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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2016年07月01日

サイロ化の罠

風鈴ビジネス書のベストセラーである「サイロ・エフェクト」は、フィナンシャルタイムズ誌の記者であり文化人類学者である著者ジリアン・テット氏が、著名な企業や組織が、なぜ組織が縦割り、タコつぼ化し、いわゆるサイロに陥るのかを、文化人類学者としての視点で分析し、具体的な事例から説き起こした本で、「なるほど」と思わせます。少し内容を紹介します。

ソニーの凋落しかり、リーマンショックのUBSしかり…。組織や会社が成功し成長を続けると、なぜ組織間の壁、縦割りによる弊害ができるのか。かつてウォークマンで成功したソニーは、なぜアップルに負けたのか。創業者の下で企業が成長し、色々な事業が併存し、それぞれの事業部門では自組織の発展に注力する。他の組織との切磋琢磨で群雄割拠し、お互いが会社の中で主導権を握ろうと競争が生まれ、他の事業との相乗効果を狙うよりは自部門の最適化に猛進する。その結果、サイロ化が起こり、いずれ創業者からサラリーマン社長に交代すると、その社長の出身事業部門以外の人間は言うことを聞かなくなり、創業期の輝きを失い、時には不祥事にまで発展する。

当時雇われ社長であったソニーの大賀社長がなぜウォークマンで成功したのか、それは創業者の盛田さんが大賀さんを後押ししたからで、やはり創業者によってなされたヒット商品であると解釈できます。ではなぜ、創業者がいなくなると企業はその輝きを失うのか。それはソニーのみならずマイクロソフトも同じではないかと思います。創業者は会社全体を掌握し、自社で抱える複数の事業を俯瞰し、会社全体として統合された価値創造が可能です。創業者がいなくなれば、群雄割拠、各事業のリーダーが好きなことを行い、まずい事実は隠ぺいされ、内部からは見えなくなります。既存の価値観や文化、組織の仲間意識で良かれと思っていることが、世間から見ればおかしなことでもまかり通る。これが企業の不祥事に繋がるわけです。

Facebookの創業者であるマーク・ザッカーバーグCEOは組織が150人を超えるとサイロ化が始まると考え、組織横断型のプロジェクト、流動性の高い人事制度とともに、オープンなコミュニケーションを事業とする会社の生業そのままに、オープンで大胆に素早くという「ハッカーウェイ」という企業文化を育てることでサイロ化を防ごうと取り組んでいます。


4月の社長通信でも紹介しましたが、当社は今年4月1日に事業組織を再編しました。当社は神戸製鋼グループ各社へのITサービス提供はもとより、一般のお客様にITサービスを提供し、複数のソリューション事業で成長してきました。それぞれの事業が会社の事業の柱として「我こそは」と切磋琢磨してきました。その結果、各事業部門が得意のソリューションありきでお客様に提案活動をすることになります。一方、お客様は複雑化、高度化するITの世界で一緒にシステムの構想段階から参画してくれるパートナーを求めており、最初からソリューションが決まっているわけではないケースも多くなっています。その結果、お客様の期待するソリューションを提案できなかったり、お客様の要望を既存のソリューションに織り込むことで追加開発が多くなって予算をオーバーし、時にはプロジェクトが難航することも起こっていたのです。

今後、ITは効率や生産性アップから、直接事業に貢献するIoTのような需要が増えることを見据えて、従来のソリューション軸の事業組織からお客様軸の事業組織に変えました。加えて従来のソリューションの横串を通すことにしました。まだ事業構造を変えて3カ月ですから成果はこれからです。しかしながら、組織構造を変えただけでは恐らくサイロ化の危険性が残っていると思いますのでローテーション、風通しの良い組織構造、組織横断的なプロジェクト構造にしないといけないと思っています。事実、社員とのタウンミーティングでは「他の組織が何をやっているのか分からない」「何をやっているのか教えてほしい」、中間管理職からは「部門を超えたローテーションが必要だ」との声が上がっています。

これからの社会やビジネス環境では、多様な価値観やライフスタイルをもった社員が活躍すると思います。一方、会社のような多様な人々の集団は、標準化されたルールとプロセスがないと回らないのですが、会社の仕組みが硬直化すると、今まで以上に大きな弊害となる危険性を秘めています。常に変化を恐れずにチャレンジしていく企業風土、オープンなコミュニケーションと共通の価値観を作り上げることで、ジリアン・テッド言うところの「文化人類学的に組織は発展するとともにサイロ化する」という危険を乗り越えて成長していきたいと思っています。


2016年7月


■ご参考
『サイロ・エフェクト 高度専門家社会の罠』(文藝春秋)
著者 ジリアン・テット

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