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2024年09月01日

製造業における生成AI活用のすすめ
~生成AIと非生成AIの組みわせ~

昨年登場以来一気にブームとなり、導入が急増した生成AIですが、早くも1年余りが経ちました。世の中の関心・期待は、今もなお大きいものがありますが、その後どのように使われ、どのような成果がでているのでしょう?
今回は製造業における生成AIの活用方法について考察します。

■生成AIが得意なことは大きく2つ
生成AIに関連する最近の記事やニュースを見ていると、サービス供給側の積極的な動きが目につきます。例えば、海外テック企業による生成AIへの大規模投資、そして生成AIによるデータセンターの電力消費量急増、サーバー需要増に伴う半導体産業の活況といった内容です。一方の生成AI利用側については、印象的な利用事例や華々しい成果に関するニュースはなかなか見当たりません。多数の企業がこぞって生成AIを社内導入し、生成AIがあたかもその分野の専門家のように受け答えする保有知識の幅広さ、そして誰でも日常語で簡単にやりとりできる使い易さを実感しました。情報の収集、要約、メール作成、翻訳等で生成AIが役立ち、業務効率化につながることは確認されましたが、それ以上の画期的な効果を示す利用事例は見かけません。
生成AIが得意とする能力は大きく2つあると考えられます。まず一つ目は、その名の通り、文章や画像、音声、更にプログラムなどの比類なき生成能力です。文章の生成といっても、論文や脚本、企画書やメール文、さらに俳句までジャンルは問いません。その出来栄えは十分使い物になるレベルです。もう一つの画期的な能力が、自然言語による対話能力です。曖昧な口語表現や脈絡を理解しながら、人間と自然なコミュニケーションができる能力をもっています。様々なテーマの対話の前提となる豊富な知識を、分野を問わず保有していることが分かります。この人間のような対話能力の実現は、これまでAIの研究が始まって以来の目標でした。多くの研究者が長年取り組んできた難題を、生成AIはいとも簡単に成し遂げたことになります。

■生成AIと非生成AIで異なる得意分野
これまでも機械学習やシミュレーションなどのAI技術が研究され、実用化されてきました。このような既存のAI技術も色々分類がありますが、ここでは大きく“非生成AI”と呼ぶことにします。非生成AIは予見・予測、意思決定、認識・検知といったことを得意としています。一方、昨年突如出現した生成AIは自然言語処理と生成の能力に優れ、非生成AIとは得意分野が異なります。従って、生成AIを活用するには、まずはその得意分野に合った用途とすることが基本となります。例えば、様々な言語間の翻訳や議事録作成などは、生成AIがお手の物となります。一方、需要予測や自動運転は非生成AIが適しています。

生成AIと非生成AIの異なる得意分野図表1:生成AIと非生成AIの異なる得意分野
(クリックして拡大できます)

■生成AIと非生成AIの組合わせで相乗効果

もう一つの生成AIの活用は、非生成AIと組合わせ、それぞれの得意とする能力を活かす方法です。製造業では、これまでも非生成AIを利用した様々なデジタル化の取組みが行われていますが、これに生成AIをうまく組合わせることで相乗効果が得られます。
具体例の1つとして、最近は工場内の自律ロボットが進化しています。自立ロボットに必要な自律システムは非生成AIが得意とするところですが、その自律能力を高めるためにはAI訓練用の実環境データが不可欠です。しかし、必要データの収集は難しく、これまで十分準備することができませんでした。ここで生成AIが訓練に適した3D合成データを大量に生成することで、自律ロボットの能力の大幅向上を実現しています。同じく、工場内の検査工程では、現実はめったに発生しない不良品のイメージデータを生成AIで生成することで、不良品自動検知の精度を大幅に高めています。

生成AIと非生成AIの組み合わせで相乗効果図表2:生成AIと非生成AIの組み合わせで相乗効果
(クリックして拡大できます)

2つ目の例は、色々な業種において最適製品設計を行うジェネレーティブ・デザインでの生成AI活用です。新たなジェネレーティブ・デザインでは、まず生成AIを使って、従来の設計手法では考えつかないような革新的なデザインアイデアを自動で生成します。次にパラメトリックデザインで部品のパラメータを設定し、それらを調整することで多様なデザインバリエーションを生成します。これにより、特定の性能要件に応じた最適なデザインが可能になります。最後に、新しいデザインのシミュレーションを行い、強度や安全性などの評価を自動で行い、デザインの品質を高めることができます。生成AIを使ったジェネレーティブ・デザインは、自動車シートや航空機パーツなどのデザイン性、強度、重量、コストを同時に向上させる革新的な製品設計の実績をあげています。

成AIによるジェネレーティブ・デザイン例図表3:生成AIによるジェネレーティブ・デザイン例
(クリックして拡大できます)

その他の例として、生成AIは製造現場の制御機器固有のプログラムを生成することができます。制御機器用のプログラム言語は扱えるエンジニアも限られています。プログラムを短時間で作成し、それに伴い製造ラインの変更や生産準備期間を大幅に短縮することができます。

■生成AI活用の遅れを取り戻そう
調査によると、日本企業の生成AI利用は、海外企業に比べてかなり遅れています。製造業においても、生成AIの高い能力は認めながらも、デジタル化の取組に活用し、具体的な成果を出す段階には至っていないようです。日本の製造業で生成AIを活用促進していくには、業務で求められる精度やセキュリティの確保、そして生成AI活用の前提となる製造現場のデータ整備を併せて進めていく必要があります。現時点の遅れは1年程度でまだまだ挽回可能です。日本の製造企業が生成AIと非生成AIをうまく組合わせ、本格的活用に取組むことをお奨めします。

2024年9月

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