に付くこと」でしょうか。課題の設定となぜその課題を設定したのかという背景、仮説(原因や解決策の仮説など)の設定、仮説の検証(やってみてどうだったか)、考察(結論:次に向けて)といった一連の論理的な流れで物を考える癖が身につくことは、日常のビジネスを遂行する上でも大変役立つと思います。プロジェクトをやり終えて振り返る時に、やってきたことや結果がどうだったかを論理的に整理できます。これからやろうとする場合には、あらかじめチャレンジテーマの設定、成功へのキーアクション、マイルストンなどを計画し、その通りにできたかどうか、できなかったらそれはなぜか、といった具合にPDCAが回せて次に改善できるようになります。これはプロジェクト計画を立てる際にも有効ですし、個人のチャレンジ目標の設定と検証にも役立ちます。
第3には、人の論文を読んだり、その発表を聴いたりすることで「新しい技術や手法を知る」ことができます。また今回気づいたのは、そのテーマ設定(=課題)のカテゴリーやその原因はそれほど大きくは変わっておらず、ソリューションやメソドロジーが日々変化していることです。なので、最新の技術に追随するのが難しいかな、と思いながら発表を聴いていたのですが、課題や原因については共感を覚えるので、十分に刺激を受けて(眠らずに!)新しいソリューションについて聴講することができました。
ここで言いたいのはテーマ設定(=課題)のカテゴリーや課題の原因が変わらないということは、論文のテーマは身の回りにゴロゴロしており、テーマ設定に困ることはない、ということです。

私は42歳にして日本IBM内で営業からコンサルタントに異動したのですが、それまでは論文を書くことはもとより、読むことすらしていませんでした。それがコンサルタントは、毎年1件の論文執筆することを目標設定されたので、最初は戸惑いながらも先輩のアドバイスも受け、やむなく書き始めたのです。ところが、いざ書いてみると上述のような効果を肌身に感じて病み付きになり、今日に至っています。私の経験からも、まずは強制的に論文執筆をするよう、会社や部門で推進してもいいのではないでしょうか。一度執筆すれば部門や会社の論理的思考が高まり、生産性が向上するかもしれません。

日本の大学は文系と理系に明確に分かれ、文系の学生は数学的センスのある人でも大学ではほとんど数学に関わらず、論文も書かずに卒業してしまいます。今このデジタル革命の真っただ中で必要な人材は、数学的、論理的な思考とビジネスセンスを兼ね備え、コミュニケーション能力を有する人であり、それが企業の生産性を左右すると思います。欧米の大学ではこういった人材が多く輩出され、論文数も圧倒的に日本と差があり、それが大学ランキングにも表れています。欧米諸国の生産性が日本を圧倒していると言われる昨今ですが、その原因の一つはこういった人材の多寡にあるのかもしれません。

これを打破するための第一歩として、論文執筆を日本のビジネスパーソンに勧めたいと思います。まずはテーマ設定から始めてみませんか。

2017年6月

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