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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2011年09月01日

自然界からの「ものづくり」のヒント
フクロウに学びカワセミに近づいた500系新幹線

コスモス

日本の新幹線のお客様は1日83万人で、フランス国鉄のTGV利用者20万人強を大きく引き離し、世界の高速鉄道利用者の中で、ダントツ世界一だそうです。日本の新幹線の技術とシステムの優秀性、信頼性の高さがうかがえます。新幹線は1964年10月1日に誕生しましたが、47年前の開業直後の新幹線に私も乗車する機会があり、新大阪・東京間を最高時速210キロで疾走する新幹線に興奮した覚えがあります。

ある会合で、新幹線の開発に関わっておられた仲津英治さんと知り合い、その開発に関する興味深く感動的な話を伺いました。仲津さんは、国鉄時代から43年に渡り鉄道人生を過ごされ、JR西日本技術開発室長と試験実施部長時代には、当時最速を誇った500系新幹線電車の開発、走行試験をリードされた方です。仲津さんが昨年末に上梓されたデジタル本「自然に学んだ500系新幹線電車-時速300キロの軌跡-」も早速購入しました。その本は、カラー写真や画像も多く、速さを追求すると同時に、安全で静かで環境にも十分配慮された新幹線には、自然から学んだノウハウが十分に活かされていることが良く分りました。仲津さんは「日本野鳥の会」の会員でもあります。

現在、山陽新幹線のこだま号として走っている500系新幹線。1997年3月22日から営業走行を始め、その当時の最高時速300キロ運転を行い、新大阪-博多間を2時間32分から2時間17分に短縮しました。速く走るだけなら比較的簡単だったそうですが、最大の課題は安全で、その次は世界一厳しい日本の騒音環境基準をクリアすることでした。新幹線は時速200キロ以上になると速度の6乗に比例する空力音が出るそうです。空力音の発生源の中心はパンタグラフ。角材が2本並んでいるような在来型では音を抑えるにも限界があると考え、翼型で空力音を抑えようと開発に着手されました。パンタグラフから出る騒音を集電系音とも呼び速度の7~8乗に比例することが後ほど判ったとのことです。

鳥の中で一番静かに飛ぶのはフクロウ類だそうです。ノネズミなどを捕らえるのに極めて静かに飛びながら獲物に近づくために自然が与えた知恵です。フクロウ類の低騒音飛行の秘密は、翼の羽根に小さなノコギリ歯のような羽毛が多数突き出ていることです。空力音は、空気の流れの中にできる渦により発生し、渦が大きいほど音は大きくなります。小さなノコギリ歯のような突起を多数翼につけることで、小さな渦が大きな渦の発生を防ぎます。この原理をフクロウに学んだことで、時速300キロ域での低騒音走行を実現する翼型のパンタグラフが完成できたそうです。

また、山陽新幹線は全線の半分がトンネルで、列車が高速でトンネルに突入すると、破裂音を出すことがあります。いわゆる「トンネルドン」です。これは、列車の断面積が大きくなるほど、トンネルの断面積が小さいほど、そして列車の速度が高速になればなるほど起こりやすくなります。トンネル付近の方々に音と振動でご迷惑が掛かりますが、トンネルの断面積を広げるわけにはいきません。そこで、車両の断面積を減らすことと、先頭形状を鋭く、滑らかにすることで克服しようと考えられました。

この時に思い付かれたのがカワセミです。空気抵抗の小さい空中から、抵抗の大きい水中へ捕食のために飛び込む、あの姿です。大型の実験装置とスーパーコンピュータによる長時間の解析の結果から導き出した先頭車両の形状は、カワセミのくちばしから頭部にかけての姿によく似ていました。こうして、あの美しい流線型の先頭車両が世の中にデビューしたのです。

仲津さんは言われています。「野鳥だけでなく、自然界の生き物は人間も含め、生きんがために、また命を伝えんがために、その形状・機能を発達させてきています。フクロウとカワセミはその中でも私にとって貴重な情報源になりました。走行試験が、自然界の中に、ものづくりのヒントや答えがあるとつくづく思うようになった契機です。さらに、自然を大切にしなければいけない、人類は自然環境のためにもっと謙虚に生きる必要があるという信念を持つに至りました」。
仲津さんは、現在、「地球に謙虚に運動」の代表としても活躍されておられます。

スピードと安全、環境、快適性、そしてコスト。これらの互いに背反する課題解決に向けての情熱と使命感とチームワークで、あらゆる可能性を追求していった姿勢。自然界からのヒントを基に、世界に先駆けて実際の新幹線の車両で実現した日本のものづくりの精神に感服しました。それと同時に、いろんなヒントが自然界に、自分の身の周りにあると聞き、とても新鮮に感じました。このような日本の企業が取り組まれている価値の創出に、私たちも微力ながら貢献できるように尽くしていきたいと思います。

昨今、私どもも、新たなチャレンジが増えてきました。ERPとPLM、MES(製造現場実行システム)などの各システム間での連携、ITモダナイゼーションやクラウドソリューションの提供など、いろんな技術やソリューションの可能性を追求し、より進化させていきたいと考えています。新幹線のような「信頼と安心」をずっとお持ちいただけるように、原点であるQCDは常に根幹に据え、そのうえで弛まぬ努力を続けていきます。大事なことは、社員一人ひとりが果たすべき役割をきちんと認識し、情熱と使命感を持って実践することです。そのことで新たな情報が入り、身近にある情報とも掛け合わせて斬新な発想や解決策も生まれてきます。常にスピード感を持ち、視野を広げ、熱い思いでお客様にITを通して貢献していきます。

【仲津英治氏のプロフィール】
昭和19年(1944)11.16大阪市生まれ
1968 国鉄入社
1972-74 西ドイツDAAD給費留学生としてBraunschweig 工科大学に留学
1989-1995 JR西日本(西日本旅客鉄道株式会社)技術開発室長&試験実施部長
2010.6 株式会社新大阪ステーションストア監査役を最後にJR西日本関係含め、会社勤務を終える。
 
NPO関係所属:
「地球に謙虚に運動」代表
NPO法人大和まほろばNPOセンター主席調査員
NPO法人エコネット近畿副理事長
さんさん大津常任理事
NPO法人気候ネットワーク
びわ湖自然環境ネットワーク
びわこEMLove
もったいない学会
(財)日本野鳥の会本部&京都支部各会員

2011年9月

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