これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2015年09月01日

製造業のサービス化
付加価値を高めないと生き残れない!?

ここ数年、サービス事業を強化する製造業が増えています。これはグローバル化とコモディティ化が進み、世界のどこでも同じような製品を製造することが可能になり、物だけ売っていたのでは価格競争に陥って利益を確保できなくなってきたことに起因しています。またIoT (Internet of Things)技術の発達により、製品の稼働情報などのデータが各種センサーから容易に取得できるようになり、製品に情報の付加価値を付けられるようになったことも大きいと思われます。製品にもよりますが、サービス市場は製品市場の約5倍もあり、サービスの利益率は製品の利益率よりも高いようです。企業が売上拡大、利益向上を目指すのであれば、サービス事業の強化は当然の流れでしょう。逆に考えれば、物作りだけをしていてはこれからの生き残りが難しいかもしれません。

製造業のサービス化の事例

① 医療用画像診断装置メーカーの事例
MRI(磁気共鳴画像装置)やCTスキャナーを製造・販売するだけでなく、医療現場でそれらの機械がどのように使用されているかモニタリングし、不具合が発生する前に適切な処置を行います。さらに測定した患者のデータ分析サービスも提供しています。

② 建設機械メーカーの事例
製造・販売しているダンプやショベルカーにGPSを搭載し、自社の建設機械の稼働状況をリアルタイムで把握しています。これにより建設現場の生産性を分析し、顧客である建設現場の作業効率の改善やコスト削減につなげています。また、契約外の時間に稼働したり、夜間に長距離移動したような場合には遠隔操作でエンジンを停止させることができ、言い換えれば顧客はメーカーに車両管理業務を委託していることになっています。

③ コンプレッサーメーカーの事例
コンプレッサーを製造・販売するだけでなく、製品に取り付けたセンサーから稼働情報をリアルタイムに入手し、そのデータで故障の予測分析を行うことによって、事前に部品交換や修理を行い機械の稼働率を向上させています。また基幹システムと連携しており、顧客管理、在庫管理、サービス管理の効率化にもつながっています。コンプレッサーの管理を顧客に代わって実施し、供給した圧縮空気の容量だけ課金するという新しいビジネスモデルを提供しています。

製造業のサービス化のイメージ
図. 製造業のサービス化のイメージ

サービス化のメリット

製造業のサービス化はユーザーとメーカーの双方にメリットがあると考えられます。ユーザーのメリットは、製品の稼働率が高まり、パフォーマンスに対する対価を支払うことになるため無駄が発生しません。メーカーのメリットとしては、収益性が高まり継続的なビジネスが得られます。さらに、サービスで他社との差別化が可能になり、顧客の囲い込みができるようになります。

サービス化に向けての課題点

このようにサービス化にはメリットが多く、多くの企業がサービス事業強化の方針を出しています。しかし、目標通りの効果を出している企業は多くはありません。サービス化は単にサービス部門だけの問題ではなく、開発から生産、営業、保守まであらゆる部門がサービス化に対応して初めて実現できるからです。サービスによる差別化検討、課金の仕組み、修理しやすい設計、部品の共通化、保守部品の供給体制、販売後の製品の情報入手、営業体制の見直し、さらにはそれらを支える情報システムなど、様々なことを考える必要があります。また、サービス化により契約形態も変わるため、双方の合意形成も必要ですし、サービス化に伴う原価管理・管理会計も変えていかなければなりません。つまり、企業全体の文化を製品志向から顧客志向に変更していくことになるのです。


これまで、日本ではサービスは製品購入の際に無料で提供されるものとの考えがあり、サービス化は遅れていましたが、今後製造業はますますサービス化に向かって進んでいくものと思われます。


2015年9月

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