株式会社神戸製鋼所様

株式会社神戸製鋼所様

全社横断の「生成AI CoE」立ち上げによりAI活用を加速
圧倒的な生産性向上を実現する推進力を獲得

導入前の問題

  • AI活用を全社横断で進めるための体制が未整備だった
  • 開発委託ではタイムラグが発生するため、スピード感に欠けていた
  • 開発を外部ベンダーに丸投げでは社内にノウハウが蓄積されず、技術がブラックボックス化するリスクがあった
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導入後の効果

  • アジャイル開発の採用により、PoC~改善のサイクルが短縮され、開発スピードが大幅に向上
  • 現場を巻き込んだ開発により、生成AIの活用が加速し、業務適用範囲が拡大
  • コベルコシステムとの「ワンチーム」体制により、社内にAI活用の知見が継続的に蓄積
  • 2025年時点で、生成AIを迅速に企画・検証・展開できる全社横断の推進体制が確立
素材・機械・電力などのさまざまな事業で、人々の暮らしの安全・安心を支え、社会課題の解決に貢献する株式会社神戸製鋼所(以下、神戸製鋼 )。同社は、2023年より生成AIの活用に着手し、2025年には全社横断の「生成AI CoE(Center of Excellence)」体制を構築。その基盤をもとに、2026年からは「AIを活用した圧倒的な生産性向上」を全社方針として掲げ、取り組みをさらに加速させています。この活動のパートナーとして選ばれたのが、長年にわたって同社のITを支えてきたコベルコシステムです。両社は「ワンチーム」の体制のもと、アジャイル開発の採用により開発スピードが大きく向上。RAG(検索拡張生成)技術等を駆使することで、現場の課題解決に貢献しています。

導入のきっかけ

生成AIのさらなる活用に向けて、外部ベンダーに依存した開発からの脱却を目指す

日本を代表する鉄鋼メーカーで、2025年に創業120周年を迎えた神戸製鋼は、素材、機械、電力という3つの事業を柱に、グローバル規模でビジネスを展開しています。

img_20260401_01.jpgIT企画部
DX戦略プロジェクトグループ
課長
佐藤 翼 氏

その神戸製鋼を中核とするKOBELCOグループでは、2024年度から2026年度までの中期経営計画において、AX、BX、CX²、DX、EX、FX、GXという7つの「X」から成る変革「KOBELCO-X」を掲げて、魅力ある企業への変革と事業戦略の実現を目指しています。この7つのXでは、「稼ぐ力の強化と成長追求(AX)」と「カーボンニュートラルへの挑戦(GX)」を最上段に設定。両者を実現するための変革をBX(業務変革)、CX²(お客様対応変革)、EX(人材戦略・従業員体験向上)、FX(ものづくり変革・工場変革)の4つとし、これらを実現・加速・高度化する手段にDXを位置づけています。そして、グループ全体のDX推進活動の一環として、生成AIの活用に注力しています。 同社における生成AIの活用は、2023年8月に遡ります。セキュリティを担保した汎用アプリの導入からスタートし、各業務へ特化したアプリケーション(RAGを活用したアプリ等)の開発を進めていったのですが、その途中でさまざまな課題が浮上してきたといいます。IT企画部 DX戦略プロジェクトグループ 課長の佐藤翼氏は「当初はアプリ開発を他ベンダーに委託していたのですが、スピード感とノウハウの蓄積という面で課題がありました」と振り返ります。

一般に開発を委託する際には外部委託の手続き上、意思決定〜着手までに時間を要する側面があるため、必然的にタイムラグが発生し、成果が見えるまで時間を要します。

「生成AIの技術の進化は日進月歩であり、来週には新しいモデルが出るかもしれません。こうした環境では、検討から意思決定、着手までに時間がかかる進め方だと、新技術を取り込むタイミングを逃し、結果として大きな遅れにつながりかねません。また、開発を外部へ丸投げしていては、いつまでたっても社内に技術や知見(ノウハウ)が蓄積されないという懸念もありました。将来的に生成AIが業務の根幹を担うようになれば、その技術がブラックボックス化していることは当社にとってリスクとなります」(佐藤氏)

そこで同社は、スピードと知見蓄積を両立する全社横断の推進体制として「生成AI CoE」を発足し、企画・検証・改善のサイクルを短く回しながら、得られた学びを全社へ展開できる仕組みづくりを進めました。そして2026年度の予算編成方針では「AIを活用した圧倒的な生産性向上」を全社方針として明確化し、取り組みをさらに加速させています。

導入の経緯

業務内容への理解と“ワンチーム”の体制を評価し、コベルコシステムをパートナーに選定

神戸製鋼が生成AI CoEを発足させるのに合わせ、パートナーとして白羽の矢が立ったのがコベルコシステムでした。当時、コベルコシステムは生成AIに関しては、大規模な実績はまだない状況でした。しかし、2024年11月より3件の生成AIプロジェクトに参画したことで、その姿勢と成果が高い評価を受け、正式にCoEメンバーとして参画する流れにつながりました。選定の理由について佐藤氏は「製造業に対する理解」と「信頼関係」を挙げ、製造業の現場は複雑で、独自の文化や習慣、特殊な専門用語など、一から理解するのは難しいと語ります。

「コベルコシステムには、表面的な要件でなく“ニーズの裏側”までくみ取る力があります。生成AIでは、何を作るかよりも”どこに課題があるか”を一緒に考える姿勢が重要ですが、コベルコシステムはそこにしっかり踏み込んでくれました。また生成AIでの大きな実績がない中、積極的に学び、キャッチアップし、短期間で戦力化した点も大きかったです」

また、今回のCoE活動においては、両社が密に連携しながら進められた点も大きな特徴でした。「コベルコシステムは 、同じ方向を向いて議論し、最適な進め方を提案してもらえる心強いパートナーです」と佐藤氏は語ります。課題整理や検証方針の議論などを適切に役割分担しながら推進。定例のコミュニケーションを重ねることで、スピード感のある意思決定と改善サイクルを実現しました。

「『もっとこうした方が良いのでは?』『この技術を使ったほうが効率的』と主体的に提案してくれる姿勢を見せてくれたことも、パートナーに選定してよかったと感じています」(佐藤氏)

開発のポイントは「アジャイル開発」と「RAGの高度活用」

生成AI CoEでは、神戸製鋼が従来とってきた開発手法を捨て、生成AIの特性に合わせた新しいアプローチを採用したのが特徴です。そのポイントとなったのが「アジャイル開発」と「RAG(Retrieval-Augmented Generation)の高度活用」でした。

生成AIの開発においては、まず何ができるのかが不透明で、回答精度も実践しないと分からないため、最初から100点満点の要件を決めるのは困難です。そこでCoEチームは、短期間での開発を目指す「アジャイル開発」を採用。2週間という短いスパンで開発とレビューを繰り返すことにしました。

「当初は、2週間で何ができるのか、未完成のものをユーザーに見せるのか、といった懸念もありましたが、プロトタイプを現場に持ち込み、ここが使いにくい、こんな回答が欲しい等のフィードバックをその場で受けて、次回のスプリント(開発期間)で修正するというサイクルを回すことで、開発のスピードを劇的に向上させることができました」(佐藤氏)

また、早くから実際に動くものを見せて、現場の期待値をコントロールしつつ、実用的なものへと精度を高めていくことで、ユーザー側に「自分たちも開発に参加している」という当事者意識が芽生え、より建設的な意見が出てくるようになったともいいます。

技術面では、社内にあるデータをAIに参照させる「RAG」の構築に苦労があったといいます。「製造業の現場データをAIが理解できる形にするRAG構築は、技術的に高度な取り組みでした。コベルコシステムは、長年の製造業で培った知見を活かして、これらの課題を一つ一つ解決していきました」と佐藤氏は振り返ります。同社の社内には、過去のトラブル報告書や技術マニュアルなど、膨大なデータ=資産が眠っています。しかし、その多くは表記のゆれがあったり、スキャンデータや独自フォーマットのExcelなどの非構造化データだったりと、生成AIにとっては活用が困難なものでした。そこでCoEチームは、生成AIが回答しやすいデータ構造を分析し、データのクレンジングや構造化を進める等、地道な作業を徹底して進めていきました。加えて、ユーザーによる曖昧な質問を、生成AIが理解しやすい指示に変換する「プロンプトチューニング」にも注力したことで、当初はちぐはぐだった生成AIの回答精度は日を追うごとに向上し、実務に耐えうるレベルへと進化していきました。

導入の効果

生成AIの開発スピードが大きく向上、現場のユーザーにも着実に浸透

生成AI CoEの活動は、既にいくつかの効果を生み出しています。中でも大きいのが、開発スピードの向上です。

「アジャイル開発を採用したことで、アイデアが出てから検証(PoC)までの期間が大幅に短縮されました。以前なら数ヶ月掛かっていた工程も、今では最短数日でプロトタイプの完成までもっていけます。また、社内にノウハウが蓄積されたことで、似たような案件なら『過去のあのコードを流用できそう』と即座に判断できるようになり、効率化とコスト削減が実現しています」(佐藤氏)

具体的な事例では、トラブル対応支援システムがあります。過去の膨大な数の事例や対応マニュアルがRAGで検索可能となり、予兆の段階から適切な対処が分かるようになりました。これにより、トラブルの防止や早期解決が可能となり、設備の稼働率向上や保安上のリスク低減に寄与しています。

さらに、社員の意識変革も進んでいるといいます。

「開発を通じてユーザーと対話を重ねたことで、自分たちの意見が反映される、生成AIは“使える”ツールであるといった実感が現場に広がっています。その過程で、これまで意識されていなかった“データを統一する”という考え方も浸透し、ユーザー側にもデータ品質の重要性を理解してもらえるようになりました。こうした変化がデータ活用への意識向上へつながり、『AIを使ってどう業務を変えるか』と自ら考える風土も生まれています。」(佐藤氏)

今後の展望

「AIエージェント」開発で、AIによる業務プロセス全体の自動化を目指す

2025年時点で、生成AIを迅速に企画・検証・展開できる全社横断の推進体制が確立した神戸製鋼。同社には、すでに各事業部から多数のAI活用テーマが寄せられており、これらに対しCoEが一貫した方針でスピーディに対応できるようになっています。

さらに同社は次のステップとして「AIエージェント」への本格的な取り組みを進めています。CoEチームは2026年から、この領域を重点施策として位置づけ推進予定です。

「現状の人がAIに質問し答えを得る形式から、AIが自律的に判断しタスクを実行する世界を目指しています。例えば、各種申請の受付から申請に基づいたシステム処理まで、業務のプロセス全体を生成AIが代行することで社員の負担を減らし、より付加価値の高い業務に集中できる環境を目指していきます」(佐藤氏)

最後に佐藤氏は、今回のプロジェクトにおけるコベルコシステムの働きについて「技術力の高さはもちろんですが、時に我々の想定を超えた提案をしてくれる、その積極姿勢を高く評価しています。まさに『ワンチーム』と呼ぶにふさわしいパートナーです」と述べ、さらに「当社以外のお客様にも積極的に取り組んでもらいたいと考えています。他社との交流の起点となり、知見を共有することで、業界全体が成長していくための橋渡し役となってくれることを願っています」と期待を語ってくれました。

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左からコベルコシステム 小寺(担当PM)、神戸製鋼 佐藤氏、コベルコシステム 森本(担当営業)

※この記事は2026年2月時点の内容です。

導入された企業様

神戸製鋼所 社ロゴ

株式会社神戸製鋼所

創業:1905年9月1日
設立:1911年6月28日
所在地:兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通2-2-4
URL:https://www.kobelco.co.jp/
資本金:2,509億円(2025年3月31日現在)
売上:2兆5,500億円(連結:2024年度)
従業員数:連結 39,294名/単体 11,895名(2025年3月31日現在)

〈事業内容〉
鉄鋼・非鉄金属及びその合金の製造販売、鋳鉄品・鋳鍛鋼品及び非鉄合金の鋳鍛造品の製造販売、電気供給事業、産業機械器具・輸送用機械器具・電気機械器具及びその他の機械器具の製造販売、各種プラントのエンジニアリングおよび建設工事の請負等

〈会社概要〉
1905年の創立以来、社会の発展のため高品質な製品を市場に供給し続けてきた鉄鋼メーカー。現在は、鉄鋼アルミ・素形材・溶接の素材系事業、機械・エンジニアリング・建設機械の機械系事業、電力事業の3つを主軸に、多様な事業を営む世界でも数少ない企業として確固たる地位を築き上げている。同社を中心としたKOBELCOグループでは、魅力ある企業への変革をテーマとした2024年度から2026年度までの中期経営計画において、稼ぐ力の強化と成長追求、カーボンニュートラルへの挑戦、サステナビリティ経営の強化を最重要課題としている。


導入したソリューション&サービス

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