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2025年10月01日

企業のシステムをまるっと自動化!「オートノミック・システム」

オートノミック・システムとは

昨今、AIの進歩であらゆるものの自動化が進んでいます。皆さんは「オートノミック」ということばを聞いたことがあるでしょうか。これは直訳すると「自律的な」や「自発的な」という意味です。2001年ごろIBMが提唱したオートノミック・コンピューティングではITシステムの信頼性や可用性の向上のため「自己構成」「自己修復」「自己最適化」「自己防御」の4つの特性を満たす行動を自律的に行える仕組みを「オートノミック」としていました。

オートノミックの4つの特性図表1:オートノミックの4つの特性
(クリックして拡大できます)

今回紹介するオートノミック・システムは、IT系調査会社大手のGartner社が2022年に「戦略的テクノロジのトップ・トレンド」で注目すべき技術として取り上げたことで再び注目され始めている技術です。このオートノミック・システムは「オートノミック」としての4つの特性を備えるとともに、自律的にできることの範囲が増えています。
オートノミック・システムの仕組みでは、データ・AI等を高度に活用し、定型作業だけでなく、状況に応じた自律的な作業実行を可能とします。そして、自律的に作業できる範囲は、ひとつのシステムだけではなく複数のシステムや、人間が操作していたアプリケーションと作業ロボットなどを含めた企業システム全体を網羅します。システムのイメージとしては、各システムを監視(Monitor)し分析(Analyze)します。そして分析結果に応じた計画(Plan)を立てて実行(Execute)し、また監視するというループを自律的に行います。このループは頭文字をとってMAPEループと呼ばれています。

オートノミックの4つの特性

図表2:オートノミックの4つの特性

オートノミック・コンピューティングでは、図のAIに当たる部分はKnowledgeとして表記され、AIで判断するのではなく過去のルールや膨大な実績を知識として最適な行動を自律的に行う仕組みでした。これに対してオートノミック・システムでは、AIが自律的にリアルタイムに判断して稼働します。

オートノミック・システムが今注目されている理由

近年、ITシステムはますます複雑化・大規模化しており、従来の手動による運用管理では対応が困難になっています。特にクラウドやAI、IoTの普及により、リアルタイムでの対応や高い可用性が求められる中、オートノミック・システムのような自律型の仕組みが注目されています。またAIの進歩で人間の代わりを行うデジタルレイバーの活用可能な範囲が広がってきており、PC上のアプリケーションの操作を行うRPAのようなものから、物理的な作業ロボット操作までが行えるようになってきています。オートノミック・システムではデジタルレイバーなども含めてシステム全体を自律的に動かすことが可能な仕組みが実現できます。
システムが自律的に稼働するようになることで、人的ミスの削減、運用コストの低減、サービス品質の向上が実現できます。少子高齢化・労働力不足といったビジネス環境下で、人間の役割をより人間にしかできないタスクへ注力するため、システム全体でAIを活用して自律稼働する仕組みが注目されています。

オートノミック・システムの今後について

ITシステムの自動化レベルは、自動車の自動運転となぞらえて次のレベルで紹介されることが良くあります。

k2510_3.jpg図表3:自動化のレベル

現在のところ事前に定義された条件などをAIが判断して実行するレベル3の製品が、AIを活用して運用を自動化するAIOps(Artificial Intelligence  for IT Operations)などの分野で実現されてきています。レベル5の完全自律運用の実現にはまだまだ時間がかかりそうですが、人間が監督者として関与するだけで稼働するレベル4は現在のAIの進歩で実現が見えてきています。
少子高齢化が進み一層労働力不足が深刻になっていくことが予想される一方でAIの進歩が期待できる今後のビジネス環境を考えると、今からそれに対応できるシステムの仕組みづくりを検討し始める必要があり、オートノミック・システムはそれを支える重要な技術となるでしょう。

2025年10月

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