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2013年12月01日

「もの」と「コト」 でブランド強化

今回はブランド力強化についてお話します。強いブランド力は知名度を高め、継続的にお客様に選択・購入され、価格を維持し、お客様との長期的な関係構築につながります。
日本のような成熟社会では「もの」も「コト」も溢れかえり、商品の機能や品質、サービス個々の秀逸性だけではブランドを強化することが難しくなっています。このような社会でうまくブランド力を強化するためには、何が必要なのでしょうか?
成功例を見てみると「もの」と「コト」で一貫した、独自の世界観を提示できていることが必須のようです。つまり、商品の「もの」と「コト」からなる独自の世界観を提示でき、お客様がそれに魅力を感じる時、ブランドが形成され、強化されていると考えることができます。

インターブランド社の2013年の企業ブランド価値評価世界ランキングによると、首位に立ったのはアップル社でした。ブランド価値評価が高い主な理由は、小売店や広告などで一貫したイメージを提供していることです。お客様がアップルストアに行くと、揃いのTシャツを着た店員にフレンドリーに迎えられ、いろんな疑問にもわかりやすくに答えてもらえます。支払いなどはもちろんiPhoneを介して行うことができます。iPhoneという「もの」を使用するときだけでなく、店内サービスや広告などあらゆる顧客接点で、お客様に一貫した「アップルらしい」顧客体験を提供できています。ソフトやハード、サービスすべてにおいて一貫したアップル独自の世界観を提供し、ブランドをお客様内に作り込んでいると考えられます。

前回のコラムで取り上げたBMW社も2013年の世界の企業ブランドで上位にランキングされています。50年間掲げ続けるお客様への約束「駆け抜ける喜び」に従って「もの」の開発を行い、ダイレクトメール、名刺、封筒、広告物などあらゆるコミュニケーションツールにおいて一貫したメッセージが発信されています。BMW社のように一貫した世界観を提示し、ルールを決め、管理しようとしても、他社にはなかなか真似ができないと言われています。

最近は、商品のデザイン=「見た目」も、ブランド力を高める要素として重要になってきています。アップル社の商品の魅力には、操作性の良さと同時にデザイン性の高さがあります。デザインは商品の価値に大きく影響を与えるため、昨今はメーカーもデザイナーの役割権限を今まで以上に拡大しているようです。色々なスイッチがついた多機能家電よりも、ボタンが少なく美しいフォルムの家電が指向されています。見た目の格好良さが重視されて当然の乗用車だけでなく、昨今はトラクターでもデザイン性を重視するようになってきています。

しかし、ブランド強化には、単に「見た目」が良い、「恰好が良い」だけでは不十分で、デザインにその商品「らしさ」が現れている必要があります。商品デザインを通して、どのような世界観を提案しているかを伝えていく必要があります。これは言葉で伝えるよりも高度で難しいものです。BMW社にはデザイン規定を頑なに守り続けていく社内の仕組みがあり、例えばロングノーズや後方に寄せられたキャビンが特徴的フォルムとして受け継がれています。これはスポーティなエレガンスを際立たせ、止まっている時でさえダイナミクスを感じさせたいというBMW「らしさ」へのこだわりです。

ブランドを強くするには、社内向けのインターナルブランディングも不可欠です。お客様に対応する時には、ブランド戦略に沿って全社一丸となった活動が必要ですが、それにはまず社員が自社ブランドを認識し、理解度を高めておくことが前提となります。このための社内向け教育や研修、人事や評価制度の整備がインターナルブランディングです。BMW社ではBMWの歴史やアイデンティティを幅広く学べる「BMWアカデミー」という研修が用意されています。「BMWアカデミー」では、参加社員に対してBMWブランドを理解・体現し、BMWアンバサダー(大使)として自信とプライドを持って活動できることを目標に、様々なトレーニングを提供しています。

ブランドが強くなっても、ブランドの上にあぐらをかいていてはいけません。お客様の価値観は時とともに変化していきます。当初はユニークな商品やサービスであっても遅かれ早かれ競合先が追随してきます。これまでものづくりやコトづくりを支えた熟練工や部品の供給が難しくなってくることもあります。強いブランド力を長く保ち続けるのは容易ではありません。新しい商品やサービスを開発できなくなると、ブランドは活気を失います。老舗ブランドであっても、常に新しい創意工夫は欠かせません。ブランドエッセンスを大切にしつつ、新しい「もの」と「コト」を打ち出し、独自の世界観を守り、進化させていくことが重要です。

次回は、グローバルの視点から「もの」「コト」づくりを考えてみます。

2013年12月

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