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これからは、コレ!旬なIT技術やこれから主流となりつつあるIT技術に関する情報をご紹介します。

2019年02月01日

デジタル・ツインの可能性

デジタル・ツインとは

デジタル・ツインという言葉はIT業界では数年前から使われており、聞いたことがある方も多いかもしれません。訳すと「デジタルの双子」となり、現実の物理空間の情報をIoT(モノのインターネット)などでサイバー空間に送って、その環境を仮想的に再現することを表しています。

これまで製造業などでは、製品や部品を製造する前や、製造後の改良時に仮想的に3次元データでテストする、すなわちシミュレーションを行う技術としてCAE(Computer Aided Engineering)が使われてきていました。デジタル・ツインは概念や考え方を表していますが、昨今のITの発展により、従来のCAEよりも幅広い領域や分野で、リアルタイムかつ現実世界に連動した高度なシミュレーションを行えるようになってきているのです。
2018年からさらに脚光を浴びており、今後のさらなる発展や応用が期待されている「デジタル・ツイン」の先行事例を交えて解説します。

デジタル・ツインのイメージ
図1:デジタル・ツインのイメージ

これまでのデジタル・ツイン

デジタル・ツインの概念を具現化した事例としてよく紹介されるのが、米国のゼネラル・エレクトリックス社(GE)で、当社の「ものづくりコラム」の以前の記事※1でも紹介しています。
デジタル・ツインはGEを初めとした製造業において、次のような点で必要であり、メリットがあるとされています。

※1:AIとものづくり④ 社会インフラの安全を支えるAI
https://www.kobelcosys.co.jp/column/monozukuri/20170601/

①生産のリードタイム短縮
②適正な生産量と在庫管理
③設計改善によるコストダウン
④問題発生時の原因究明と影響範囲の特定
⑤製品や設備の予防保守

このように製造業における①、②の設計開発部分だけでなく、③、④、⑤における出荷後の製品ライフサイクル全体の流れやプロセスをITで仮想的に再現し、シミュレーションできるのがデジタル・ツインなのです。

デジタル・ツインの今後

■今後のカギとなる技術

IT系の大手調査会社であるガートナー社では、毎年秋に翌年の戦略的テクノロジー・トレンド トップ10を発表していますが、そのトップ10の技術として、2018年、2019年連続で“デジタル・ツイン”を挙げています。2018年向けの予測では「この世界のほぼすべての側面をデジタルで表現したものが、現実世界でそれに対応するものと動的に結び付けられる。ここにAI(人工知能)ベースの機能が取り込まれることで、高度なシミュレーション、オペレーション、分析が可能になる」としていました。

現在でも、デジタル・ツインを実現する技術は進化しており、中でも通信技術の5Gの発展と、ガートナー社が述べていたAI技術の進歩が重要とみられています。5Gの技術が普及すれば、デジタル・ツインのベースとなっているIoTのデータ通信の大容量化だけでなく、ネットワーク遅延時間の短縮、同時接続数の増加をはかることができ、これまで以上にリアルタイムに現実の物理空間を仮想空間に再現できるようになります。AI技術の進歩がもたらすメリットは、データ分析の精度向上につながるため、特に上述の製造業におけるデジタル・ツインのメリットで挙げた「④問題発生時の原因究明と影響範囲の特定」と「⑤製品や設備の予防保守」の実現につながります。

■製造業以外への展開

デジタル・ツインは製造業だけでなく、他の分野にも展開していくことができます。 1つは実データを使って現実世界ではできないシミュレーションの結果をフィードバックすることです。例えば渋滞している道路の実データを用いて、信号機の切り替わるタイミングや、高速道路への進入規制をするなど条件を仮想環境で変更し、渋滞を解消する最適な方法を探ることができます。

また、既にシンガポールでは、国土全体を3Dモデルで再現する“Virtual Singapore”の取り組みが進められており、Googleマップの3Dマップをはるかに凌ぐレベルで都市を再現する実用的なモデルを目指しています。ある場所を指定すると、その場所に関連した、あらゆる実データ(街中や交通機関に設置されているセンサー、企業や公的機関の設計データ、スマホの位置情報などから収集されるデータ)が場所と紐づけられて表示されます。図2のように建物の屋上にソーラーパネルを置いた場合、どれくらいのエネルギーを生み出すのかシミュレーションするなど、実データに基づいて実行することが可能となり、上記の交通渋滞の例を含め、都市全体の計画に役立てることができるものとなっています。

このようにデジタル・ツインは製造業だけでなく、他の分野への応用が今後も進むとみられ、2020年の東京オリンピックや、2025年の大阪万博では様々な実現例が見られることでしょう。

ソーラーパネルの配置によるエネルギーシミュレーション
図2:ソーラーパネルの配置によるエネルギーシミュレーション
(出典:シンガポール国立研究財団 バーチャル・シンガポール)
https://www.nrf.gov.sg/programmes/virtual-singapore

2019年2月

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