2017年03月01日
AIの未来を支えるディープラーニング
ブームを支えるディープラーニング
昨年あたりから、メディアや新聞で目にしない日はないぐらいAI(人工知能)が注目されています。このAIを支える技術としてディープラーニング(深層学習)があり、この言葉も多くの方が聞いたことがあるのではないでしょうか?
最近のAIの話題性の高さは第3次AIブームと呼ばれており、1980年~1990年代にかけての第2次AIブームの時より格段に現実味があり、技術も発展してきています。この第3次AIブームを支える技術がディープラーニングであり、コンピュータに学習能力を獲得させる手法である機械学習(※1)の一種です(図1参照)。具体的には、人間の脳にある神経回路網(ニューロンの相互接続)を模倣し、その振る舞いをコンピュータで再現する「ニューラルネットワーク」を何層も組み合わせ、コンピュータ自身がデータを繰り返し学習していきます。
図1.AI、機械学習、ディープラーニングの関係
(出典:NVIDIA 公式Blog
人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いとは より編集加工)
機械学習もニューラルネットワークも、20世紀の第2次AIブームの時から存在していましたが、その後、以下のような背景からディープラーニングとして利用拡大できるようになりました。
- インターネットの普及および、ビッグデータが利用可能になったことで、コンピュータに学習させるデータの入手が容易になった
- コンピュータの処理能力が飛躍的に向上したことによって、学習時間が大幅に短縮できるようになった
従来の機械学習が、認識する対象に対して「人が特徴を定義する」必要があったのに対して、ディープラーニングでは「コンピュータ自身が学習したデータから特徴を抽出」できるようになったことで、自動的に特徴を定義し、学習できるようになりました。
※1 特定の事象についてデータを解析し、その結果から傾向を学習して、判断や予測を行うためのアルゴリズムを使う手法
急速に実用化が進むディープラーニング
ディープラーニングはGoogle社やFacebook社をはじめとする多くの企業がベンチャー企業、大学や政府とも連携しながら、実用化を進めています。ディープラーニングとして現在発展している主な適用領域として「画像認識」と「音声認識」がありますが、これはAIとして、人間の五感の視覚と聴覚にあたる機能の一部をコンピュータで実現していることになります。
画像認識については、2015年にディープラーニングによる画像の認識能力が、人間を超えたという発表がありました。その後も衣料品など膨大な量の商品を扱うECサイトで、顧客が検索しやすいようタグ付けを行う作業を自動化するといった画像検索/タグ付けの分野や、パターン認識などの分野で実用化が進んでいます。
音声認識については、身近なところで最近スマートフォンの音声アシスタント機能の認識能力が高くなっていると感じている方も多いと思いますが、このような音声検索/音声アシスタントの分野での応用が進んでいます。
さらに、言語処理の分野でもディープラーニングの実用化は進められており、今後は、単語や単文だけではなく、文章の理解も可能になるでしょう。すなわち、AIが音声認識などを用いて読み込んだ文章の文脈を理解し、自然言語処理、言語翻訳によって、AIがユーザに即時に返答できるようになることが実現されると考えられます。
日本におけるAIの今後への期待
ディープラーニングを含め、AIについては残念ながら日本よりも欧米の方が研究も実用化も進んでおり、企業の買収や高度なスキルを持つ人材の獲得競争が行われています。しかし、日本でも、政府(総務省)が2016年7月に「次世代人工知能推進戦略」を公表し、国としての戦略を掲げて取り組み始めています。
ここで述べられていることの1つとして、日本が世界に先駆けて直面する社会的課題である「高齢化社会」「少子化による労働力不足」「多発する自然災害」の解決にAIを最大限に有効活用することが挙げられます。
図2.社会的課題と人工知能への期待
(出典 :総務省 次世代人工知能推進戦略 より編集加工)
図2のように色々な分野でのAIの活用が期待されますが、例えば超高齢化社会と労働力不足の問題を解消する期待として「職人技の継承」があります。日本では製造業だけでなく、様々な分野で”匠の技”とも言われる職人技があり、これを継承したくても人手不足でできないケースもあります。モノづくりの工程における熟練技術者による目視検査など、専門家にしかわからない画像や音声、あるいは機器の動きなどをディープラーニングに学ばせることができれば、育成の難しい職人に代わってAIが24時間/365日働いてくれるかもしれません。
AIが普及すれば、いずれ人間の単純労働をAIが取って代わると言われていますが、一方で付加価値のある職人技が消えていくのをAIで継承できるという利点もあるわけです。
今後さらにディープラーニングの技術が発展し、AIの応用例も広がっていくことは間違いありません。上手に活用していきたいものです。
(参考文献)
NVIDIA 公式Blog 人工知能、機械学習、ディープラーニングの違いとは
https://blogs.nvidia.co.jp/2016/08/09/whats-difference-artificial-intelligence-machine-learning-deep-learning-ai/
総務省 次世代人工知能推進戦略 (図はP3から引用)
http://www.soumu.go.jp/main_content/000424360.pdf
2017年3月
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