これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2021年07月01日

AIを組み合わせる最先端のデータ分析
~拡張アナリティクス~

BIと拡張アナリティクス

BI(ビジネス・インテリジェンス)とは、現場で発生したデータを分析・可視化し、得られた洞察をもとに意思決定を支援する技術のことです。ここ十数年、ITの進化とともにデータ分析の重要性がますます高まりBIが盛んに活用されてきました。昨今では日々蓄積されるデータから最大限の価値を引き出す試みがなされつつあり、それを実現するための手法として拡張アナリティクスという概念が提唱されています。拡張アナリティクスとは、従来のBIにAI(人工知能)を組み込むことでデータ分析のプロセスを変革する技術のことです。

BIの歴史と現在の課題

黎明期におけるBIは一部のデータ分析の専門家が高度なIT技術を駆使して行うような形式であったため、その導入効果は限定的でした。しかしBIは次第に「セルフサービス化」が進められてきました。今ではITに精通していなくてもあらゆる立場の社員が自らデータにアクセスして、分析や可視化を実施できるようになっています。これはBIの画期的な進歩の1つですが、課題はまだ残されていました。2021年1月の同コラム※1にも取り上げましたが、「データ分析は前準備に8割の労力を要する」という言葉はBIの文脈にも当てはまり、データの抽出や整備といった工程は依然として手作業で行われています。これでは洞察を得るまでに長い時間がかかりますし、分析が始まる前にヒューマンエラーが発生してしまう可能性もあります。またユーザーのデータ分析によって得られた発見には一定の価値がありますが、問題は「見つけようとしたものしか見つけられない」ということです。現段階ではユーザーが考えもしなかった予想外の洞察が出てくる余地はほとんどなく、実はその予想外の洞察こそが組織に大きなインパクトをもたらすものなのかもしれません。

※1:これからはコレ! AI時代のデータ活用「DataOps」
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20210101/

現在のBIの流れ図1:現在のBIの流れ
(クリックして拡大できます) 

拡張アナリティクスの可能性

ここで拡張アナリティクスが全面的に組み込まれた革新的なBIについて考えてみます。例えばユーザーが拡張アナリティクスBIに対して「収益を増やしたい」などと伝えたとしましょう。BIに組み込まれたAIはその言葉の意味を理解し、関連するデータ(例えば売上や経費のデータ、それに紐付く製品や組織のデータなど)をもれなく収集し、それらを万全に整備します。その際、AIにとって扱い方が不明なデータがあれば随時ユーザーに質問し、ユーザーはその質問に回答する、といったインタラクティブな対話が行われることもあります。またAIはデータの探索を行い、さまざまなデータ間のあらゆる関係性を把握します。そしてAIによって見出された人間のバイアスがかかっていない全ての知見を、ユーザーに分かりやすい形で可視化して表示します。ここまでの一連の流れがAIによって自動的に処理されるとなれば、ユーザーはAIによって提示された結果を見るだけで即座に信頼性の高い洞察を得ることができ、重要な意思決定の場でより正確な判断が下せるようになるでしょう。

k2107_2.jpg図2:拡張アナリティクスによるBI
(クリックして拡大できます) 

拡張アナリティクスの今後の発展

拡張アナリティクスの導入が活発化することで、これまでデータ分析に携わってきたユーザーはその体験を一新させられることは間違いありません。しかしながら拡張アナリティクスは発展途上の技術であり、現在は一部のBIサービスにAI/機械学習の機能が部分的に組み込まれているに過ぎません。とはいえここ数年におけるAI分野の発展は目覚ましく、AIが融合した最先端のデータ分析である拡張アナリティクスは近い将来ますます実用化が進むことが期待されます。

2021年7月

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