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2022年03月01日

時系列データ予測によるビジネスプロセスの高度化
~技術的進化とクラウドサービス~

時系列データ予測とは

時系列データとは「一定間隔(時間)ごとに観測された結果の集まり」を指し、売上、株価、気温など様々なデータが該当します。このようなデータに対する予測自体は、近年の技術的進化によって生まれたものではありません。常に予測プロセスは重要であり、補助するためのツールは以前からありました。これらのツールが基づくのは統計学手法です。これは、過去の値が現在の値に与える影響を数学的に明らかにし(=定式化し)、そこから将来の値を予測する手法です。

ディープラーニングによる予測技術の進化

上記のような統計学手法でもある程度の予測は可能でしたが、ディープラーニングの登場により予測技術に新たな可能性が広がりました。ディープラーニングの重要な要素として、「注目すべきデータの特徴を自ら学習する」という点があります。予測とは、過去のデータ群から法則性を見つけ出すことに他なりません。そのプロセスを機械が自ら行うことにより、複雑なデータや大量データなど、従来の統計学手法では難しいとされていたデータに対しても関係性を導き出し、予測値の算出が可能となりました。

ディープラーニングによる予測技術の進化図1:ディープラーニングによる予測技術の進化
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一例として、洪水予測にディープラーニングを用いた事例を紹介します。全国の一級河川では洪水予測システムが稼働していますが、その精度に課題を抱えていました。水・土砂災害へのデジタル技術活用に取り組む日本工営は、過去の洪水データ(洪水のピークから72時間前~48時間後まで121時間×24洪水=2904セット)を基に、ディープラーニングを用いた河川水位予測を検証しました。過去データの細かな特徴を捉えたことにより、従来よりも精度の高い予測を実現し、その有効性を示しました。同じく災害対策の分野においては、斜面災害予測や高潮予測、インフラの劣化予測等、様々な活用が検討されています。(※1)

※1参考文献:一言 正之・桜庭 雅明. (2018). ディープラーニングを用いた洪水予測モデルの開発と今後の展望. こうえいフォーラム第 26 号.

クラウドサービスの活用

より強力な予測を実現したディープラーニングですが、その力を活用するにあたり、いくつかの課題があります。一つは、大量の学習データが必要な点です。学習が十分でない場合、正確な予測は不可能となります。もう一つは、ディープラーニングの開発には多くのコストがかかる点です。
これらの課題に対し、クラウドサービスの活用は重要な選択肢となります。まず、クラウドサービスはデータ量に合わせ伸縮可能なストレージ(データ保管場所)を提供しています。増加する大量のビジネスデータを保管し、学習データとしての活用を可能とします。さらに、AWSやAzureといった主要クラウドサービスでは、ディープラーニングなどの先端技術を取り入れたデータ分析サービスを提供しています。クラウドベンダーが開発する分析機能を利用することにより、開発コストを低く抑えられます。また、これらは継続的にアップデートが実施されており、技術的進化を迅速に自社のビジネスプロセスに反映できるというメリットもあります。(※2)
上記のようにクラウドサービスを活用することで、「大量のビジネスデータを活用した、先端技術による分析基盤」のスピーディな構築が実現できます。

様々なデータをクラウドサービス上のストレージに格納し、先進技術を取り入れたデータ分析サービスに利用する図2:様々なデータをクラウドサービス上のストレージに格納し、先進技術を取り入れたデータ分析サービスに利用する
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※2実際に、AWSが提供する時系列データ予測サービス「Amazon Forecast」は、利用可能な計算アルゴリズムの追加や、計算アルゴリズムを組み合わせた学習を可能とする機能追加等のアップデートが継続的に実施されています。

おわりに

従来から、”予測”が様々な業界、ビジネスにおいて重要なプロセスであることは、言うまでもありません。生産計画、在庫管理、人員配置、営業活動など様々な領域で、過去の実績に基づく予測が日々行われています。そのため、この分野における技術的進化のニーズは高く、データと分析結果を根拠とする「データドリブンな意思決定」への貢献が期待されています。
先進技術を用いた時系列データ予測は、従来から存在するビジネスプロセスをより高度に実現するイノベーションです。用意するデータと出力されるデータがイメージしやすい分野であるため、今後ビジネスへの活用を検討する企業は増加すると考えられます。また、市場ニーズの高まりからさらなる技術的進化も期待されます。ビジネスにおけるデータ活用がより重要になる昨今、注目度の高い分野であることは間違いありません。

2022年3月

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