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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2016年08月01日

なぜ、今 AIなのか

ひまわり

1980年代、AI(Artificial Intelligence)ブームがありました。しかしながら、それは実用として社会に普及しませんでした。当時のAIはルールエンジン(ルールを記述するのに適したプログラム)と形式化されたデータ入力システムの2つから構成されており、自らルールを見出し、学習することで知能が発達することはできず、人間が決めたルール以上の能力を持つことはできませんでした。認識できるのは定型化されたデータであり、また、当時のコンピュータの処理能力などから限定された利用しかされず、とても人工頭脳と呼べるものではなかったと記憶しています。

現在、ムーアの法則(半導体の集積密度は18~24ケ月で倍増する)に従って、1980年代と比べるとコンピュータの処理能力が飛躍的に高まり、メモリーもネットワークも同様に倍々で性能が上がりインフラが整ってきたことで、画像認識や音声認識技術も進化し、文字認識も定められた形式のデータだけでなく、自然言語をそのまま認識できるようになりました。

2011年、IBMのWatson(IBMの創業者のTomas J Watsonから命名)とネーミングされたコンピュータがアメリカのクイズ番組で優勝したことで、再び人工知能が脚光を浴びることになりました。もっともIBMはWatsonをAIとは呼ばずに「認知コンピューティング(Cognitive Computing)」と呼んでいますが、Deep Learning(深層学習)も同様に画像や音声、自然言語を理解し、学習を重ね、知識を高めていくことが可能になったわけです。

このAIを適用する取り組みがいたるところで始まっています。銀行のコールセンターでのテストの結果では、1件当たり平均30分かかる問い合わせが5分に短縮できるとのことです。創薬では、膨大な酵素の組み合わせの中から、AIによって高速で有効な組み合わせを導きだしています。医療分野でアメリカでは患者の画像や検査データ、問診結果を蓄積し、医師が患者の疾患を判断するためのリコメンデーションをもらうことが可能となり、正確な診断と効率化が図れ、医療費の削減に貢献しています。六法全書や判例を読み込ませれば、弁護士は生産性を上げることが可能になるかもしれませんし、システム開発も設計さえ出来ればプログラミングやテストはAIの仕事になるかもしれません。近い将来、AIやロボットによって、一部の高度な技術や知識、F2Fでサービスを提供する以外の多くの仕事がなくなるかもしれず、その結果、アメリカでは48%の仕事がなくなると言われています。一方、AIは車の自動運転にも応用され運転手不足や高齢者の人為的事故を減らす効果もあり、少子高齢化対策としても有効でしょう。

この恩恵を受ける企業と投資家に富がますます偏在し、その富から税を徴収し、仕事を失った人々に再配分して社会のセーフティネットを構築しないと、今の世界で起きている多くの庶民の不満が鬱積され、とんでもない世界になってしまうリスクもあると思われます。MS社がAIを公開して色々な人が教え込む実証実験をしていたところ、悪意に満ちた教えをする人がいたためにAIが間違った学習をし、実証実験をやめてしまった事件が最近ありました。ロボットと人類が戦う未来を描いた映画、「ターミネーター」のような危うさも秘めていると思います。AIは便利で社会に不可欠なものになる一方で、大きな危険性をはらむことにもなりえるということです。先進医療の倫理的課題と同様、ITの先進技術にも倫理的な規制の議論、法的整備が必要になる日が近いかもしれません。すでに街頭カメラによる画像認識は監視社会を作り出しており、犯罪から個人を守るのに使える一方で、個人のプライバシーを守る事とは相反する諸刃の剣です。SNSも便利なコミュニケーションツールですが、同様の危うさを秘めています。デジタル革命は第四次産業革命といわれていますが、我々は100年単位の世界的な大きな社会の変革に直面しているのかもしれません。AIをどのように活用するのか、その秘めた可能性が大きいだけに十分な議論が必要だと感じています。


2016年8月

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