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これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2020年09月01日

エンパワードエッジ
~進化したエッジコンピューティング~

当コラムで以前紹介している「エッジコンピューティング」や「エッジ」というワードを耳にしたことはないでしょうか? エッジコンピューティングというワードはIT業界では4,5年前から使われ始めましたが、その後通信技術やコンピュータリソースのさらなる発展とともに進化しており、今回は進化、拡張されたエッジコンピューティングである「エンパワードエッジ」について紹介します。
※エンパワードエッジは全く新しい技術ではなく、エッジコンピューティングの進化版を意味します。

エッジコンピューティングの登場から現在まで

当コラムでは2016年9月に初めてエッジコンピューティングを紹介※1しましたが、エッジコンピューティングとは、当時はモノのインターネット(IoT)やクラウドの発展とともに出てきた考え方でした。
“エッジ”とは端や縁を意味しますが、これはデータの発生源や活用する場所に近いところを指し、クラウドのようにインターネット上ではなく、この“エッジ”でデータを処理するのがエッジコンピューティングです。 IoTにより、多数のモノがインターネットにつながり、集まった大量のデータを処理することが必要でした。当時データを処理する場所として広がっていたクラウドでは、インターネットを経由し、その上で大量データを処理することから遅延の発生が課題となっていました。そこで、これらの課題を解決する手段としてエッジコンピューティングが出てきました。 さらに近年は人工知能(AI)の技術も急速に進化していますが、AI分野でもクラウド上で大量のデータを処理するスピードが課題となり、これをエッジにある機器やデバイスで処理してAIの判断スピードを高める「エッジAI」の考え方が登場し、2018年8月に当コラムで紹介※2しています。

※1:エッジコンピューティング モノのインターネットの課題を解決する
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20160901/
※2:エッジAI ~ありとあらゆるものにAIが内蔵される!?~
https://www.kobelcosys.co.jp/column/itwords/20180801/

そして、2020年になって日本でも次世代の移動通信システム5Gのサービスが開始されましたが、この5Gの登場がエッジコンピューティングの進化、エンパワードエッジを後押しすることになります。

エッジコンピューティング
図1:エッジコンピューティング

5Gとともに進化するエッジコンピューティング

5Gは大きく次の3つの特徴を持っています。
①超高速:現在の4Gの最大100倍の通信速度を実現
②超低遅延:移動通信の遅延を1ミリ秒以下に抑える
③多数同時接続:多数の端末を同時に接続できる
このうち、特に「超低遅延」の特徴を生かすと、例えば数ミリ秒単位のズレも許されない車の自動運転の制御や、医療における遠隔手術が実現できます。これまで通信の遅延で実現が難しかったものが、5Gによるエッジデバイスとの通信で実用的な低遅延のレベルを実現できるようになるわけです。

また、5Gは4Gに比べて電波の届く距離が短いことから、基地局を多く設置する必要があるという課題があるため、通信キャリアはこの基地局の役割を5G環境実現のためのエッジサーバとしても捉えています。そして通信キャリアの中には基地局の周辺にサーバを配置し、通信以外の処理を行わせることでさらに遅延を回避するモバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)を提供しようとしています。 国内での5Gの普及はまだこれからの段階ですが、5Gとエッジコンピューティングの特性を生かした事例が増えてくることが予想されます。

モバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)
図2:モバイル・エッジ・コンピューティング(MEC)

クラウドとエッジコンピューティング

エッジコンピューティングを説明するにあたり、IoT等による大量のデータを処理する場としてのクラウドの課題を解決する手段として、エッジコンピューティングが発展したと述べました。しかし、これはデータを蓄積し分析する場として、エッジコンピューティングがクラウドに取って代わるというような二者択一の話ではなく、2つを適材適所で使い分ける、あるいは組み合わせて活用するということを意味しています。
実際にAWS、マイクロソフトといったクラウドの主要ベンダーは、海外で大手通信キャリアと提携し、キャリアのエッジ拠点とクラウドサービスを連携する形態で、5Gの特性を生かした低遅延、高速処理のサービスを提供しています。クラウドベンダーも5Gの発展により、エッジコンピューティングとの共存をはかっていく戦略を取っているのです。

今後、デバイス周辺の技術では、前述のエッジAIで利用する専用AIチップや、高度な処理能力を持つプロセッサ、ストレージなどの機能がエッジのデバイスに組み込まれていきます。このようなデバイス周辺技術の発展と5G技術の進展がエンパワードエッジの形態で、様々なデータの有効活用によるデジタル化を実現することでしょう。

2020年9月

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