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2012年01月04日

ネットワーク機器の世界を一変させるかもしれない「OpenFlow」

OpenFlowとは

「OpenFlow」は、ネットワークをソフトウェアで制御しようとする“Software Defined Network”と呼ばれるコンセプトの実装技術の一つです。この技術は今までのネットワーク機器の常識を一変させる可能性を秘めていると言われ、今、注目を浴びています。
「OpenFlow」は、スタンフォード大学が2008年に立ち上げた「OpenFlowコンソーシアム」で実証実験が行われ、現在では、商用利用に向けて「Open Networking Foundation(以下、ONF)」で規格の制定作業が進められています。「ONF」には通信機器メーカーや通信事業者に加えて、クラウドサービスを提供する会社なども参加しています。
従来のネットワーク機器は、各階層(レイヤー)に分けられた機器が各々で経路を決定していました。それに対して「OpenFlow」では、「OpenFlowコントローラー」が経路を決定します。決定された経路に従って「OpenFlowスイッチ」がデータを転送します(図1参照)。
一般的に、「OpenFlowコントローラー」はソフトウェアとして実装され、「OpenFlowスイッチ」はネットワーク機器としてハードウェアで実現されます。

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図1.経路決定方式の違い 【拡大図】

OpenFlowの利点

従来の機器では経路設定を各機器で行うため、ディザスタリカバリーなどでサーバーの代替機を別の場所に置いた場合、代替機へ切り替える設定が困難でした。「OpenFlow」では、ネットワーク機器と経路を制御する機器が分かれ、経路を集中して管理します。そのため。ネットワーク機器が各機器の物理配置に縛られることなく、切り替えの設定が容易に行えます(図2参照)。
「ONF」にクラウドサービス事業者が参加する理由の一つがこれです。「OpenFlow」では、物理位置を意識せずにリスクを分散できる柔軟性のあるネットワーク構成が構築可能になり、クラウドサービスの管理が容易になります。

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図2.ディザスタリカバリー実装の違い 【拡大図】

また、従来は各ネットワーク機器会社が独自に開発した技術を用いてネットワーク機器が構成されていたため、設定や管理方法がベンダー毎に異なるというのは当たり前の事でした。しかし「OpenFlow」ではその名が示す通り、オープンで標準化された技術なので、ベンダーに縛られることなく管理することが可能になります。さらに、PCがオープンで標準化されたことによって劇的に安くなったように、ネットワーク機器も、今後、価格が下がっていくことが期待されています。

OpenFlowの動向

「OpenFlow」のコントローラーはソフトウェアであるため、研究機関がオープンソースとして提供しているものから、各ネットワーク機器会社が提供しているものまで、様々な種類があります。また、「OpenFlowスイッチ」に参入する会社も増えてきています。これは、高速性は要求されないが難しい経路計算が必要なコントローラーと、高速性が要求されるが機能的にはさほど高くないスイッチに分かれているため、両方が要求された従来のネットワーク機器に比べて参入の敷居が低くなっているためです。今後、この分野での競争も激しくなると予測されます。
「OpenFlow」は、まだ新しい技術ですので、統合管理するためのソフトウェアや高速性が要求される大規模なデータセンターでの適用実績が不足しているなど、課題も多く存在します。しかし、最近のクラウドに関する技術の目覚ましい発展を目の当たりにすると、「OpenFlow」の課題も驚くほどの速さで改善されていくことでしょう。しばらく、目が離せない技術です。

2012年1月

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