2018年08月01日
エッジAI
~ありとあらゆるものにAIが内蔵される!?~
エッジAIとは
エッジAIとは、これまでクラウド上で実行されることが大半であったAIの処理をエッジで実行することを意味します。エッジとはスマートフォンや、コンピューターが内蔵された自動車などの利用者の近くにある機器を指します。クラウドのように、規模の大きな設備を離れた場所に用意することとは反対の考え方です。
昨今のAIは人間の認知をサポートする拡張知能を指す言葉として使われることがほとんどです。※1AIに大量のデータを学習させることで、自然言語や画像を認識することができるAIのモデルを構築し、このモデルを使って未知のデータに対して認識結果を出力することができます。デバイス側でこのようなAIの処理を実行することにより、従来の方法では実現が難しかったリアルタイムなデータ処理や制御を実装することが可能となっています。
※1:AIの未来を支えるディープラーニング
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20170301/
エッジAIが必要とされる背景
AIでは、学習結果であるモデルの構築や、構築したモデルを用いて実際にものごとを認識させる際には複雑な計算を実行する必要があります。しかし、多くの場合、エッジにおける計算環境は一般的なコンピューターに比べると動作が遅く、AIを動作させるには不十分でした。そこで、このような計算にはインターネット経由で大規模な計算環境を利用することができるクラウドがよく用いられていました。
モデルの構築に関してはリアルタイム性が要求されることは殆どないため、クラウドを利用することができます。しかし、構築したモデルを用いてリアルタイムに機器を制御する場合、ネットワークを介する通信時間が制御に大きな影響を与えます。例えば、自動車の危険回避にAIを適用し、目の前に現れた人や物体を認識し緊急停止するようなシーンを考えます。
クラウド上でAIによる画像認識を実行していた場合(図1)、車で取得された走行中の画像はインターネット経由でクラウドに送信され、クラウドで認識された結果の受信を待って、車を制御することになります。インターネットを経由する際には、送信する画像のサイズなどにもよりますが、数百ミリ秒から数秒程度の時間がかかってしまいます。
図1:クラウドのAIを用いた危険検知
一方、エッジ(車に搭載されたコンピューター)で処理した場合(図2)、インターネットを経由する必要がないため、AIの認識結果の受信を待つ必要がありません。インターネットを経由しないため、より短時間で画像認識を実行することができます。また、ネットワークに接続できない環境でも利用できるというメリットもあります。
図2:エッジAIを用いた危険検知
自動車のような人命に関わる機器の制御には瞬時の判断が求められます。このような場面においてエッジAIを用いることで、ネットワークの遅延を受けることなく認識結果を得ることができます。
エッジAIの今後
エッジAIを用いることでAIを用いた判断を素早く実行することができます。エッジAIが実現されたのはエッジとAIそれぞれの技術が発展したことによります。エッジでは、従来よりも高性能な計算能力を搭載できるようになったという点があげられます。AIでは、エッジで動作させることを想定した、比較的軽量なAIモデルが登場した点があげられます。また、構築したAIモデルをさまざまな実行環境やプラットフォーム間で共通して利用するためのフォーマットが登場しており、エッジでAIを利用するための環境が整い始めています。
また、エッジAIはデバイスのみでデータを扱うことができるため、セキュリティの観点でも注目を集めています。例えば、顔を使った認証では個人情報である顔の画像をサービス提供者に渡すことなく認証の仕組みを実現することができ、高度なセキュリティが実現できるようになっています。
エッジAIはセキュリティやリアルタイム性で優れています。しかし、クラウドを使ったAIが不要になることはありません。クラウドのような大規模な環境でしか扱えないAIの処理も存在しています。今後はエッジとクラウドそれぞれのAIを用途や特性に応じて適切に使い分ける動きが進んでいくと考えられます。
2018年8月
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