2023年03月01日
ChatGPTはGoogleを超えられるのか
~対話型AIの可能性~
はじめに
近年、文章を自動生成するAI(人工知能)の開発や研究が盛んに行われています。そのなかでも、対話型AIチャットボット※1の一つであるChatGPTが話題となっています。本記事ではChatGPTの可能性と課題について、筆者が実際にChatGPTを使ってみた結果を通して考察しています。
※1:チャットボットhttps://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20160601/
ChatGPTとは
ChatGPTとは2022年11月30日に公開され、GPT-3※2という言語モデルを改良したGPT-3.5を組み込んだインターネットで利用できるサービス及びAIのモデルのことです。リリースされてわずか5日後に、ユーザー数が100万を超えたことでも話題になっています。特徴としては、ユーザーの質問に対して、あたかも人間が回答しているようなリアルな回答文を生成することができます。また、ユーザーの質問の仕方次第で、「雑談」、「質問応答」、「文章の修正」、「文章の要約」といった様々な使い方が可能な点も大きな特徴です。さらに、多言語にも対応しており、ユーザーが質問をした言語で自動的に回答をしてくれます。
※2:人工知能(AI)による次世代のテキスト生成 ~GPT-3~https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20210501/
ChatGPTを試してみた
それでは実際にChatGPTと雑談をしてみたいと思います。「今日の朝ごはんは鮭とお味噌汁でした。美味しかったですが、鮭が少し塩辛かったです。しかも、焼きすぎてしまいました。」と朝食の話題について、チャットをしてみます。果たして、ChatGPTはどのような回答をしてくれるのでしょうか?
今日の朝ごはんは鮭とお味噌汁でした。美味しかったですが、鮭が少し塩辛かったです。しかも、焼きすぎてしまいました。 | |
それは残念です。鮭は塩辛いものが多いですが、調理時に塩を控えることもできます。また、焼きすぎないように調理時間を調整することも重要です。 |
図1:ChatGPTに朝食の話題をした例
紫色のアイコン()が筆者の文、緑色のアイコン()がChatGPTで生成された回答文です。「それは残念です。鮭は塩辛いものが多いですが、調理時に塩を控えることもできます。また、焼きすぎないよう調理時間を調整することも重要です。」と、友人に対するような親しみのある回答ではなく、少し距離を置いたような感じの回答をしてくれました。筆者の「焼きすぎた」や「塩辛かった」のややネガティブな感情を汲み取って、ChatGPTは「それは残念です。」と適切な相づちを返してくれています。また、「調理時に塩を控える」ことや「焼きすぎないようにする」といった、会話を広げる工夫をしてくれています。このような相づちや会話の広げ方から、筆者は人間との会話のようなリアルさを感じることができました。
さらに追加でチャットをしてみましょう。「調理時に塩を控える」という回答に対して、具体的にどのようにすれば良いか気になったので、ChatGPTに聞いてみることにします。果たして、どのような回答をしてくれるのでしょうか?
調理時に塩を控える方法を詳しく教えてください。 | |
鮭を調理する際に塩を控える方法として、下記のような方法があります。
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図2: ChatGPTに追加で会話した例
ChatGPTは「鮭を調理する際に塩を控える方法」を5つ紹介してくれました。「1. 鮭を塩水に漬け込む前に、水に漬け込むことで塩分を取り除くことができます。」、「2. 調理する前に、鮭に塩を振らないこと。」、「3. 調理中も塩を追加しない。」、「4. 調理後に、塩を振らない。」については、直接的に塩を使わない方法を提案してくれています。さらに、「5. 鮭に合うスパイスやハーブを使用しましょう。」については、塩の代替として香りづけをする方法であり、より高度な回答をしてくれています。
ChatGPTの可能性
ChatGPTは次のような可能性が考えられています。ChatGPTは対話形式でユーザーの知りたい情報を得ることができます。したがって、Googleのような従来の検索エンジンを用いたインターネット検索と比較して、質問の仕方によっては、いち早く知りたい情報を得ることができる可能性があります。さらに、ChatGPTは、雑談以外にも文章作成や要約といった使い方ができます。例えば、電子メールを作成したいときに、電子メールのタイトルと概要から電子メールの本文を自動で作成することができます。また、インターネット記事や議事録を数行に要約もできます。このように、ChatGPTが今まで人の手で行っていた文章作成や要約といった作業をサポートすることで、以前よりも作業時間を短縮できる可能性があります。
ChatGPTの課題
非常に便利な使い方が考えられるChatGPTですが、次のような課題が考えられています。
(1)回答に誤りや政治的偏りが含まれる可能性
ChatGPTは事実と異なる間違った回答や、政治的偏りが含まれている不適切な回答をする場合があります。これはAIのモデルが学習データに含まれる誤りや政治的偏りを学習してしまうことが原因と考えられています。この問題を防ぐためには、学習データや出力結果から不適切な情報を排除することが求められます。また、ChatGPTは自身の知識に存在していない場合や、数学の定理や解法等の苦手分野については、実際は誤っているにも関わらずあたかも正しいかのように回答をする場合があります。ChatGPTではこのような不適切な回答をブロックするために、ユーザーからのフィードバックを求める方針をとっています。
(2)学校の課題や学術論文に悪用される可能性
ChatGPTの生成した文章が学校の課題や学術論文に悪意を持って転載される可能性があります。現状はユーザーの良識的な利用に委ねられている部分が多いです。この問題に対しては、AIの力を使って、人間が書いた文章か、AIが生成した文章かを判定する研究※3も行われています。
※3:GLTR: Statistical Detection and Visualization of Generated Texthttps://arxiv.org/abs/1906.04043
最後に
現在のChatGPTは非常に便利な反面、質問に対して必ずしも適切な回答をするわけではないという問題を含んでいます。このようなChatGPTの特性を理解し、適切に扱うことで、私たちの生活はより豊かで便利になるのではないでしょうか。
2023年3月
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