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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2016年11月01日

100年ライフを見据えた働き方

201611.jpg 長時間労働が社会問題になって久しいですが、先日も電通の新人社員の過労死とも思える自殺がありました。1991年にも同様の自殺があり、会社として行政からの厳しい指導や社会からの批判にも対処してきたと思うのですが、従来の価値観や慣れてきた労働環境を変えることは一足飛びには難しいのだと思わされます。当社でも、従来の労働基準法、36協定など遵守するという観点からは異なり、現在は将来を見据え、少子高齢化にともなう優秀な人材確保として企業イメージの向上、育児・介護や個々人の事情に対応できる多様なワークスタイルの確立、言われたことをしっかりやり遂げるスタイルからイノベーティブでハイバリューな仕事への変革、時間ではなく過程やその結果でどれだけ価値を創造できたかという観点でワークスタイルの変革に取り組んでいます。一つには残業を減らすことにフォーカスして、毎週水曜日にノー残業デーを実施しています。本来、効率を上げて残業時間を減らすのは個人の裁量ですが、周りが帰らないと帰りづらいとの声もあり、まずは全社一律に行っています。また、本社では毎晩20時にオフィスを消灯するのですが、帰らずに再度点灯して仕事を続ける社員も散見され、慣れた仕事のやり方を変えるのはなかなか難しいものと実感させられます。

このところ、さらに進んで新しいワークスタイル変革にチャレンジしている企業も話題になっています。日本電産はさらにグローバルに成長するため、働き方もグローバル化しようと残業抑制を徹底。SCSKはIT業界が3Kと言われたイメージを払しょくし、残業を徹底的に減らす施策を展開され業績を向上されています。ロート製薬では副業を解禁し、多様な才能を活かすことを会社の成長につなげようとされています。アメリカのIBMでも数年前から副業を認めているそうですが、そうしないと優秀な人材が集まらないのだそうです。ヤフーは週休3日制の導入を進めています。給与は減らさないが業績も減らさないために個人の生産性がさらに求められることになりますが、新しいアイデアによって新たな成果を出すという狙いでしょう。

日本は1960年代から始まった高度成長期、社員は正社員で残業、休日出勤も厭わず社畜とまで言われ、モーレツ社員、24時間戦えますかといったCMも普通に感じた時代でした。会社に言われたことを黙々と頑張れば年功序列で給与が増えたのです。1990年代、日本経済の成長が止まると企業は労務費を下げるために規制緩和と称して非正規社員を増やし、今や社員の4割にまで達しています。少子高齢化によって生産人口はさらに減少する一方で、女性の活躍と言いながら管理職比率はなかなか増えず、すでに北欧では解消されたいわゆるM字カーブもなかなか改善されていません。

世界全体から観れば、日本は効率を求める働き方からイノベーティブな働き方に変わる狭間にいます。スタンフォード大学のダッシャー教授によれば、国民一人当たりのGDPが高くなればなるほどイノベーティブで起業家的な活動が活発になるとの指摘がありますが、それによりますと、日本の国民一人当たりのGDPは35,000ドル以上のInnovation-Driven Economyとそれ以下のEfficiency-Driven Economyの間にあるとのこと。今後、国民総生産量ではなく一人当たりのGDPが先進欧米国並になるためには、従来の効率化からよりイノベーティブな仕事にシフトしていかなくてはならないと思われます。

最近、『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』* という本が出版されました。それによれば現在100歳の人は1%、つまり1916年生まれの人は100人に1人しか100歳まで生き残れないが、2007年生まれの人は50%の人が医療の発達や生活習慣の改善などで100歳以上健康に生きる可能性があるそうです。この本が出版されたのと時を同じくして三笠宮様がお亡くなりになりました。偶然にも100歳でお亡くなりになったとのことで調べてみたのですが、宮様がお生まれになったのは1915年12月2日で、同年に生まれた人は180万人、今年100歳になられた方々は約3万人で、約1.7%にあたります。最長寿国である日本の場合はさらに進んでいる訳ですね。2007年生まれの人が100歳になる頃は高齢化社会がさらに進み、今の年金制度はとっくに無くなっており、仮に老後の生活費として現役の時の年収の半分を得ようとすると65歳どころか80歳まで現役で働かないといけないのだそうです。目もくらむような話ですが、未来はAIやロボットの発達などでシンギュラリティがもっと進み、想像を越えるような社会が待っているので、今の就学、就業、働き方など根本的に人生設計を変えていく必要があるわけです。

従来の就学、就業、引退という3ステージから100年の人生を送るための新しい人生のステージ、新しい資金形成、新しい時間の使い方、はたまた結婚や家庭の在り方なども変わっていくことを示唆しており、今、話題になっている長時間労働やワークスタイル変革などは今後起こりうる大きな変化への対応として、ほんのプロローグでしかないと思われます。個人としては60年間働き続けるのか、途中で新たな自己投資によって次のステージに行くのか、あるいは週3日働きながら残りの時間を自己投資に充てて、次のステージの準備をするのか、従来よりも人それぞれ多様な人生設計をする必要性があるでしょう。企業としても、社員と企業との関係も変わって行くでしょうし、多様な人生設計に対応して優秀な人材の確保と育成が必要になってくるでしょう。長時間労働の問題も今までの問題認識に加えてより大きく広く捉まえて行く必要があると考えさせられます。


(*)LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略
Lynda Gratton, Andrew Scott著 池村千秋訳 東洋経済新報社


2016年11月

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