2020年07月01日
マルチエクスペリエンス
~オンライン化のその先へ~
マルチエクスペリエンスとは
ITと人々の接点は多様化しています。システムに文字を入力するだけでなく、AIスピーカーに話しかけて声で操作する、スマートウォッチといったウェアラブル端末から情報を得る、など多岐にわたるようになってきました。
また、上記のようなスマートデバイスだけでなく、VR/AR(仮想現実/拡張現実)といった技術も登場しています。実際にその場に行かなくてもVRで風景を再現することができるため、不動産取引では、家の内見をできるようにした事例や、ARで購入予定の家具を部屋に配置できる事例などが既にあります。
システムの利用を通じてユーザーが得る体験のことをユーザー体験(ユーザーエクスペリエンス)といいますが、最近では、多種多様な知覚や体験(エクスペリエンス)となっていることから、「マルチエクスペリエンス」として注目されています。
図1:多種多様なマルチエクスペリエンス
マルチエクスペリエンスの例
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宅配ピザにおけるデジタル化
ある宅配ピザ会社では、従来の店頭や電話からの注文受付だけでなく、オンライン化を進め、モバイルアプリ、スマートテレビ、スマートウォッチからの注文にも対応しています。お客様はあらゆるデバイスからピザを注文することができ、注文したピザの追跡も可能となっています。オンラインによる注文はすでに売上全体の60%を超え、宅配ピザ会社では、購入データを活用して、より良い製品やサービスを開発したり、業務コストを削減したりしています。
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VRショッピング
中国のショッピングモールでは、新型コロナウィルスの蔓延による外出禁止時に、ショッピングモールにVRでアクセスできるサービスを提供しました。利用者はモールの中をGoogleマップのように見渡すことができ、商品は商品画像や値段が表示され、そのまま購入することができます。購入した商品はオンラインショッピングと同様に電子決済で支払うことができます。 VRのショッピングにおける活用は、小売店であるショッピングモールやスーパーマーケットだけでなく、高額な商品を扱うディーラーや住宅メーカーも取り組み始めています。もちろん、アメリカのAmazonや中国のアリババも取り組んでいます。
マルチエクスペリエンスのポイント
多様なデバイスが登場したことや、仮想空間へのニーズの高まりにより、システムの機能やデータを従来よりも多様なデバイスやインターフェースを前提として、デジタルビジネスで活用することが求められています。マルチクスペリエンスにおけるポイントについてご紹介します。
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単体ではなく、複合的なサービス化へ
これまでは、商品をVR上で見るだけでしたが、VRショッピングのように商品の説明を受けたり、商品を購入したりすることができる複合的なサービスとなってきています。単なるVRのサービスから、購入や配送といったこれまでのオンラインショッピングの機能がシームレスにつながることで、より利便性が高まってきています。
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従来システムとの連携で機能性向上
既にオンライン化している部分と、新たなデバイス上での体験を連携することができます。例えば、従来から存在する、在庫検索機能や商品情報、顧客情報と新たなデバイスをつなぐことで、新しいデバイス上での機能を増やすことができます。宅配ピザの例でも、Web上での注文受付機能は従来からあり、それをスマートウォッチなどの新しいデバイスに対応させています。
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オフラインのノウハウ活用はこれから
営業手法や店舗上のノウハウなど、オンライン化されていないノウハウをどのようにデジタルで活用できるのかという点には、まだ改善の余地があります。例えばショッピングでの場面を見てみましょう。従来はお客様と販売員が対面で情報を処理してお勧めの商品をピックアップするなどしていました。VRショッピングにおいては、接客はまだ自動化されていない部分も多く、人の販売員が試行錯誤しながら接客しています。属人化されたスキルを解明しVRショッピングのカリスマ店員が誕生すれば、より面白い体験が提供されるようになるでしょう。
マルチエクスペリエンスの今後
マルチエクスペリエンスを取り入れることで、顧客満足の向上を加速させることも可能でしょう。企業にとっては、現状業務をそのままオンライン化するのではなく、今まで、可視化や言語化できていなかったビジネスノウハウをいかにデジタルに取り込みながら、ビジネスを行うかが重要になるでしょう。
2020年7月
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