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2014年01月01日

グローバル展開における「もの」「コト」づくり

日本の製造業の事業領域が国内からグローバルへと急速に広がっています。海外現地法人数や売上高に占める海外売上高の比率は年々高くなってきています。業種によって異なるものの、素材系製造業の海外売上比率は30%前後、自動車や電気機器や精密機器では40%以上の比率となっています。
海外展開先の市場構成も大きく変わってきました。1990年代までは、日本の製造業は極端にいえば日本国内と欧米の市場を相手にしていれば成り立っていました。2000年以降になると、圧倒的に人口が多く、経済成長も著しいBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)をはじめとする新興国市場が拡大し、その売上も日本国内、米国そして欧州に比肩する、またはそれ以上の規模になってきました。

この新興国市場の拡大は今後も私達の想像以上に加速していくようです。図1はOECDによるグローバル全体における各国GDPのシェア見通しを表しています。現在トップの米国は、早くて2016年にも中国に追い越され、いずれはインドにも追い越されると見られています。これが2060年になると、中国とインドを合わせた経済力はOECD加盟国全体を追い越すと予測されています。高齢化が進む日本や欧州といった現在の経済大国は、若年層が多く、経済面で活気があるインドネシアやブラジルのGDPに圧倒されていく見通しです。

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図1.各国のGDPシェア推移見通し
(ソース:OECD報告を基に編集加工)

このような海外事業領域の拡大と今後のグローバル経済のパワーシフト見通しから、日本メーカーのグローバル展開における「もの」「コト」づくりの要件が3つ挙げられます。

1. 初めからグローバルで通用する「もの」「コト」づくり
かつての日本のようにGDPが世界の20%もあったときは、日本メーカーはまず日本市場で技術を磨き、日本の市場で認められてからグローバル市場に展開していくことが合理的でした。しかし、2030年に日本のGDPシェアが4%程度になってしまうとすると、日本メーカーは最初からグローバル市場に焦点を当てたものづくり、コトづくりが必要となってきます。
2. これまで以上の「多様化」
欧米先進国が海外売上の大半を占めていたときはせいぜい10-20カ国が対象でした。しかも、これらの先進国のニーズは比較的同質であり、日本で選ばれる商品がほぼそのまま欧米先進国でも受け入れられてきました。しかし、欧米諸国に加えてアジアや南米、そしてアフリカなどが加わってくると、対象とすべき国はこれまでの何倍もの数となります。環境も違えば文化・習慣も違うそれぞれの国や地域で求められるものが違うのは当然です。エアコンを例にすると、日本では音が静かなものが好まれますが、外気が40度以上になるインドでは静かなエアコンは壊れているようで頼りなく見られるとのことです。また、東南アジアの国では殺虫効果のあるエアコンが売れているようです。多種多様な市場のニーズに合わせて、商品の仕様や機能のラインナップを揃えられる多様性が一層必要となってきています。 
3. 商品の簡素化、いい意味での「低度化」
新興国の台頭により消費市場の裾野が広がりました。消費意欲が高い家計所得15,000ドル~35,000ドルの層は、2010年の2.5億人から2030年は8.9億人へと大きく増大すると予測されています。このような層をターゲットとしていくには、これまで日本の技術者が目指してきた商品の「高度化」とは逆の「低度化」という発想が必要となります。先進国市場向けの高い品質や機能の豊富さは、新興国の中間層にとっては購入可能な価格を越える過剰品質や過剰機能でしかありません。最近は日本の消費者も、目的や用途に応じて適正な品質や機能、価格を求めるようになってきています。グローバル市場向け商品を開発するには、世界最高の品質と性能をひたすら追い求めていくという価値観から抜け出す必要があります。 

これまで日本メーカーは、製造技術の高さや円高、賃金差を利用してグローバル市場に展開するスキームでものづくりを追求してきましたが、このスキームがそろそろ通用しなくなってきています。また、今後のグローバル経済のパワーシフトは、日本メーカーの優位性を低下させると考えられ、日本メーカーは新たなグローバル展開のスキームが必要となっています。
 
次回はグローバル展開における「もの」「コト」づくりのあり方について考えてみます。

2014年1月

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