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2024年02月01日

待ったなしの脱炭素へ、いよいよIT部門の出番

いよいよ脱炭素に向け、本腰を入れるタイミングとなってきました。この数年、集中豪雨や渇水が頻発し、猛暑や暖冬など従来の四季とは別物となり、明らかに異常気象であることを実感します。世界中で発生する様々な気候変動は農業や生活、経済に甚大な損害を与え、それらが地政学的な不安定さをもたらしていきます。これまでも温室効果ガス(GHG)の排出量削減は叫ばれてはきましたが、このように地球温暖化の影響を身近に感じるようになると、その対策が急務であることに異を唱える人はいません。脱炭素に向け、各個人は炭素排出の少ない製品やサービスを選択するといった行動に変えていき、企業は事業活動による温室効果ガス(GHG)の排出量の削減に本腰を入れていく時がきました。

脱炭素社会に向けた経済社会全体を成長につなげる変革がGX(Green Transformation)です。世界各国がGXのゴールとするのは、平均気温の上昇を産業革命前に比べ1.5度以下に止めることであり、そのために実質GHG排出量ゼロとなるカーボンニュートラルの2050年達成です。そのゴールに向けたマイルストンとして、日本は2030年の排出量を2013年比で46%削減することを公約しています。2030年への中間点である2021年時点の削減率実績を見ると約20%と進捗は遅れており、今後はもっと削減を進めていかなければなりません。業種別にみると、製造業は事業において多くGHGを排出しています。大量の電力を消費し、自社内での化石燃料発電なども行っているため、日本のGXのゴール達成において大きな役割・責任を担っていることになります。

脱炭素の目標が数値で明確化されているのと同様に、その対策でも客観的かつ厳格に数値を示すことが出発点となります。そこで、GXに積極的に取り組んでいくべき製造業がまず為すべきことは、事業を通して排出するGHG量の開示です。自社内における、化石燃料の使用による直接排出(スコープ1)、そして電気などの使用による間接排出(スコープ2)を、正確かつタイムリーに開示します。これに加えて、上流における仕入先から調達する原材料の製造やその輸配送、そして下流における販売先へ納入した製品やその輸送時に出る間接排出(スコープ3)も開示対象となります。確かにスコープ3の開示には企業負担が増えるものの、製造業ではこのスコープ3に含まれる、製品の使用や購入に関わる排出量が大きな割合を占めます。スコープ3まで含めるサプライチェーン全体の情報開示がグローバルスタンダードとなり、日本の上場企業もこの流れに沿った開示が適用される見通しです。既に率先してスコープ3を開示している企業も少なくなく、義務化より以前に任意開示する企業も増えていきそうです。さらに、GX推進で先行する英国やシンガポール等では、非上場企業にもスコープ3までの開示が求められています。

企業に求められる温暖化ガスの開示対象図表1:企業に求められる温暖化ガスの開示対象
(クリックして拡大できます)

次に企業が取り組むべきことは、排出量削減に向けた活動です。スコープ1~3の対象に応じて、排出量の削減を進めていきます。削減策としては、原料や部材の見直し、輸送方法の最適化、製造工程の変更など多岐にわたります。スコープ3の排出には、取引先と協働で削減策を打っていきます。目標達成に向け実効性の高い取り組みにしていくために、削減策の立案、実行、把握、評価をサイクリックに行うことが求められます。GX対応は、今後も求められるレベルが次第に高くなっていくことが予想されるため、場当たり的な対応で、後々対応が困難にならないよう、仕組みも配慮が必要です。

このようにGX推進において正確な情報の収集と把握を行うことが基本となるため、デジタル技術の活用が不可欠です。例えば、IoT技術による、設備、建物、製品の稼働状況とGHG排出データの収集、複数工場の遠隔監視による電力使用状況の可視化を行います。更に、排出削減にAIや遠隔作業支援のデジタル技術を活用し、設備稼働効率の向上、エネルギー使用の削減が狙えます。

製造業ではこれまでもDX活動として、スコープ1、スコープ2の対象とする工場内のQCD向上にデジタル技術を活用するスマートファクトリー、スコープ3の対象とするサプライチェーン上の納期・在庫・コストの最適化にデジタル技術を活用するサプライチェーン・マネジメントに取り組んできました。GXでも同様にデジタル技術を活用して、エネルギー使用量、設備・機械の使用実績を可視化し、最適化していくことになります。このようにデジタル技術を活用した全社的な情報管理の仕組み作りは、IT部門の専権事項となります。また、DXの取り組みは社内関係部門、更に社外も交えた横断体制となりますが、GXも同様です。部門単位でなく部門横断の視線、そして自社だけでなくサプライチェーン上の取引先まで見渡した全体最適の視線に立てるのは、IT部門が得意とする活動です。これまでIT部門のGXへの関与はDXに比べ薄かったようですが、いよいよIT部門の出番です。DXとGXは様々な点で関連性、類似性があるため、IT部門はDXとGXを一体で活動をしていくことが得策と思われます。

GX推進は大企業が先行していきますが、サプライチューンとして中小の製造業へもGX対応が求められていきます。企業規模や業種に関係なく、IT部門がDXと併せて、GXも積極的に推進していくことで、企業価値、競争力の向上に貢献していくことを期待します。

2024年2月

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