社長通信 社長・瀬川文宏が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2013年05月01日

伝統的な画廊にもイノベーションが

タンポポ綿毛

先日、ITの世界から銀座の画廊経営者になられた方から、現代の画廊経営における興味深いお話をうかがいました。

最盛期、銀座にはなんと300もの画廊があったそうです。バブル時代に100億の資金で参入した大手自動車会社をはじめ、「絵が投資になる」と当て込んだ大手異業種が参入したためです。しかし、それら新規参入組みの多くはバブル崩壊で一気に撤退。一方、昔から景気の変動を乗り越えてきた伝統ある画廊は生き残り、現在でも200もの画廊があるそうです。画商の世界は狭い世界。画家も含めて一般のビジネス常識は通じないという特殊な世界のようです。また、他の業界と同じく、日本の絵画マーケットもグローバルと比べてかなり特殊なようです。
日本のマーケットは小さく、画廊、オークション、フェア、デパート(日本では大きなマーケットを持っている。外商の強い営業力)があるが、スイスでは4日間のフェアで600億の取引があり、香港、シンガポールも国策で同じようになってきているが、日本は国が何もしないので、数日のフェアでたった6億の規模だそうです。最近はインターネットオークションもあるが、オークション運営サイトに専門家がいないので贋作、盗品への注意が必要なため、まだまだ浸透していないそうです。
日本の画家の地位はかなり厳しく、絵で食べているのは100人以下。それも何らかの役を務めたり、学校の先生として絵を教えたりしている。古くからの有名画家の作品は相当安くなっており、逆に異業種とのコラボなどでメディアに登場してくる作家は高く、価値観は人それぞれなので一概には言えないが、絵の価値と値段は必ずしも一致しない傾向にあるそうです。
銀座には多くの外国人が来るが、銀座の画廊は閉鎖的で「外国人お断り」のお店も多く、せっかく、何億(!)もの買い物に来る外国人を取り込めないでいるとのことです。また、この経営者は子供の教育にも熱心で、「今の教育は創造性を殺す。経済的に価値のある学科を優先しているので、もっと子供の個性を伸ばす教育が必要。日本の将来を考えると、教育から変えていかないといけない」と主張しておられました。
IT業界から画廊経営に転身されたため、外部の目からみた変革を行い、古い画廊業界に新風を吹き込んでおられます。「美術館はいつも人でいっぱいなのに、画廊には人が来ない。もっと気軽に画廊の絵を楽しんでもらいたい」と、“銀座画廊めぐり”を始められました。

古い伝統を誇る銀座の画廊業界は、我々のビジネスとはかけ離れた特殊な世界だと思っていたのですが、ここにもグローバルの競争があるようです。いかにグローバルの顧客を取り込んでいくか、また、いかにイノベーションをおこしてビジネスを伸ばしていくか。どの業界にも通用する取り組みがあり、良い伝統を守りながらも社会の動きに合わせて新しい発想でチャレンジし、変革することの必要性を感じました。

2013年5月

ITの可能性が満載のメルマガを、お客様への想いと共にお届けします!

Kobelco Systems Letter を購読