東洋ガラス株式会社様
ガラスびんの製造工程にデータ分析基盤を構築、製造不良を防止する仕組みを実現
- 導入したソリューション
- IoTプラットフォームサービス
- キーワード
- IoT、MES、ERP、AWS、クラウド、BIツール、スマートファクトリー
導入前の問題
- 日によって製造する製品が異なるため、ガラスの流量や温度が変化し再現性が課題
- マシン調整やガラス温度の管理には職人の経験が必要なため、作業者ごとに技能差が生じる
導入後の効果
- ゴブ(ガラス玉)の落下状態を可視化するシステムを構築し、遅れを検知することで製品不良を防止
- 定量データに基づく意思決定を可能にするものづくり体制の構築
導入のきっかけ
スマート工場プロジェクトの一環として、ガラスびん製造工程にIoTプラットフォームを導入
1888年にガラス容器メーカーとして創業以来、「ガラスの持つ可能性を見つめ、生活文化の向上に貢献する」を基本理念に、ガラスびんから各種ガラス関連製品を製造するメーカーへと成長してきた東洋ガラス。同社は生産効率の向上、労働力不足への対応、脱炭素社会の実現などの課題に対応するため、2020年10月からスマート工場プロジェクトを開始しました。プロジェクト立ち上げに参画した生産技術部 生産情報課 課長の明渡俊治氏は、その概要について次のように説明します。

生産本部
生産技術部 生産情報課
課長
明渡 俊治 氏
「『少ないエネルギーとその時代の労働人口に合わせた人員体制により、ガラスびんを高効率で生産できる工場』をあるべき姿とし、“見える工場”“止まらない工場”“効率性の高い工場”“つながりのある工場”の4つを基本方針にプロジェクトを進めています。プロジェクトの施策の一つとして、3現(現場・現物・現実)のさまざまな情報をデジタル化して収集・見える化・分析することで新たな改善の糸口や原理・原則を発見し、製造プロセスの改善や作業の変革を実現することを掲げています」
ガラスびんの製造工程は、ガラス溶解窯に原材料を投入し、約1500℃で溶かすことから始まります。溶解されたガラスは、びん1本分のゴブ(ガラス玉)にカットされ、金型に流し込まれてパリソンと呼ばれるびんの原形に成形されます。その後、パリソンをびんの形状をした金型に移し、高圧空気で膨らませます。
一見シンプルな工程ですが、製造途中のガラスは環境や温度の影響を受けやすく、歩留まりを高めることは容易ではありません。また、同社が手がける製品の種類は約2,000以上に及び、丸形や角形、口部径の大小など多様な形状があります。さらに日ごとに製造製品が変わるため、ガラス溶解窯から成形機に流れるガラスの量や温度は毎日のように変動します。そのためガラスびんの成形プロセスには職人技が求められます。
同社は、定量データに基づく意思決定を可能にするものづくりへの転換を実現するため、ヒト・燃料・原料・設備・業務プロセスをデータ駆動で改革できるIoTプラットフォームの導入を決断しました。
導入の経緯
「スモールスタート」「短納期の構築」「クラウドへのデータ保存」を評価しコベルコシステムを採用
東洋ガラスは複数の候補を比較・検討した結果、2022年9月にコベルコシステムの「IoTプラットフォームサービス」を採用することを決定しました。その決め手は「スモールスタート」「短納期での構築」「クラウドサービスの活用」の3点にありました。明渡氏は採用理由を次のように述べます。
「初期投資を抑えてスモールスタートが切れること、データ収集から加工、可視化までを2カ月という短納期で構築できること、PLCの生データをそのままAmazon Web Services(AWS)に吸い上げて安価に長期保存できる点を評価しました。他社の提案は要件定義の後に明確なグランドデザインを描いて開始するものでしたが、先が見えない状況では走り始めてから見えてくる課題もあると考え、リスクを感じました。その点、最初から大きな投資を求めずスモールスタートで徐々に領域を拡大していくコベルコシステムの提案は魅力的でした」
また、AWSの拡張性や機械学習系サービスの充実、コベルコシステムがKOBELCOグループのシステム構築に携わってきた実績により製造業のIoTシステムに精通している点も採用の判断材料になりました。
加えて同氏は、コベルコシステムの製造DXに対する思想にも共感したと述べます。提案資料には次のような文言がありました。
「製造現場の3現(現場、現物、現実)をつぶさに観察し、データを分析して新たな発見や改善の糸口を見出す。この原理に基づき製造方法の改善や変革を行い、新たな原則を確立する。DXを実現するためには、これら5ゲン(3現+2原)を素早く繰り返し回す仕組みが必要である」
製品情報と周辺情報を紐付ける仕組みの確立
2022年11月、東洋ガラスはIoTプラットフォームのプロジェクトを開始しました。まず、PLC接続やファイル転送を通じて設備データを収集・蓄積し、可視化・分析するための共通データ基盤を構築しました。さらに、生産計画と型替実績の2つの情報を用いて、現在生産している製品とIoTで得られるデータの紐付けを行いました。明渡氏は次のように説明します。
「当社では製造実行システム(MES)や実績収集システムにより工程管理の結果情報をきめ細かく収集・可視化する仕組みは構築済で、すでに運用しています。一方原因系の情報や計量値データの収集・活用が進んでいない状況でありました。今回はこれら情報と生産実績を紐付けるため、データを整理しながらプロジェクトを進めました」
同社はユースケースとして、コンプレッサーの最適制御のためのIoT化とデータ収集基盤の構築、品質不良検知システムの導入、成形周辺設備の異常検知システムの構築などに取り組んでおり、現在も複数のプロジェクトを並行して進めています。
導入の効果
ゴブの落下状態を可視化、異常を検知することで製品不良を防止
東洋ガラスのプロジェクトは取材時点(2025年7月)で3年目に入りました。直近の成果の一つが、ゴブ(ガラス玉)の落下状態を可視化するシステムの構築です。成形工程では、溶解したガラスからカットされたゴブがトラフ(樋)を滑り落ちて金型に投入されますが、ゴブの形状や温度、トラフの摩擦係数などの要因で滑落タイミングに遅れが生じると製品不良につながることがあります。そこで同社は、ゴブの長さ・温度・重量や樋を流れる速度などをモニタリングして遅れを検知する装置を開発し、GAM(Gob Arrival Monitor)と命名しました。これは同社独自の技術として既に特許を取得しています。明渡氏はこの技術について以下のように説明します。
「ゴブの投入はコンマ何秒の世界で行われており、人間の目で確認することはできません。これまでは検査工程で不良が見つかるまでゴブ遅れを検知できませんでした。GAMでは2つの角度からラインセンサーカメラでゴブの落下状態を撮影し、タイミングを数値化してIoTプラットフォームに転送します。計測値はダッシュボード上に時系列で表示され、落下遅れの異常を検知した際は現場のオペレーターに通知します。オペレーターは現場で装置や樋の状態を確認・調整することで製品不良を防止できます。GAMの導入によりゴブ遅れのトラブルは減少し、現場の生産性向上にも寄与しています」
現在は取得データをもとに統計的手法で落下遅れを検知していますが、遅れを予防する仕組みとして、ゴブの落下タイミング、形状、ガラス温度などの情報を活用した欠点予兆検知AIアルゴリズムを独自に開発し、検証を重ねています。同社はこのシステムについても特許を出願中です。
「統計的手法だけでは結果の予測はできても原因の追及は難しい。原理が分からなければ原則も確立できないため、AIを活用してゴブ遅れを発生させない仕組みの実現を目指しています」と明渡氏は述べています。
今後の展望
現場とのコミュニケーションを重ねつつ、独自のAIモデルの開発を目指す
東洋ガラスは今後について、新たなテーマを模索しながら、データの可視化・分析領域を拡大していく方針です。

生産本部
生産技術部 生産情報課
荻野 沙織 氏
「今後の取り組みについては、どのようなデータを集めるかが悩みどころですが、アイデアのヒントは現場に眠っていると思いますので、現場の担当者とコミュニケーションを重ねつつ、次の一手を考えていきます」(明渡氏)

生産本部
生産技術部 生産情報課
大竹 達也 氏
そして同社が最終的に目指しているのが、AIを活用した異常検知や不良検出装置の自社開発、および判定に用いる計量値の分析モデルの開発です。
「生産するびんについて1本単位で計量値を収集・分析することで、びんの出来映えの傾向が見えてきます。そこで、大量の計量値をクラウド上に保存し、AIでクラスタリングしながら分析することができれば、品質低下が起こる原因の特定も容易になり、現場にフィードバックすることで製品の品質向上に寄与できるはずです。そのためにも、当社独自のAIモデルの開発を進めていきたいと思います」(明渡氏)
プロジェクトを支援してきたコベルコシステムについては、製造業に関する豊富な知識とノウハウを評価しており、今後も新たな技術提供に期待を寄せています。
「国内の製造業で、IoTやAIを活用し成功を収めている例はそう多くありません。当社としては、実用可能なAIモデルを一刻も早く作りたいと思っていますので、どういったものを作ればよいのかといった情報整理も含めて、引き続き協力をお願いします」(明渡氏)
また同社は、定例ミーティングにおけるコベルコシステムからの提案や情報提供も高く評価しています。生産技術部 生産情報課の荻野沙織氏は「コベルコシステムは単純に私たちの要望を聞くだけでなく、“これをやりましょう”と積極的に提案してくれるので、チームとしての一体感を感じます」と述べ、生産技術部 生産情報課の大竹達也氏も「私にとって定例会は貴重な情報を聞くことができる大切な場です。今後も学びを続けていきたいと思います」と語ってくれました。
左からコベルコシステム 幾井(担当PM)、杉山(担当SE)、東洋ガラス 大竹氏、荻野氏、明渡氏、コベルコシステム 金田(担当営業)※この記事は2025年7月時点の内容です。
導入された企業様


東洋ガラス株式会社
創業:1888年4月
設立:1942年11月
所在地:東京都品川区東五反田2-18-1 大崎フォレストビルディング
URL:https://toyo-glass.co.jp/
資本金:9億6000万円
年間売上高:351億円(2025年3月実績)
従業員数:807名(2025年3月末)
〈事業内容〉
・各種硝子製品の製造販売
・各種硝子製品の製造に関連する諸機械器具の設置工事の施工
・不動産賃貸
・付帯関連する事業
〈会社概要〉
総合容器メーカー東洋製罐グループの中核企業としてガラス事業を展開。近年は、社会構造の変化に合わせて多様化するニーズに対応するべく、素材の開発からデザイン・技術・製造・販売までの一体運営を推進している。環境活動にも積極的に取り組んでおり、温室効果ガス排出量の削減に寄与するため、2025年12月に行われる千葉工場ガラス溶融窯1基の大規模修繕では、燃焼方式を空気燃焼から酸素燃焼に変更することを予定している。1日当たりの生産能力が200tを超えるガラスびん用大型ガラス溶融窯において、酸素燃焼方式が導入されるのは国内初のケースで、これにより溶融窯1基あたりのGHG排出量が約20%削減されると見込まれている。
導入したソリューション&サービス
関連する導入事例

神鋼鋼線工業株式会社様
製品品質の向上を目指しリアルタイムでデータを取得・分析できる環境を構築、スマートファクトリーの実現へ

株式会社ノーリツ様
現場の意識改革を果たしDELMIA Aprisoを導入、製造コスト改善と生産効率化を目指す
















![コベルコシステムを選ぶ理由 [Company Strength]](/common/images/2018/banner_strength_ub.jpg)

