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2023年12月01日

デジタル化を加速するデータ活用のKGI/KPI

基幹システム刷新や全社デジタル化推進のプロジェクトでは、必ずと言ってよいほど“データ活用”が主要目的の一つとして掲げられています。データ活用はシステム刷新やデジタル化推進と不可分であり、多くの企業にとっての重要課題となっています。製造業の代表的なDXと言えばスマートファクトリーですが、その肝はデータ活用です。経済産業省のスマートファクトリー・ロードマップ※1において、スマート化の進展はデータ活用レベルで定義されています。また、最先端の“データドリブン経営”を目指す企業は、誰もがデータに基づいてあらゆる意思決定を行うことが経営課題になります。

多くのメンバーを巻き込んで取り組むプロジェクトは、目指すべき目標(ゴール)が定められ、メンバーによって共通に理解されていることは当然のことです。目標がないまま進めるプロジェクトは、途中で迷走します。メンバーは目標が見えないと達成意欲が湧かず、完了基準がないと疲弊していきます。プロジェクト遂行に必要なリソースやキャッシュアウトの投資を行うにも、目標がないと投資規模の妥当性が判断できません。ところが、“データ活用”を主な目的とするプロジェクトや、“全社データ活用”を経営課題として掲げている企業において、その目標が明確に示されないまま進められているケースをよく見かけます。

全社データ活用に向けた8つの成功要因を主導する部門例図表1:全社データ活用に向けた8つの成功要因を主導する部門例
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2023年8月の当コラム※2で「全社データ活用に向けた8つの成功要因」を論じました。上の図表1では、その8つの成功要因に対し、それぞれを管轄する部門例を赤字で記載しています。社員のデータ分析スキルやリテラシー向上、推進・支援組織についてはDX推進部門と人事部門が主導している企業が一般的です。BIやデータエンジニアリングなどのツール・技術、データの整備についてはシステム部門が主導しています。しかし、成功指標や推進状況を評価するためのKPI(Key Performance Indicator)の設定・評価を管轄する部門は明確でなく、忘れられています。システム部門はデータ統合化やセキュリティなどの環境整備に主眼をおき、目標・KPI設定は業務部門の管轄だろうと見ているでしょう。一方の業務部門は、データ活用は業務目的に対する手段とみているのか、主体的に設定しようとしません。

m2312_2.jpg図表2:データ活用の指標例(KGI/KPI)
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そこで、今回はデータ活用の目標とする評価指標、KPIの具体例を一度考えてみましょう。まず目標については、その指標を決め、目標値を定量的に設定します。これによりゴールの達成基準を関係者が共通に認識し、進捗状況も客観的に測ることができます。まず、目標設定は、「データ活用を進めることでどのようなビジネス面の成果を狙っているのか?」といった業績指標を示すのが、一番分かり易いでしょう。例えば、収益〇%増加、製造原価〇%低減、製造リードタイム〇割短縮など業績面の指標と数値を設定します。業績の実績や計画データを活用することで、経営者が事業ポートフォリオを最適化する事業判断ができれば、収益増が実現できます。製造担当者が製造原価構成を分析し、原材料や工法見直しをすれば、原価低減につながります。営業担当者は需要データを収集・分析することで、製品在庫を低減できます。

このように、業績指標はデータ活用の目標のKGI(Key Goal Indicator)となります。但し、業績指標はデータ活用の成果を示す「結果指標」です。「ビジネス目標を達成するためのデータ活用がうまく進んでいるのか?」といった進捗状況を見るには「先行指標」となるKPIが必要です。データ活用のKPI例としては、「分析・活用指標」、「活用レベル指標」そして「環境整備指標」の3種類が考えられます。
まず、最初の「分析・活用指標」の例として、業務部門がデータ活用の企画・意思決定・業務効率化等の実践度合を測るKPIが考えられます。次の「活用レベル指標」も、業務部門がデータ活用する際の達成レベルを測るKPIで、データ分析が高度になる程、そのレベルが上がります。下の図表3には、それぞれの活用レベル指標を3レベルで評価する例を示しています。この中で「スマート化レベル」のレベル定義については、経産省スマートファクトリー・ロードマップのレベル定義を引用しています。

活用レベル指標 レベル1 レベル2 レベル3
スマート化レベル データ収集・蓄積
(状態を見える化し、気づきを蓄積)
データによる分析・予測
(分析から要因抽出、将来予測)
データによる制御・最適化
(気付きや将来予測から最適判断)
見える化レベル 過去が見える
(実績・推移)
現在がリアルに見える
(現場・現物・現実)
将来が見える
(予知・予測)
部門横断的活用レベル 個人単位 部門単位 部門横断

図表3:活用レベル指標例

3番目がデータ活用の「環境整備指標」です。提供しているデータの充足度、整備度、BIツールの利用状況、一定レベルのデータ分析スキルを保有する社員割合がKPI例となります。

KKD(経験・勘・度胸)による意思決定は、まだまだ残っています。これまでデータ活用はある程度進んできたものの、継続し、さらに加速していく必要があります。データ活用の8つの成功要因、中でも指標・KPIについて、今一度その必要性を再確認し、設定・明示していくことでデータ活用の更なる成果を出していくことを期待します。

※1:「スマートファクトリー・ロードマップ」
https://www.chubu.meti.go.jp/b21jisedai/report/smart_factory_roadmap/
※2:全社データ活用に向けた8つの成功要因
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20230801/
 

2023年12月

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