SAP ERP 個別受注生産型製造業向けテンプレート: HI-KORT for ETO

SAP ERP 個別受注生産型製造業向けテンプレート: HI-KORT for ETO

受注設計生産に特化したSAP S/4HANAのテンプレートです。受注設計生産方式のビジネスプロセスを想定したパラメータ設定や、各種ドキュメントを提供。SAP S/4HANAのスムーズな導入と運用をサポートします。

概要

コベルコシステムのSAP テンプレート「HI-KORT」シリーズ

HI-KORTシリーズは製造業に強いコベルコシステムが、SAP社のERPパッケージをベースに、お客様の業種に合わせて開発した業務テンプレートです。

HI-KORTシリーズ一覧表

個別受注生産型製造業向けテンプレートの構成

注文ごとの個別仕様に基づいて手配・生産・購買等が並行作業で行われる「受注設計生産」においては、「リードタイム短縮」や「原価削減」が課題となります。その課題解決に向けて、SAP S/4HANA標準機能にはない、HI-KORT for ETOの独自機能(アドオン機能)を提供します。短期間でシステムを導入するために、パラメータ設定を事前に行い、各種ドキュメントも取り揃えております。

個別受注生産型製造業向けテンプレートの構成

特長

SAP S/4HANAを用いた受注設計生産のポイント

受注設計生産では、個別受注案件(機番、案件、オーダー、製番等)ごとに異なる仕様で設計、調達、生産を行います。そこでSAP S/4HANAでは、各個別受注案件を1プロジェクトとして定義し、案件の開始(引合)から完了(請求)までのプロセスを一気通貫で管理します。

個別受注案件のプロセス

個別受注案件のプロセス

定義した各プロジェクトのコストと進捗は、SAP S/4HANA プロジェクト管理(PS)モジュールを使用して管理することができます。
PSモジュールとは、オーダー、製番、案件、工事といったプロジェクト単位の原価、加えて日程(工程)を管理するモジュールです。PSモジュールの活用にあたっては、WBS(Work Breakdown Structure)要素、ネットワークと呼ばれるデータを登録する必要があります。

コストと進捗管理

WBS要素

プロジェクトにおける階層化された原価集計単位。多くの場合、部門やタスク等の階層で表現されます。
予実管理の対象となる原価(設計、調達、製造原価)のデータを登録すると、PSモジュール内の関連するWBS要素に集計されます。1つのWBS要素ごとに、収益、計画原価、予算、実績原価を管理することができます。

WBS要素の一例
WBS要素の一例
ネットワーク

日程管理(工程管理)を行うために、細分化された作業単位(活動)と、その実行順序を定義したものです。
プロジェクトの工程を概要設計から現地据付まで分解して活動として登録し、その実行順序もあわせて定義します。1つの活動ごとに、作業期間、能力負荷や原価の基礎となる時間(工数)を管理することができます。

ネットワークの一例
ネットワークの一例

HI-KORT for ETO の活躍場面

受注設計生産では、製品開発工程において複数の業務を同時進行させることで開発の効率化や期間短縮を図る手法をとります。設計段階から生産技術部門・製造部門などと共同で、同時に開発を進め、設計が完了したものから順にさみだれ式で生産を行います。また、引合・見積時から受注・生産・出荷までの各プロセスだけでなく、各部品レベルでも受注単位の原価を把握しなければ、コスト削減の打ち手がわかりません。


そこでHI-KORT for ETO では、SAP S/4HANA標準機能には含まれていないオリジナル機能として「手配業務コックピット」の画面を提供しています。手配業務コックピットでは生産全体の進捗を製品構成のイメージで効率的に確認することができます。進捗状況に応じて必要な処理の画面へ遷移することができ、効果的な手配業務を実現できます。
HI-KORT for ETO の活躍場面

主な機能

販売管理

見積作業効率化&精度向上

過去の類似案件、または雛型から製番を作成することで、見積作業の効率化と見積精度向上に貢献します。さらに、概算日程計画および概算原価計画の作業の効率化にも貢献します。

受注入力効率化

引合・見積伝票を参照して受注登録することで、二重入力の廃止、誤入力の削減など、受注入力を効率化します。また、受注登録時に与信限度額チェックを自動実行することが可能です。

日程計画作業を効率化

製番・生産計画から工程計画まで 一気通貫での日程計画が可能です。

予定原価管理の効率化

予定原価は、概算として原価明細単位に金額で直接入力したり、各工程の作業費や品目原価から積上げて算出したりすることが可能です。また、バージョン管理も可能なため、予定原価管理の効率化に貢献します。

生産管理

部品構成管理の効率化

標準部品構成をコピーし、製番別に同一機種の部品構成を変更することが可能です。出荷時の構成を保持しておくなど、部品構成管理を効率化に貢献します。

製番紐付手配に対応

製番紐付き手配に対応可能です。HI-KORTのオリジナル機能である「手配コックピット」画面により、製番紐付き手配情報を一元的・効率的に管理することが可能です。

MRPによる手配データ自動生成

設計変更などに柔軟に対応しながら、MRP実行によりいつ、何が必要かの手配の仮データが自動生成されるため、手配業務の効率化が可能です。

日程と原価の進捗管理

内製における手配を指図で管理することで、工程別の作業に対する日程と原価進捗を管理できます。

作業完了報告の効率化

製造指図に対する作業実績を一括登録することにより、作業完了報告を効率化することが可能です。

在庫購買管理

購買プロセスの標準化

購買対象に依存せず、標準化された購買プロセスによって作業を効率化します。

請求照合で会計伝票自動登録

入庫実績データをもとに仕入先からの請求書を照合すると、リアルタイムで買掛金の会計伝票が自動登録され、 モノの動きに従ったお金の情報が自動収集されます。

在庫情報のリアルタイム更新

倉庫担当者が登録した入庫実績により、リアルタイムで在庫情報が更新されるため、部門間での情報共有スピードが向上します。

その他

さみだれ式で出荷可能

現地で据付工事が必要な場合は、完成した構成品を得意先へ段階的に出荷することが可能です。

得意先検収完了まで売上をブロック

得意先の検収が完了するまで売上計上をブロックし、 統制のとれた業務プロセスを構築することが可能です。

複数の売上基準設定が可能

売上基準は、工事完成基準、工事進行基準の設定が可能です。

完成途中の予実把握が可能

製番での予算(原価計画)に対し、実績原価をオンラインでリアルタイムに把握でき、異常に対する打ち手を早期に打つことが可能です。

適用例

コベルコシステムのHI-KORT for ETO導入実績をいくつか紹介します。

タイムリーな経営情報の提供と、 デジタル時代に備えた基幹システムへの移行

A社(半導体製造装置・精密計測機器の製造販売、売上700億円、社員1,200人)は、販売・生産・経理にまたがる幅広い業務機能への対応と、関係会社展開も踏まえた継続的な維持運用の仕組みづくりを目指し、HI-KORT for ETOを導入しました。導入範囲は2つの工場のシステム(SD/PP/PS/MM/FI/CO)で、27ヶ月のグローバル基盤構築期間を経て2019年4月より稼動を開始しています。これにより以下のような効果を得ることができました。

販売から生産の業務単位の適正化

1つの注文書にいくつもの受注が紐づき、複雑化していた業務・システムを変革。「1注文書:1受注」の原則を実現可能にし、営業部門と生産部門との間の管理状況の歪みも解消しました。

原価計算業務を標準化

大量・複雑なExcelファイルによる属人化した作業を、SAP S/4HANAの原価計算方法・処理へ完全準拠。関連アドオンが極少となり、作業の効率・正確性の向上に加えて、後進に引き継ぎやすい工場経理業務標準化を促進しました。

単体決算処理の効率化

決算処理では、各システムからのバッチ連携待ちや、基幹システム外管理のデータによる収集・集計など非効率的な作業が多く含まれていました。HI-KORT for ETOの導入により、各領域データをシームレスかつリアルタイムに連携するとともに、基幹システムによる管理範囲を拡大することで、決算期間の2営業日短縮を実現しました。

主要マスタの管理一元化

販売・生産・原価・会計 の各システムに散在していた取引先、品目、部門などの主要マスタをSAP S/4HANAの該当マスタで完全一元化。整合性やプロセス効率が向上するとともに、各マスタの主管組織を定義し、明確な組織統制を実現しました。

収益を見える化、業務を最適化・標準化し、全社運用を支えるシステムへ

B社(工作機械製造・販売、売上600億円、社員2,000人)は、部門ごとに異なるシステムを有しており、業務運用が非効率になっていました。そこで3法人・1工場にわたるシステム(SD/CS/PP/PS/MM/FI/CO)に対してHI-KORT for ETOを導入。13ヶ月の構築期間を経て2020年2月より稼動を開始し、少量多品種製品の短納期化を実現する業務プロセスを確立しました。