SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)…皆さんも耳にしたことはあるでしょう。

経済産業省によると、SXとは、「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取り組み」と説明されています。また、説明にある「同期化」とは、「社会の持続可能性の向上を図るとともに、自社の長期的かつ持続的に成長原資を生み出す力(稼ぐ力)の向上と更なる価値創出へとつなげていくこと」を指します。

日本企業の資本効率性や長期成長に向けた投資は伸び悩み、「稼ぐ力」や長期的な企業価値の向上は、今や待ったなしの状況です。加えて、気候変動や地政学的リスクといったサステナビリティ課題が一層複雑化する中、長期的かつ持続的な価値創造に向けた企業経営が一段と難しい状況にあります。長期的かつ持続的な企業価値向上のためには、SXをキーワードとする経営変革こそが今後の経営に必要不可欠だと読み取れます。また、二酸化炭素排出量が多く環境負荷の大きい燃料の使用を避け、環境負荷の少ないエネルギーへの置き換えを進める変革も注目されています。これは、GX(グリーン・トランスフォーメーション)です。

ところで、皆様の「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」の取り組み状況はいかがでしょうか。事業や働き方の効率化や企業変革に取り組むというDXは当たり前のように浸透しましたが、実際にはまだまだ道半ばの取り組みが続いている企業も多いことでしょう。SXとの違いを簡単にまとめると、「DXはデジタル技術を活用してビジネスを変革する取り組み」ですが、SXは「企業が経営と社会持続性を両立しながら、企業の価値を作り上げていく取り組み」です。一見、異なるようですが、「企業を変革する取り組み」という点では共通しています。稼ぐ力をデジタルの力によって強化していくDXから、その稼ぐ力を人の力によって持続させるSXがあります。デジタルを起点に、文化や風土など企業そのものを変革するDXから、人の力によって、持続開発目標(SDGs)に取り組み、企業の社会的価値を向上するSXがあります。このようにDXとSXは関連性があり、DXがデジタル/データを活用する領域とするならば、SXはDXそのものを駆使して、「人材」を活用する領域とも言い換えられるでしょう。

我々は、単にSAP ERPを導入するだけでなく、お客様に活用いただくことを推進しています。導入した後、その先のデータや人材の活用を含めたご支援をしています。上記のような考えもさることながら、根底にあるのは「嘘をつかないデータ(デジタル)力」と、それを生かす人間力の両輪で自転車を漕いでいくことが重要と考えているからです。SAP ERPを導入したお客様の中には、「データは見えるようになったが活用が進まない」、「マネージメントがうまくできない」など、導入後にうまく活用できていない状況を耳にすることが多くあります。原因は様々ですが、何をすればいいのかわからないということもあるのでしょうし、日本の風土や企業文化に起因することもあるでしょう。しかし、時は待ってくれません。できるところから、コツコツを小さな成功体験を積み上げていくような文化を醸成しながら進むことが大切です。

小さな成功体験を詰み上げた変革には時間がかかることもあるでしょう。ただ、今変わらないことにはホラーストーリーを回避できません。人間力とデータ(デジタル)力という永遠のテーマともいえる難題は、DXの更に先にあるSXを見据えることによって焦点を替え、息苦しさを緩和しながら歩みをとめず、それぞれのペースで進んでいくことが重要です。

我々は、そんなお客様の歩みに対し、時には引っ張り、時には伴奏し、時には後ろ支えられるような Co-innovationな活動をしていきたいと考えています。