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2010年07月01日

置くだけでカンタン充電、進歩するワイヤレス充電

ワイヤレス充電(非接触充電)とは

ノートパソコンや携帯電話などの携帯機器は、接続口(金属接点)にアダプタや充電器を直接接続し充電を行います(図1参照)。それに対して、「接続口にアダプタや充電器を直接接続せず、充電を行う方法」をワイヤレス充電といい、このような技術をワイヤレス充電技術と言います。
現在、ワイヤレス充電を導入している製品としては、電動歯ブラシ、電気シェイバ、マイクスタンドなどが挙げられます。例えば、電動歯ブラシのスタンドは、金属接点がないプラスチックのスタンドです。しかし、電動歯ブラシ本体をスタンドに立てることで充電することができます(図2参照)。
このワイヤレス充電を実現する技術には、現在以下の3つの方式があります。

【ワイヤレス充電技術3つの方式】

  • 電磁誘導方式
  • 共鳴方式
  • 電波受信方式

これらの方式にはそれぞれ特徴があり、用途によって使い分けがされています。電動歯ブラシや電気シェイバなど、多くの小型機器の充電に採用されている「電磁誘導方式」を取り上げて説明します。

図1.携帯電話の充電口から充電
図1.携帯電話の充電口から充電
図2.充電用スタンドに電動歯ブラシを置き充電
図2.充電用スタンドに電動歯ブラシを置き充電

電磁誘導方式の利点と課題

電磁誘導方式は、離れた2つのコイルの片方に電流を流した際に生じる磁界の変化を利用することで、2つのコイルが接触していなくても、もう片方のコイルに電力を発生できる原理です。この原理を利用して、電磁誘導方式は非接触充電を実現しています(図3参照)。

図3.電磁誘導の原理
図3.電磁誘導の原理

電磁誘導方式によるワイヤレス充電の利点をまとめると、以下のようになります。

【電磁誘導方式によるワイヤレス充電の利点】

  • 充電器に金属接点がないという利点があるため、水周りでも利用することができる
  • 充電用パッドの上に置くだけで充電ができる
  • 充電物に安定して電力を送ることができる
また、ワイヤレス充電の懸念事項の1つである安全性は、大学や企業の研究によって向上してきました。例えば、充電中の異常発熱を抑えることです。誤って金属物が充電用パッドの上に置かれた場合、IH調理器のように発熱を起こす可能性がありますが、発熱による人的被害を避けるために、金属物が置かれた際は、充電を中止するように制御されています。
また、今後ワイヤレス充電を利用できる機器を増やしていくための課題としては、伝送距離を伸ばしても伝送電力が大幅に下がらないことを実現する必要があります。

ワイヤレス充電の今後

ノートパソコンや携帯電話などの携帯機器へのワイヤレス充電の導入は、現在試作品段階ですが、近い将来実現されていくでしょう。
また、現在のワイヤレス充電を用いた製品は、携帯電話には携帯電話用、電動歯ブラシには電動歯ブラシ用の充電用パッドやスタンドを使用する必要があります。このように、現時点では1つの充電用パッドで異なる機器の充電を行うことができませんが、異なる製品を一つの充電用パッドで充電可能にする、「充電用パッドの共通化」の研究が進められており、試作品も作られています(図4参照)。
携帯機器への導入や充電用パッドの共通化は、利用者に多くのメリットをもたらすことでしょう。例えば、飲食店のテーブルや仕事場のデスクに組み込まれた場合、携帯電話、ノートパソコンをテーブルの上に置くことで充電されるため、電池切れになる恐れは少なくなります。また、ノートパソコンを多く利用している企業では、複数台のノートパソコンに電力を供給するためにテーブルタップに多くの電源コードを繋ぐ必要があります。しかし、ワイヤレス充電技術を利用することで電源コードを減らすことが可能となります。
更に、このワイヤレス充電技術は、携帯機器のような小型機器だけでなく、電気自動車のような大型機器への利用も期待されています(図5参照)。

図4.異なる機器を一つの充電用パッドで実現
図4.異なる機器を一つの充電用パッドで実現

図5.電気自動者への電力供給
図5.電気自動者への電力供給

2010年7月

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