社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2013年08月01日

人を育てる信念、そして熱意

蓮の花

この暑い夏をも凌駕する熱い思いを感じさせていただきました。最近、講演会やDVD、本や雑誌などで接した経営者の方のお話です。どれも常識に囚われない経営が特徴で、我が身を振り返った時に深く考えさせられる内容でした。

まず、講演会でお話をお聞きした角上魚類株式会社 柳下浩三社長です。元甲子園球児の73歳。同年代に王氏、坂東氏が居ると言う事がご自慢のパワフルな社長です。元は新潟の魚問屋でしたが、昭和47年、木のトロ箱を発泡スチロールに変えたことで鮮度が良くなり、同じイカが2,3倍の値で売れた。昭和49年には「直接自分たちが出店すればスーパーの三分の一で売れる」との確信から、自ら魚屋を開業。鮮度の良さで新潟を中心に店舗を広げ、昭和59年には関越自動車道の完成で関東地方にも進出。手が回らないためフランチャイズも始めたが、魚に対する考え方の違いから「自分のブランドを守る」と言う信念を通すため、高収益を得ている中で撤退。

それ以来、直営に徹し、売上や規模は追わない。自分の目が届くのは22~23店舗。地域でダントツの魚屋、日本一の魚屋になるのが目標だ、との心意気です。現在は寿司店も含め、東日本を中心に22店舗を展開し、売上248億円、社員は臨時社員含め800名の魚屋さんに成長されました。
社員に徹底しているのは「鮮度、安く、品揃え、感謝の気持ち」の4つ。いつも買う人と同じ気持ちで、という方針でやっているとのことです。

次に紹介するのは、『丁稚のすすめ』を書かれた有限会社 秋山木工 秋山利輝社長です。講演を聞き逃したので、本とDVDを購入しました。「今どき、丁稚?」なのですが、人を育てる、職人を育てる素晴らしいシステムだと思います。秋山木工では社員はまず4年間を丁稚として修業し、残りの4年間を職人として働き、合計8年で退職。さらに職人の腕を磨くために、他の木工所などに巣立っていくのだそうです。せっかく育てた社員を8年で手放すのはもったいないのですが、「社員が職人として成長していくためには必要なシステムだ」という信念で若い人たちを育てておられます。
丁稚として入社し、全員が、男性はもちろん、女性も自発的に丸坊主(!)になるのだそうです。丁稚の間は、ひたすら職人になるために、すべてのものを投げ捨てる覚悟で、睡眠時間も割きながら修業僧のごとく取り組む。教える先輩も「後輩を教えられないのは自分の技術が未熟だから」ということで、厳しくその指導力を問われる。採用するときには親にも会い、会社の厳しい育成方針を納得してもらい、子供が悲鳴を上げて実家に逃げ帰っても、説得して戻してもらうよう協力をお願いし、親と社長が一緒になって育成していくのだそうです。

最後にご紹介するのは、帯広市にあるお菓子屋さんの六花亭製菓株式会社 小田豊社長です。パートの方も含めて1200名以上の社員、売上約180億円の大きなお菓子屋さんです。社員全員の名前を顔を覚え、人事はすべて社長が行っているとのこと。社員には家族のごとく接し、子供のように育てているのだそうです。今でこそメンタルケアは常識になっていますが、すでに20年前からケアプログラムを行っており、メンタル不調になった社員は直営の農園で3年間働くことで、無事に元の職場に戻っていくそうです。また、会社として業績目標はなく、社員にもノルマはないそうですが「悪平等は嫌い」との信念から、徹底した業績評価に基づいた処遇なのだそうです。
永くお客様から愛されるヒットを続ける商品こそが会社の命。そのためには、業績拡大をするのではなく、常に全霊を傾けてお菓子の味を極めることが必要。流行よりも永続的に続くお菓子を追及していきたい、それがお菓子だという哲学を徹底されています。根底に流れるのは、修行時代を過ごした京都で出会った茶道。以来、ずっと続けておられるそうです。私も縁あって毎年、帯広市にある本店に伺い、2階の喫茶コーナーでホットケーキやソフトクリームなどをいただくのですが、従業員の方々の接客は素晴らしいものです。当地では「お嫁にするならしつけがしっかりできている六花亭の女性」と言われています。そのこともあって、就職でも人気の会社になっています。

業種も業態もまったく違う、これら3人の社長の思いの真ん中にあるのは「いかにお客様に喜んでいただくか」という思いです。そしてそのために、社員をいかに育て、活躍してもらうかに全力投球されています。この時代「丁稚」というと違和感を持ちますが、自分はそこまで覚悟を持って社員を育てているのか。千人以上の社員を自らの手で育成できるのか。業績拡大ではなく、永く愛される商品を作ることに徹することができるのか。私たちはともすれば、何でもKPI(Key Performance Indicator)を設定し、詳細にアクションプランを作り、科学的手法に基づいたマネジメントシステムで効率や生産性、付加価値までも追及していくことで安心しがちです。しかし、いかに付加価値を上げていくかを考えるときに大いに学ぶところがあると、この3社長の考え方を印象深く受け止めました。

2013年8月

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