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毎月更新中!社長通信 社長が気になること、考えさせられたことを綴ります。

2023年04月01日

バスケットボール日本女子代表とアナリティクス
~データドリブン経営への変革~

桜

野球の世界一決定戦だけでなく、今年は8月25日から4年に一度のバスケットボール・ワールドカップがフィリピンをメイン会場に日本、インドネシアとの共催で行われます。2010年大会までは「世界選手権」でしたが、14年大会から「W杯」の名称になり32チームが参加して世界一を争います。
すでに開催国枠で出場権を得ている日本男子代表(FIBAランキング38位)ですが、一昨年よりアジア地区予選を戦い、格上のイラン(同20位)に勝利するなど最後を5連勝で締めくくりました。この日本男子代表を率いているのが東京五輪で日本女子代表を史上初の銀メダル獲得に導いたトム・ホーバスヘッドコーチです。
女子は、長身選手を中心としたパワー・バスケの国が多く、東京五輪の各国代表と日本代表では平均身長で約10センチの差がありました。そこでホーバス氏はこのフィジカル面での不利を乗り越えるために、いち早くパワー・バスケからの脱却を図り、①しつこいディフェンス②スピード③3ポイントシュートという武器を磨くとともに、スタッツデータの分析をもとに戦術を組み立てたアナリティック・バスケで勝利を重ねました。

数字やデータを使ってスポーツを分析するアプローチは、今に始まったものではありません。プロ野球では故・野村克也さんがデータに基づく「ID 野球」を掲げて快進撃を続けたことは有名です。
近年はウェアラブルデバイスやIoTデバイスなどの普及によって、様々な事象がデータ化されるようになりました。加えて解析技術の向上にともない膨大なデータを分析できるようにもなり、その分析の精度が試合の勝敗に大きく影響するようになってきました。

ビジネスの場面でもデータ活用の需要はますます広がっています。経験や勘に頼るのではなく、収集・蓄積されたデータの分析結果に基づいて経営戦略を決める「データドリブン経営」への変革が進んでいます。データを活用することで人間の目だけでは気づけない課題等を客観的に把握でき、正しい経営判断や新しい事業戦略を立案することができます。
今やスポーツもビジネスも、優秀な選手や社員を集めてチームを強化する時代から、様々なデータを収集、分析することで、個の力をチーム全体の組織力につなげ、効率的な戦略で目標達成を目指す時代に変わってきているのです。

加えて、データを用いて迅速かつ的確な意思決定を行うデータドリブン経営を実践するには、データの「収集」「分析」「フィードバック」のための最新技術やツールを使いこなすことが求められます。そのため最近は、高度なデータ分析スキルを持つデータサイエンティスト、あるいはアナリストといった人材が重要視されてきています。そんなデータ分析の専門人材を外部から受け入れる場合には、彼らがモチベーションをもって活躍できる環境をいかに準備できるかが大切になります。最低でも組織全体でデータを活用していこうという姿勢がなければ、彼らのスキルを有効に活用することはできないでしょう。
また、スポーツでは負けた時に、なぜ負けたのかを様々な角度から分析して考えることで多くの学びを得ることができます。ビジネスにおいても同様です。なぜ失敗したのか、収集すべきデータが間違っていたのか、データ分析の手法に問題があったのか、戦略の実行能力が足りなかったのか、「失敗を恐れず、失敗から学ぶ」そんな組織文化の醸成もデータドリブン経営には必要になってくるのだと考えます。

2017年、ホーバス氏が女子のヘッドコーチに就任した際に「東京五輪では金メダルを取る」とはっきりと目標設定しました。「選手たちは『本当に勝てるの?』と懐疑的な雰囲気でしたが、『あなたたちは3ポイントが上手じゃないですか』と鼓舞したんです」と振り返ります。選手たちの持ち味を引き出し、さらに上を目指すようにハッパをかけてモチベーションを高める。どのような戦術や戦略も、個々の選手の成長があってこそなんです。
また、ホーバス氏は通訳を一切使わなかったそうです。通訳をつけると選手は通訳の方に視線を向けて話を聞くので目を見て話せない。それとネイティブでない日本語で伝えようとすると少し考える時間がある分、的確に伝えられるからだそうです。
データを活用し戦略、戦術に落とし込み、それを実践するためには、高い目標の設定と普段からのコミュニケーションで共通の理解を深めていくことがとても重要だと認識していたのでしょう。

「オリンピックではチームの原則、フレームワークだけを決め、試合中の判断は選手たちに委ねました。すると、原則を理解した12人は、私でさえ驚くような創造的なプレーを見せてくれるようになったのです。これは本当にうれしかった」とホーバス氏は振り返ります。
データドリブン経営の時代、リーダーが絶えず先頭に立って引っ張っていくのではなく、まず企業のパーパスや行動指針などの「原則」を定め、データ分析結果から得られた戦略のフレームワークを示して、あとは現場の社員が臨機応変に対応できるよう社員一人ひとりの成長をサポートしていく、そんなリーダーシップのスタイルが求められているのかもしれません。

2023年4月

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