2017年01月01日
デバイスデモクラシー
デジタル世界の民主化
デバイスデモクラシーの時代
2017年、日本のITは、インターネット元年(1995年)から22年を迎え、以下の変遷をたどってきました(図1)。当初、インターネットは純粋に情報を繋ぐ役割(IoI:Internet of Information)として発展してきました。SNS元年以降は、日常の人の“つぶやき”や“スナップショット”等を介し、人と人を繋ぐソーシャルネットという役割(IoH:Internet of Human)が出現してきました。そして、これからは人による情報の創出に代わって、モノに装着される「センサーとデバイス」が生み出す情報がインターネットの主役となります。この“IoT:Internet of Things(モノのインターネット)”を出発地点として、「ユビキタス社会」(ITが社会のあらゆるモノに溶け込み、人々の生活を豊かにする社会)を目指した変革の青写真“IoE:Internet of Everything”を2020年の先に見据えています。2020年には、デバイス数は250億台を越えると予想されており、インターネットの利用において、人間がマイノリティ(少数派)になる時代です。こうしたデバイスを中心にした時代になれば、人が介在せずにデバイス同士が自律してやり取りし、調整や合意まで行える技術が求められます。この流れを「デバイスデモクラシー」と呼びます。
図1.デバイス台数とインターネット利用の変遷
デバイスデモクラシーとは
デバイスデモクラシーを人体に例えると、自律神経の働きのようなものです。体の各器官(心臓や血管、目、口など)は、脳からの直接的な指令ではなく、自律神経を介して、それぞれを自律的に調整し、健康を保っています。例えば、クマに遭遇したとします。目で視覚的にクマを捉えた瞬間に、脳が心臓に早く動けと命令しなくても、自動的に心臓がバクバクしたり血管が広がったりして、ヒトをパワーアップさせます。これが自律神経の働きです。目や口などの感覚器がセンサー、心臓などの内臓がデバイスとなり、自律神経のように、デバイス同士が調整して自律的に動くことをデバイスデモクラシーと言います。
図2.人体とデバイスデモクラシー
このように、デバイスデモクラシーの流れは、デジタル世界のデバイス同士の関与を安全に自律し、インターネット上でやり取りが実現できるように考えています。近年は、個人情報の流出やセキュリティに関する問題により、中央集権化されたインターネットを利用したシステム(ホストやサーバー)の信頼性が揺らいでいます。デバイスがこの集権化されたシステムを頼らず、自律して真の分散システムを構築することによって、障害やセキュリティに強く、安全なユビキタス社会を実現する事ができると考えられています。デバイスデモクラシーを実現するためには複数の技術が必要と言われていますが、核となる技術が「ブロックチェーン」注1です。ブロックチェーンは、信頼できない環境下において、安心安全な脱中央集権化の世界を実現します。
注1:これからはコレ「ブロックチェーン」 次世代の金融取引を担う技術-2016年8月
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20160801/
ユビキタス社会の実現
ユビキタス社会は、あらゆる所にITが溶け込み、どこかのSF映画で見たような未来のデジタル世界となります。例えば、人の生活においては、洗濯機に内蔵されているデバイスによって洗剤が少なくなったと判断した場合は、自律的にデバイスが注文してお金を払い家まで配達してもらうことが可能になります。冷蔵庫の卵がなくなりそうになった時も同じです。また、レジの無いスーパーや、改札のない駅などが可能になったり、食品等の安全性が全て記録され、消費者に届けられたりします。このように人が行っていた比較的簡単な作業等がセンサーやデバイスによって全て自動化され、効率の良い社会が実現されます。
図3.生活に溶け込むITによる自動化
また、産業分野ではドイツの産官学が進めているIndustrie4.0のように大量生産と個別のカスタマイズを組み合わせた柔軟な製造システム(マスカスタマイゼーション注2)の実現が可能になります。また、農業や畜産面における安心、安全な環境にも役立つと言われています。
注2:ものづくりコラム「産学融合イノベーション『Industrie4.0』」
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/374/
人間しかできない事を考える
全てがインターネットに繋がったユビキタス社会では、各種デバイスなどより集められたデータが活用され、人々の生活を豊かにすると期待されています。しかし、デバイスデモクラシーの支援により、各デバイスから得られた情報の活用により自動化が進展しただけでは、人が行っている仕事がデバイスやロボットに奪われただけに終わってしまいます。自動化された恩恵により得られた資源(時間や人員)に対して、人間にしかできないことは何かを深く考え、より成熟した社会を構築することが望まれます。
図4.人間しかできない事って?
2017年1月
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