古野電気株式会社様

古野電気株式会社様

工場システム向けセキュリティ規程・手順書を整備、現場が納得して使える工場セキュリティの拠り所を実現

導入前の問題

  • 情報セキュリティだけでは対応できない工場特有のセキュリティ課題が顕在化
  • 工場システム向けセキュリティ規程・手順書を整備するための知見や経験が不足
  • 将来的に社内で工場セキュリティのPDCAを回していきたい
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導入後の効果

  • IEC 62443に準拠しつつ、現場担当者が納得して運用できる工場システム向けセキュリティ規程・手順書を整備できた
  • 工場セキュリティ推進の「柱」となる共通の拠り所を確立
  • セキュリティ対策の実装やPDCAサイクルを実践するための下地ができた
舶用電子機器の製造・販売を中心に、グローバル規模で事業を展開する古野電気株式会社(以下、古野電気)。同社の三木工場(兵庫県三木市)では、工場をサイバー攻撃から守るセキュリティ対策が課題となっていました。そこで同社は、工場システム向けのセキュリティ規程・手順書の整備に着手し、パートナーとして製造業における実績が豊富なコベルコシステムを採用しました。コベルコシステムの支援を受けた同社は、国際標準規格のIEC 62443に準拠した規程および手順書を作成し、2026年6月より正式運用を開始。これにより、工場セキュリティの「拠り所」となる基盤が確立され、具体的な対策の実装やPDCAサイクルの実践が可能になりました。

導入のきっかけ

工場システムのセキュリティ対策を強化すべく、規程や手順書の整備に着手

1938年に前身である「古野電気商会」を創業し、1948年には世界で初めて魚群探知機の実用化に成功するなど、独自の超音波技術と電子技術をもとに、舶用電子機器分野においてさまざまな製品を世に送り出してきた古野電気。現在、同社は世界100カ国以上に販売拠点を展開しており、商船向けレーダーで世界シェア約43%(2023年)、漁業用電子機器で49%(2019年)を占めるなど、グローバルニッチ市場においてトップ企業の地位を確立しています。

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舶用機器事業部 三木工場
生産技術部 工場技術課
課長
今廣 哲資 氏

1979年に操業を開始した三木工場は、漁撈機器や航海電子機器をはじめとした舶用機器生産の主力工場として、同社が取り扱うほぼすべての製品の製造を担っています。さらに、マザー工場として海外工場の生産を管理するとともに、協力会社のハブ機能も果たしています。

同社が工場システム向けのセキュリティ規程・手順書の整備に取り組んだきっかけは、先行して活動を進めていた製品サイバーセキュリティ担当からの要請でした。海外での売上比率が60%を超える同社では、舶用機器事業部で取り扱う製品について、欧州におけるセキュリティ関連の法規制対応が求められます。その対策の過程で、製品に組み込まれるソフトウェアの保護に関する懸念点が指摘されました。

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舶用機器事業部 三木工場
工場管理部
部長
石田 哲也 氏

ソフトウェアは生産工程において製品に書き込まれ、製品検査を経て出荷されます。その安全性を確保するため、新たに工場でのセキュリティ対策が求められることになったのですが、組み込み手順などはルール化されていたものの、セキュリティ観点からのルールは意識されていなかったのです。生産技術部 工場技術課 課長の今廣哲資氏は「こうした理由から工場全体のセキュリティを見直す必要が生じ、工場システム向けのセキュリティ規程と手順書をゼロから整備することにしました。IT部門からは、すでに整備済みの情報セキュリティ規程を用いてネットワーク境界までは管理できたとしても、現場の運用は工場側の責務であると指摘され、工場独自のセキュリティ方針を明確化することにしました」と振り返ります。

また別の側面では、同社がスマートファクトリー化を積極的に推進していることから、工場内で外部ネットワークに接続するシステムが増加しており、設備やネットワークをサイバー攻撃から守る対策の必要性が高まっていました。この点について工場管理部 部長の石田哲也氏は「当社の工場内では、生産設備にPLC(機器制御装置)を取り付け、センシング情報をSCADA(監視制御システム)で監視・管理し、設備保全に活用しています。また、プリント基板の情報を取得して製造機器を制御したり、状態監視として生産設備の稼働状況をネットワークカメラで監視したりしています。このようにネットワーク化が進む現状を踏まえると、工場セキュリティを一刻も早く強化する必要があると考えました」と説明します。

導入の経緯

製造業に対する深い理解、現場に即した柔軟な対応力などを評価し、コベルコシステムをパートナーに選定

三木工場が工場セキュリティの強化を進めるにあたり、国際基準であるIEC 62443に準拠したセキュリティ規程・手順書の整備を検討しましたが、作成に必要な知見や経験が十分ではありませんでした。そこで、同社は外部からの支援が必要と判断し、複数のベンダーを比較・検討した中から、コベルコシステムに支援を依頼しました。選定の決め手となったのは、製造業に対する深い理解や現場の実態に即した柔軟な対応力、KOBELCOグループにおける工場セキュリティの支援実績でした。

「本プロジェクトに先んじて実施したアセスメントで、コベルコシステムには工場ネットワークの調査とネットワーク図の作成を担当いただきました。これに加え、当社におけるSAPシステムの導入・運用実績、迅速な対応力も評価しました」(石田氏)

さらに、問い合わせへのレスポンスの速さと的確さも、同社がコベルコシステムを採用した理由です。

「私にとってセキュリティのプロジェクトは初めての経験で、何から手を付けていいかわからない状況でした。形が見える設備やシステムと異なり、完成形のイメージできない規程類や手順書の作成に対する不安は少なくなかったのですが、コベルコシステムは単に質問へ答えるだけでなく、その先にある課題や検討事項まで見据えて提案を行ってくれました。また、レスポンスも非常に早く、経験に裏打ちされたリアリティがありました。こうした点からも、当社に寄り添いながら一緒に方向性を考えてくれる存在だと感じました」(今廣氏)

IEC 62443に準拠しつつ、現場担当者が納得して使える形で規程を作成

今回のプロジェクトチームは、工場の担当者に情報セキュリティと製品セキュリティの担当者を加えた7名体制を基本とし、そこにコベルコシステムの担当者が加わる形で進めていきました。チームは週1回・2時間の定例会(対面/Web会議)を半年にわたって実施。あわせてコベルコシステムの担当者は工場の現場を実際に視察し、実態を把握した上で規程の内容に反映していきました。

「規程整備における当社独自の工夫としては、工場設備・稼働管理のみならず、工程内を流れる製品そのものを保護対象に含めた点にあります」(今廣氏)

規程の整備はIEC 62443に準拠しつつ、現場の製造担当者が納得して使えるように、文面や体裁にも細心の注意を払ったといいます。

「情報セキュリティや製品セキュリティの規程群との矛盾や意味のブレが生じないよう整合性を意識しながら、初めて読む人でも迷わず使いこなせる規程を目指して作成しました」(石田氏)

プロジェクトは2025年6月からスタートし、翌年1月にセキュリティ規程を発行。5月末までに手順書も整備し、6月1日より正式に運用を開始しています。

今回のプロジェクトの大きな特徴は、生産技術部が主体となって推進した点にあります。設備やシステムを設計・運用する立場として、「現場で本当に実現できるか」「運用し続けられるか」を常に意識しながら議論を進めました。

「現場とかけ離れたルールを作ってしまうと、運用段階で形骸化してしまいます。そのため、IEC 62443の要求事項をそのまま取り入れるのではなく、現場で実行可能なレベルに落とし込むことを強く意識しました。セキュリティの厳格さと現実的な運用のバランスを双方で議論しながら形にできたことが、今回の規程整備の大きなポイントだったと思います」(石田氏)

IEC 62443の要求事項に紐づけた「利用シーン対応表」を作成し、現場における理解を促進

対策基準の作成にあたり三木工場では、IEC 62443の各要求事項が工場内のどのシーンで適用されるかを整理した「利用シーン対応表」を作成し、紐付けを行いました。

「コベルコシステムから利用シーン対応表の作成を提案された際には、『なるほど』と思わず膝を打ちました。IEC 62443の要求事項を工場内の具体的な業務や運用シーンに結び付けて整理したことで、頭の整理が一気に進みました。どのシーンでどの要求事項が必要なのかが明確になり、現場の理解促進だけでなく、手順書作成の効率も大幅に向上しました。これは非常に革新的な取り組みだったと思います」(今廣氏)

手順書の作成においては、規程に記載した要求事項に基づき、外部メンテナンス業者の扱いや記憶媒体の管理、製品マスタープログラムの実装フローなどを具体的な手順に落とし込んでいきました。また、正式運用に先立ち、2026年3月に運用の受け皿となる工場管理部を発足させ、運用直前の5月末には各職場のセキュリティ管理者・担当者を対象とした説明会を開催しました。

「説明会では大きな異論もなく、スムーズに受け入れられました。準備段階からの現場との情報共有、現場をよく知る生産技術部のリード、そして現場が自主的かつ主体的に納得できる文書を作成したことなどが功を奏したと思います」(今廣氏)

導入の効果

工場セキュリティの「拠り所」となる基盤が確立

今回のプロジェクトにおける最大の成果は、工場セキュリティの「拠り所」となる基盤が整備されたことです。三木工場の工場長からも「工場セキュリティの『柱』を示すことができた」と高く評価されているといいます。

「設備やシステムを利用する担当者が、迷ったときに立ち返ることのできる共通の拠り所を作ることができました。何を守るべきか、なぜ必要なのかを説明できるようになったことは非常に大きな成果です」(今廣氏)

「現場の実態を理解している生産技術部が中心となり、リスク回避のために現場の自由度を制限するのではなく、守るべきルールを現場が納得できる形で整備できたことが大きいです。これが説明会の際に現場から反発が出なかったことにもつながっているのではないでしょうか。他社に先駆けてこうした取り組みを実現できたことは三木工場の価値向上につながると感じています」(石田氏)

また、今回のプロジェクトによりチーム内にノウハウが蓄積され、今後の運用を通して自社で継続的に改善・定着化できる自信が付いたことも成果といえるでしょう。

今後の展望

各種対策の実装を行いながら、規程・手順書の追加整備やPDCAサイクルの実践を進める

今回の工場セキュリティ規程・手順書の整備は、三木工場にとってあくまで出発点に過ぎません。今後はPDCAサイクルの実践による継続的な改善・定着化といった運用を続けていく必要があります。

「2027年度にはPDCAサイクルを1~2サイクル回し、継続的に改善していく仕組みを定着したいと考えています。そして、2030年ごろには、セキュリティが工場の品質管理と同じように当たり前のものとして根付くことを目指しています」(今廣氏)

プロジェクトを支援したコベルコシステムについては、製造現場の領域まで深く踏み込める数少ないベンダーとして、現場の実態に即した規程の整備や、IEC 62443の内容をわかりやすく整理し、セキュリティの専門知識がなくとも理解できる規程の構築を実現した点について高く評価。今後の運用支援にも大きな期待を寄せています。

「コベルコシステムの担当者には、要求事項の解釈から規定への落とし込み、現場で本当に運用できるのかという検討まで、とことん議論に付き合っていただき、心から感謝しています。今後も私たちが納得感を持って前進できるよう、手厚いサポートを期待しています」(今廣氏)

「目指しているのは、自社の規模に関わらず、大手グローバル企業が持つような高い管理レベルを実現することです。その実現に向けて、コベルコシステムには将来像を見据えた提案をいただきました。今後もセキュリティにとどまらず、工場全体を支えるシステムから工場発のビジネスのグローバル戦略まで、幅広い領域で相談できるパートナーとして、長くお付き合いをいただきたいと思います」(石田氏)

img_20260901_03.jpg 左からコベルコシステム 森本(営業)、安達(技術)、古野電気 今廣氏、石田氏、コベルコシステム 前田(技術)、司馬田(技術)

※この記事は2026年6月時点の内容です。

導入された企業様

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古野電気株式会社

設立:1951年5月23日
所在地:兵庫県西宮市芦原町9-52
URL:https://www.furuno.co.jp/
資本金:75億3,400万円
売上高:連結1,406億1,600万円(2026年2月期)
従業員数:3,411名(単独 1,954名)

<事業内容>
舶用事業、産業用事業、無線LAN・ハンディターミナル事業、その他事業

〈会社概要〉
1938年に前身である「古野電気商会」を創業。1948年には世界で初めて「魚群探知機」の実用化に成功し、製造・販売を開始した。現在は、漁船をはじめ、大型商船や官公庁船、プレジャーボートなど、広範囲にわたる顧客に向けて舶用電子機器を提供しているほか、舶用事業で培った技術をもとに、ヘルスケアや通信・GNSSソリューション、防災、監視ソリューションなどの産業用電子機器の製造・販売を主な事業として展開。2030年までに目指す姿を示した経営ビジョン「FURUNO GLOBAL VISION “NAVI NEXT 2030”」では、「安全安心・快適、人と環境に優しい社会・航海の実現」を掲げており、人々が安全・安心で快適な暮らしを実現するための機器・サービスの提供を目指している。

導入したソリューション&サービス