2026年05月01日
ゴルフに学ぶ「失敗の許容」とダメージコントロール
~失敗を制して、持続的成長を実現する~

今年3月に行われた女子プロゴルフの開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」で昨年の賞金女王、佐久間朱莉選手が2日目からの首位を守って優勝しました。初日のスタートから3日目の8番ホールまで44ホール連続ボギーなしというツアー記録を更新する安定感での勝利でした。
3歳で父に連れられてゴルフを始めた佐久間選手は、小学生の時に日本テレビの番組『Going! Sports&News』の企画でお笑いコンビ・くりぃむしちゅーの上田晋也さんとゴルフ対決を行ったことで早くから注目を集めました。中学3年時の2017年、「日本女子オープンゴルフ選手権競技」に出場していた時、同組で回った原英莉花選手のキャディにスカウトされ、高校入学前の2018年3月に尾崎将司選手が設立した『ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー』に1期生として入門しました。2021年に初めて受けたJLPGA女子プロテストで2位に3打差をつけてトップ合格。同アカデミー出身者では、西郷真央選手に次ぐ2人目のプロゴルファーとなったのです。
しかし、プロデビュー後は何度も2位に入りながら、あと一歩のところで優勝に届かない時期が続きました。そんな中、5年目の2025年、「KKT杯バンテリンレディスオープン」で念願のツアー初優勝を飾ると、そのまま一気に4勝を挙げ、賞金女王に輝きました。勝てずに苦しんでいた時期、佐久間選手の心の支えとなっていたのが尾崎選手の言葉でした。「私のゴルフ人生においても、なくてはならない存在だったジャンボさん。これまでにかけていただいた数々の言葉は、一生忘れません」と語っています。
「ゴルフはミスのスポーツ」と言われますが、尾崎選手の哲学もそこにありました。「ゴルフはナイスショットを極めるよりも、ミスをどれだけ“許容範囲内のミス”に抑えられるかがスコアアップの鍵になる」と多くのプロゴルファーが語るように、避けられないミスの影響を最小限にとどめ、ミスを受け入れて立て直すことが重要なのです。
また、「過去は振り返らない。一番新しい勝利が最も貴重なものなんだ」という言葉も、尾崎選手の名言の一つです。世界プロツアー最多となる通算113勝を誇る尾崎選手でさえ、すべての試合で優勝してきたわけではありません。佐久間選手が「もう勝てないのかな」と悩んでいたとき、尾崎選手はこう声をかけました。「俺も優勝の数より2位の方が多いんだよ」と。勝ち続けた象徴のように見える存在であっても、実際には失敗の方が多い。その言葉によって、佐久間選手の視界は大きく開けたといいます。
ゴルフが「ミスのスポーツ」であるように、ビジネスの世界においても失敗は「例外」ではなく「前提条件」です。言い換えれば、ゴルフのスコアがミスショットの積み重ねであると同様に、ビジネスの成果もまた試行錯誤と失敗の蓄積の上に成り立っています。
だから重要なのは、失敗をなくすことではなく、失敗を織り込んだうえでどう対処するかという視点です。そのためには、許容できる失敗の範囲を明確にし、その範囲内に被害を抑えるための対応策を事前に設計しておくことが欠かせません。想定される失敗とその対応をあらかじめ計画に組み込んでおくことで、トラブルの際にも混乱を最小限に抑え、事業を前に進める力となります。これこそが、コンティンジェンシープランの本質といえるでしょう。
ただし、どれほど入念に計画を立てたとしても、それだけで万全と言えるわけではありません。現実のビジネスの現場では、必ず想定外の出来事が起こります。想定していない事態に直面したとき、そこで問われるのがダメージコントロールの力です。状況を冷静に見極め、被害を最小限にとどめながら、少しずつ立て直していく。この「崩れながら立て直す力」は、マニュアルを読んだだけで身につくものではありません。失敗と向き合い、試行錯誤を繰り返す中でしか培われない、経験と訓練の積み重ねなのです。
今の不確実性の高いビジネス環境を考えると、組織に求められるのは二つの能力の両立です。一つは、リスクを事前に想定し、対処を設計・計画する力。もう一つは、想定外の事態に直面したとき、適切に判断し臨機応変に対応できる力です。そして、その両方をバランスよく機能させる「人」の存在が不可欠です。
“正常時しか知らない人”ばかりを育ててしまえば、いざというときに組織は機能しません。様々なトレーニングや経験を通じて、厳しい状況でも意思決定できる人を育てていくことが、企業にとって重要な課題になります。その一つの方法として、リーンスタートアップに代表されるような「小さく試し、早く失敗し、学び続ける」アプローチも有効ではないかと考えます。
失敗を排除しようとする組織は、同時に成長の機会も失っていきます。失敗を前提とし、それを制御しながら学習に転換していく。この循環を回し続ける組織こそが、持続的に成果を上げていくのではないでしょうか。
2026年5月
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Kobelco Systems Letter を購読ライター
代表取締役社長
瀬川 文宏
2002年 SO本部システム技術部長、2008年 取締役、2015年 専務執行役員、2017年3月より専務取締役、2021年3月代表取締役社長に就任。現在に至る。
持ち前のガッツでチームを引っ張る元ラガーマン。
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