トヨタ紡織株式会社様

トヨタ紡織株式会社様

SAP S/4HANAの基盤をAWSへ移行。インフラ利用のコスト維持やサポートの充実を実現

導入前の問題

  • SAP S/4HANAのインフラとして利用していたクラウドサービスが大幅値上げ
  • 運用保守含む、クラウドサービス自体も提供終了へ
  • インフラとアプリで窓口が異なっていたため、問い合わせ対応が煩雑
→

導入後の効果

  • インフラにまつわるコストアップを抑制、今後の削減にも期待
  • 継続的に利用可能で、グループ全体としてもメリットのあるAWSへの移行を実現
  • 窓口がコベルコシステムに一元化、問い合わせへの対応が迅速かつ丁寧に
自動車用のシートや内装品、フィルターなどを製造するトヨタ紡織株式会社(以下、トヨタ紡織)。脱レガシーに向けてSAP S/4HANAの導入プロジェクトを進めている同社は、そのインフラとして利用していたクラウドサービスの大幅値上げを受けてAmazon Web Services(AWS)への移行を決断。移行支援と運用保守の新たなパートナーに、コベルコシステムを指名しました。移行プロジェクトは2023年10月から2024年5月にかけて大きなトラブルもなく完了。これにより、インフラにまつわるコストアップを抑制するとともに、問い合わせ窓口が一元化されたことで運用負荷の軽減も実現しています。

導入のきっかけ

クラウドサービスの値上げと運用・保守サービスの終了で移行に追い込まれる

榊原様
ビジネス改革推進部
ERP基盤推進室
室長
榊原 俊男 氏
大野様
ビジネス改革推進部
ERP基盤推進室 ERP開発G
グループ長
大野 隆信 氏

クルマの乗り心地を大きく左右するシートや内装品などの製造・販売を手がけるトヨタ紡織。現在、同社では来るべき自動運転の本格化に向けて、より快適な移動空間の開発を目指しています。また、航空機や鉄道車両、エンターテインメント施設など、自動車以外の空間にも挑戦分野を広げています。

同社の経営を支える基幹システムは、長らくメインフレームを中心に運用されてきましたが、2016年にERPパッケージのグローバルスタンダードである「SAP S/4HANA」の採用を決定しました。ビジネス改革推進部 ERP基盤推進室 室長の榊原俊男氏は「現在は日本、アジア、中国、EUとリージョンごとに導入が進んでいます」と語ります。

ERP基盤推進室は国内本社とグループ会社のERP基盤を担当していますが、上記の決定を受けて、日本の商習慣を盛りこんだテンプレートの構築に着手。最初の導入先に売上規模や事業内容などを考慮してグループ会社のトヨタ紡織九州(以下、TB九州)を選定し、2018年から2020年10月にかけて、会計から販売、購買在庫、生産管理まで一通りのモジュールを導入しました。その後、2拠点目となる本社への導入プロジェクトが2022年よりスタート。2025年4月の本稼働に向けて作業を進めています。

そのような中、同社がSAP S/4HANAのインフラとして導入当初から利用していたクラウドサービスについて、2024年4月より大幅な値上げを行うという通告を運営会社から受けたのです。加えて2024年6月には、保守運用を含むクラウドサービス自体も提供終了するという案内が届きました。ビジネス改革推進部 ERP基盤推進室 ERP開発G グループ長の大野隆信氏は「突然の値上げとサービスの終了により、新しい移転先を探さざるを得ない状況に追い込まれたというのが正直なところです。また、既存のサービスはパッケージ化されていたため、利用していないメニューも含まれていました。さらにSAPの運用保守をお願いしているコベルコシステムと、インフラの運用保守をお願いしている別のベンダーとで窓口が分かれていたため、問い合わせが煩雑という問題もありました。そこで、この機会にSAP S/4HANAへの移行パートナーと新たな運用保守ベンダーをまとめて検討することにしたのです」と当時を振り返ります。


導入の経緯

SAP S/4HANAの導入など、これまでの実績を評価しコベルコシステムをパートナーに指名

SAP S/4HANAのインフラについて検討を重ねたトヨタ紡織は、新たなクラウドサービスにAWSを採用。移行支援と運用保守をまとめて担当するパートナーにコベルコシステムを指名しました。

「クラウドサービスについては、SAPのPaaS型サービスであるSAP HANA Enterprise Cloudも含め、さまざまなサービスを検討しましたが、トヨタグループ全体としてのコストメリットやサービスの充実性などを評価し、AWSに決めました。また、パートナーにコベルコシステムを指名した理由は、TB九州へのSAP S/4HANAの導入と稼働後のアプリ運用支援、現在進行中の本社へのSAP S/4HANAの導入と周辺システムの脱レガシー化などの面ですでに支援をいただいており、これらの実績を評価しました。また、コベルコシステムにインフラの運用を任せることで、アプリなどとの運用が一元化できることも期待しました」(大野氏)

移行のポイントはスペックの見積とスケジュールの短縮

移行プロジェクトは2023年10月よりスタート。稼働中のTB九州、構築中の本社の両環境を移行するということで、まずはクラウド基盤のスペックの見積がポイントとなりました。

「本社の基幹システムの実績件数などをすべて洗い出した上で、サイジングツールで机上計算しながらスペックを決めていきました。ただしこの際、机上計算だけでは欲しい精度が得られないことから、コベルコシステムのBASIS担当と何度もやり取りを重ねています」(大野氏)

もうひとつのポイントとなったのがスケジュールの短縮です。今回の移行は、クラウドサービスの提供が終了する2024年6月までに必ず完了させる必要がありました。しかし、プロジェクトの規模に鑑みると通常は1年を要するため、少なくとも4ヶ月の期間短縮に取り組む必要がありました。

さらに同期間には、ホストコンピュータからの脱レガシーのプロジェクトも同時に動いていました。

「メインフレーム上のシステムをSAP S/4HANAや周辺システムに移行して連携を図るという大がかりなプロジェクトを、限られた人的リソースの中で進める必要がありました。さらに本社においてはSAP S/4HANAの導入も進行中で、同時に動く3つのプロジェクトをマネジメントするのは大変でした」(榊原氏)

そこで、トヨタ紡織とコベルコシステムは両社タスクを洗い出し、並行する3つのプロジェクトの中で開発・検証のタイミングを緻密に組んだことで、期間を7ヶ月間に短縮。2024年5月の大型連休中に移行完了を実現し、稼働中のTB九州への影響も最小限に抑えることができました。本番切替は、リハーサルを合計2回実施して移行計画や運用手順書などを作成したうえで、ダウンタイムを48時間以内に収めることができました。

「想定以上にデータ量が多かったことから、移行には苦労しました。コベルコシステムのBASIS担当にも協力を仰ぎ、ネットワークの回線を太くするなどの工夫で何とか時間内で収めることができました。切り替え自体に1つのトラブルもなく順調に進んだことには驚いています」(大野氏)

導入の効果

インフラ、BASIS、アプリのサポート窓口が一元化されたことで運用負荷が軽減

トヨタ紡織はSAP S/4HANAをAWSに移行したことで、クラウド利用料のコストアップを抑止することができました。今後はAWSの定額割引サービス(リザーブドインスタンスなど)を利用することで、さらなるコストの低減が見込めると期待しています。

また、コベルコシステムの運用保守では、必要なサービスメニューを選択できるため、内容を適正化できました。さらに、インフラ、BASIS、アプリのサポート窓口が一元化されたことで運用負荷も軽減されました。

「これまでインフラ、BASIS、アプリと窓口が分かれていたため、何かあったときはそれぞれに連絡する必要があり手間になっていました。今回、サポート窓口がコベルコシステムに一元化されたことで、そうした面倒がなくなりました。また、コベルコシステムの各担当者間の情報連携がとれているため、問い合わせに対するレスポンスが迅速かつ丁寧で非常に満足しています」(大野氏)

さらに組織・体制面では、プロジェクトを通して新人エンジニアの育成ができたことが大きいと榊原氏は語ります。

「今回のプロジェクトでは、入社2年目の社員にインフラチームのリーダーとして参加してもらいました。難易度の高いプロジェクトでしたが、この経験を通じて技術を習得できたことは大きな成果で、今後のインフラ運用を担う人材としての活躍を期待しています」

今後の展望

グループ会社へのSAP S/4HANA導入を進めるとともにデータの活用を促進

今後についてトヨタ紡織では、本社に続き、残りのグループ会社にもSAP S/4HANAを導入していく計画です。また、SAP S/4HANAに蓄積されていくデータを活用するための基盤を整備し、経営層から業務担当者まで、それぞれが欲しい粒度で情報が見られるような仕組みを実現したいとしています。

パートナーであるコベルコシステムの支援については、プロジェクト管理の的確さや、気軽に相談できる親しみやすさを評価しており、今後はよりユーザー目線に立った提案に期待を寄せています。

「トヨタ紡織グループは、業務・規模さまざまな17社の会社を抱えています。そこでコベルコシステムには業務目線でグループ全体の標準化ができるような提案やサポートを期待しています」(榊原氏)

「技術力が高いコベルコシステムには、私たちをリードする立場からあるべき姿に向けてプロジェクトを牽引してもらえるとありがたく思います」(大野氏)

お客様とともに
左からコベルコシステム 田井(担当営業)、トヨタ紡織 大野氏、トヨタ紡織 榊原氏、コベルコシステム 大澤(担当営業)

※この記事は2024年8月時点の内容です。


導入された企業様

トヨタ紡織 社ロゴ

トヨタ紡織株式会社

創業:1918年
設立:1950年
所在地:愛知県刈谷市豊田町1-1
URL:https://www.toyota-boshoku.com/jp/
資本金:84億円
売上:連結 1兆9,536億円(2023年度)
従業員数:連結 56,373名(2023年度)

〈事業内容〉
シート事業、内外装事業、ユニット部品事業

〈会社概要〉
豊田佐吉により創業された豊田紡織をルーツとし、創業の精神である「世のため 人のため」を100年以上にわたって受け継ぐ。自動車用シートやドアトリムなどの内装品、エアフィルターなどのユニット部品を通じて、世界中に最高のモビリティー空間を提供。自動車に対するニーズが大きく変化する中、移動空間の新価値を主導する「インテリアスペースクリエイター」を目指している。


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