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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2014年10月01日

日本人の食について考える

実りの秋

豊饒の秋です。新米や芋、きのこ類など、食べることが楽しみな季節になりました。子供の頃は、父親が丹精込めて育てた家庭菜園で収穫を手伝ったものです。生まれ育ったのは地方都市の住宅地ですが、父は住宅地の真ん中で野菜や果物を作り、お米以外はほとんど自給していたと思います。さらに鶏も飼っていました。餌は畑で余った菜っ葉類や食べた後の貝殻をつぶしたものなどでした。その鶏は毎日卵を生み、時には蛋白源となって食卓にものぼり、糞は畑の肥料になっていました。自然のサイクルが回っていたんですね。日本全国、このようなサイクルが回っていた時代には「食の安全」なんて言葉はありません。食材は自分たちが育てたものや、目の届く所で出来た安心なものだと皆が思っていた時代でした。

それが高度経済成長期に入り、工業化社会になってから、日本でも欧米でも公害が起こり、食の安全が脅かされ、多くの問題が出てきました。中国でも「食の安全」が大きな社会問題となって久しいです。事件が起こるたびに法律が整備されるものの、企業と監督官庁との癒着など、いつまでもイタチごっこのようです。先般上海で起こった食品加工会社の賞味期限切れ食材や床に落ちた材料の再利用の事件は、放映画像がショッキングだったこともあって覚えておられる方も多いと思います。これは社員個人の「食」に対する意識の問題はもとより、「消費者の健康より儲け優先」という企業姿勢の問題です。このような事件について、インタビューに答えた人もどこかあきらめ顔です。今回メディアに出た会社は外資だったため比較的表に出やすかった、と言われていますので、実際この問題の根は相当深いものと推測されます。世界中が食の加工基地として利用している中国で「食」に対する意識が高まっていくことを期待したいものです。

日本でもたびたび偽装問題、賞味期限切れ問題などが起こっています。きっとバレないだろうとつい手を染めたのかもしれませんが、本物を求める消費者を欺くことは、食の安全を脅かすのと同じです。日本ほど新鮮で品質の高い食材が揃う国はないと言われます。これは、素材を大事にする日本料理の精神が行き渡っているからであり、何ごとにも本質を追求していく姿勢の表れなのだと思います。このような問題が起こるのは、日本の誇りへの裏切りとも言えます。

ある新聞記事にありましたが、フランスで活躍する日本のシェフがどうしてもなじめないこととして、ミシュランに出てくるような有名レストランでさえ、床掃除したバケツの汚水をシンクに流すことを挙げていました。後でいくらきれいにシンクを洗ったとしても、日本では心情的にまずやらないことでしょう。なじみの寿司屋では、営業終了とともに寿司ネタのケースから床まですべてを、毎日徹底的に流水で洗っています。調理の腕はもちろん、店を清潔に保つ作業にも、全力を尽くす精神が表れていると思います。茶道・華道などの「道」に通じるものかもしれません。グローバル化の中で日本人が追求するものは、グローバルスタンダードだけではありません。グローバルスタンダードを知りつつ、日本人の美意識に誇りを持とうではありませんか。それが日本の価値を高め、新たな創造にもつながると思います。

ところで、日本の食糧自給率は、先進国で最低レベルです。いくら日本の食が豊富で安全でも、これでは日本の食が守れるのか不安になります。もっとも、この食糧自給率はカロリーベースの計算で、飼料となる小麦、トウモロコシ、大豆などカロリーの高い穀物の影響を受けた数字です。また、農業生産には原油などのエネルギーも相当必要なので、一概に農業政策が旧態依然としているせい、というわけでもなさそうです。

しかしながら、総務省統計局によると、農業就業人口は1960年の1454万人から大きく減り続け、1990年には500万人、2012年には250万人にまでなってしまい、しかも60歳以上が80%の200万人を占めるとなると、今後10~20年後には日本の農業は壊滅してしまうのでないかと心配になります。農業の構造改革、効率化は待ったなしの課題だと思います。

その課題に対して、農業にITを活用した実例がたくさん出てきています。例えば農場の生産管理システムでは、作付計画、作業実績、コスト管理、農場の場所ごとの降雨量積算、在庫管理、市場価格情報のサブシステムがあり、農家は最適なタイミングで生産、出荷が出来るようになっているとか。また、農場の統合データ管理システムでは、土壌分析や水質管理、温度や天気、気圧などの情報を一元管理するなど、ITを使った農業が様々な形で実用化されています。直接的な農産物生産の効率化と合わせて、経営の支援、物流革命などに、クラウド、ビッグデータ、スマートメディアなどを駆使すれば、食の安全・安定的な供給に大いに貢献できると思います。当社の得意な製造業のシステムとも共通部分があり、個人的にはいつかお手伝いができればと思っています。


2014年10月

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