「DX」というキーワードが一般的になって以降、企業は様々な変革を求められています。DX化への先進事例としてDX銘柄に取り上げられるような企業もある一方で、多くの企業では取り組みを進められていない、あるいは、成果を得るまでに至っていないのが実情ではないでしょうか。

当社のお客様においても、「そもそも何をどう変革すればいいのかわからない」、「変革の狼煙を上げたが、現場の理解が得られない」といった声を聞くことがあります。さらに悪いケースでは、システム上の制約から、To-Be(理想像)を評価する際の比較先が「あるべき姿」から「現行業務」にすり替わってしまうことがあります。その結果、変革が改善に、改善が現行踏襲となり、システムは変わってもできることは大きく変わらないという事態に陥ってしまいます。

コロナ禍や法改正などの外部環境の変化により、強制的に変革(変化)が起こる場合もありますが、多くの企業にとって自ら変革を主導することが困難であることは間違いありません。

筆者は、現在のような企業変革を求められる時代において、関係者全員に一気に変革((変化))を求めるのではなく、「地に足のついたチェンジマネジメント」が重要だと考えています。

「地に足のついたチェンジマネジメント」とは、掲げた方針・目標を、PDCAサイクルを用いて、段階的に関係者へ腹落ちさせ、意識・行動を変化させることです。プロジェクトが大規模・複雑化してきており、関係者が多様であることから、計画と実行、評価と改善がしっかりと行われる必要があります。

当社はSAPの導入に際し、過去の経験からの教訓も踏まえ、「コミュニケーション計画」を策定しています。これはプロジェクトのステークホルダー(例:お客様内部)においてチェンジマネジメントをどのようにして進めるかを計画するものです。プロジェクトに関わる様々な立場の方が適切なタイミングで当事者意識を持つためのアプローチや、変化をモニタリングするための指標や手法などを具体的に定義しています(下図参照)。

これらをシステム導入においてプロジェクトマネジメントと同様に活用し、地に足のついたチェンジマネジメントを行っていくことで、DXプロジェクトの成功率を高めていくことを目指しています。