株式会社ノーリツ様

現場の意識改革を果たしDELMIA Aprisoを導入、製造コスト改善と生産効率化を目指す
- 導入したソリューション
- エンタープライズMESソリューション DELMIA Apriso
- キーワード
- MES、DELMIA Apriso、PLM、ものづくりDX、データドリブン経営
導入前の問題
- 原価(加工費)の実績を精緻に把握しておらず、原価企画が困難だった
- 部品ロットを荷受け日単位でしか管理できず、不具合発生時のトレースに時間を要していた
- 長年の慣習や従来のやり方に固執し、業務変革意識が希薄だった

導入後の効果
- 実績データの自動収集が可能となり、BOP情報を活用した原価企画の基盤を構築
- 受け入れ部品のロットと親製品のシリアルとを紐づけ、トレーサビリティが飛躍的に向上
- DXを“自分事”として主体的に取り組む姿勢が定着し、部署を越えた議論も活性化。自由闊達な風土が醸成
導入のきっかけ
中期経営計画の一環としてMES導入に着手
ノーリツでは1951年以来、「新しい幸せを、わかすこと」をミッションに、給湯器やコンロなどキッチン周りの機器、温水式床暖房、太陽エネルギーシステムなど住宅に欠かせない設備機器の製造・販売・サービス事業を展開しています。特に給湯器などのガス機器は国内シェア2位を誇り、独自に設けた厳格な基準をクリアすべく、耐久性テストを実施し製品安全への取り組みを行っています。ノーリツでは2020年から23年までの前中期経営計画「Vプラン23」で、ものづくりDXの全体構想を定め、23年から26年までの現中期経営計画「Vプラン26」では生産革新への戦略投資も明確に宣言し、ものづくりDXに求められるITインフラの整備を着実に進めてきました。その一環として、MESの導入が盛り込まれました。
同社ではMES導入以前の課題として、製品原価のうち特に加工費が精緻に管理できていない状況があり、製品開発企画時点での原価管理の精度向上と予実を管理できる環境が求められていました。
データドリブン経営にはMESが不可欠
「DX戦略推進プロジェクト」に取り組んできたプロダクツ統括本部 原価管理本部 業務改革推進部 部長 鈴木亮太氏は 「2021年7月から中期経営計画Vプラン26の変革課題を模索。2030年に向けての取り組み課題を明確にし、PLM最適化による原価の最適化とデータドリブン経営への変革を提案しました。その際、管理システムの整備に加えて、データドリブン経営に不可欠な予実管理や日々の実績収集をどう実現するかを検討した結果、MESの必要性に気づきました」と振り返ります。また、同社の既存システムはERPからの指示を受けた上で生産を行うことは可能だったものの、実績やトレースのデータが設備に残ったままで、ものづくりDXを推進する上で改善する必要があったといいます。

導入の経緯
どれだけ製品を効率よく作れるか、組み立てられるか

プロダクツ統括本部
原価管理本部 業務改革推進部
部長
鈴木 亮太 氏
MESの導入に際して、同社が期待したのは生産効率の改善と製造原価のミニマム化でした。「MESが生産の仕組みの一部として介入し、本体組み立てラインとサブ組み立てラインの連携を図って効率化につなげるような効果を期待していました」(鈴木氏)


経営企画本部
DX推進統括部 IT推進部
グループリーダー
山本 仁志 氏
ベンダーの選定にあたっては、数社の候補が挙がりましたが、最終的にコベルコシステムを選びました。その理由について、DX推進統括部IT推進部の山本仁志氏は「コベルコシステムにはこれまでもERPシステムなど、当社の基幹システムの導入実績があり、今回も入念な提案書を作成していただきました。当社からもMESの導入から切り替えまで、さまざまな要求を出しましたが、それに最も応えていただける提案でした」と話します。 DELMIA Aprisoは、標準機能がありつつ、ものづくりメーカーの独自性の強い部分を柔軟に吸収できるパッケージシステムだったことが選定理由になりました。
万全のフォロー体制でスムーズな移行が実現
システム導入におけるコベルコシステムのフォロー体制は万全だったといいます。MES導入前の確認や設計、開発テストの段階からコベルコシステムの担当者がノーリツの工場に赴き、直接対話しながらプロジェクトを進めることができました。MESへの切り替え当日に検査設備が想定通りに稼働せず、コンベアが次の工程へと進まなくなるトラブルが発生しましたが、その際もコベルコシステムのフォローによって短時間で解決することができました。
「コベルコシステムはDELMIA Aprisoの導入経験が豊富で、OPCやPLCの連携といった部分のトラブル解決の知見もお持ちだったので、助言をいただきながら発生した問題を解決できました」(山本氏)
その一方で新たなシステムを導入するにあたり、製造現場からは、ラインの在庫管理をRFIDで実現してほしいなどのリクエストがありました。しかし、そこには個々の機能に対してROIの議論が必要で、至れり尽くせりにはなりません。また、そもそもは当初からMESの導入に抵抗する声も上がっており、現場に理解してもらえるよう努めたといいます。
「現場をその気にさせるのに時間がかかりました。長い時間をかけて当社が独自で確立・醸成してきたものづくりのやり方への信頼もあり、変革思考から遠のいている面があったと思います」(鈴木氏)
それまで同社の製造現場では、長年「自分たちがやってきたものづくりのやり方が一番」という意識があり、それが結果的に大きな変革に対するチャレンジ精神を弱めていました。独自の製造システムを確立していたこともあり、新たな取り組みに際して、製造現場からの抵抗があったといいます。今までのやり方の方が確実だという思考が強く、マインドに変革をもたらす必要がありましたが、プロジェクトチームのメンバーがMESの必要性を訴え続けることによって、現場の全体的な風向きが次第に変わり、最終的には大きな抵抗もなくMESの導入に漕ぎ着けました。
導入の効果
MESによって原価最適化・トレーサビリティ強化を実現
同社のMESは、2024年10月にサービスインしました。それから数か月経過した現在、製造の現場では役職に関係なく、ものづくりDXを自分ごととして捉え、進められるような雰囲気が醸成され、積極的にリーダーシップを取ろうとする社員が増えてきたといいます。特に若手社員の意識は変わったようです。

プロダクツ統括本部
生産本部 生産企画部
MES構築PJ
プロジェクトマネジャー
坂本 直輝 氏
検査実績も従来は合格基準に対する結果データを設備から取り出せなかったのに対して、MESから検査結果データを抽出してBIツールに連携できるようになりました。その結果として数値を共有しやすくなり、見える化を達成しました。また、BOP(Bill of Process:工程表)を導入したことにより、今までは存在していなかった製造工程のデータがMESに集約されるようになりました。このデータを活用することで、製造現場では効率の改善につなげています。トレーサビリティの面でも変化が起こりました。従来は部品ロットの管理が荷受け日単位でしか管理できず、不具合が起こった部品の特定に時間がかかっていましたが、MESの導入後は親製品のシリアル番号や受け入れ部品のロットの紐付けができるようになり、不具合が発生した製品の特定がしやすくなりました。万一、品質問題が発生した場合でも製品の販売先特定が容易になったのです。
一方でMESを導入して日が浅いこともあり、経営的な効果は数値に現れていないのが現状です。ただ、同社では現在、次期新製品の生産ラインを設計中で、そのラインの稼働後はMESの導入による経営的な数値の改善が期待されています。
「製造時間をどれだけ短縮化し、製造に携わるスタッフの人数をどれだけ適正化できるかを念頭に置きながら、投資対効果を出していきたいと思っています。実績収集するだけでは効果が出ないということもありましたが、自働化を並行して進めることなどでROIの組み立てがストーリー化されることによって、ようやく説得力が得られるのではないでしょうか」(鈴木氏)
今後の展望
明石本社工場を国内外生産拠点のマザー工場へ
現時点で同社がMESを導入しているのは、明石本社工場のみですが、今後は同工場をマザー工場として機能させたい展望があります。「国内・海外に、本社工場に給湯器の部品を納入するグループ会社が存在します。これらの会社と明石本社工場との連携を強化したいと考えています。そのためには、まずPLM(製品ライフサイクル管理)の統一を進める必要があります。生産系のグループ会社を当社の生産ラインの延長として捉えることで、現在よりもさらにシームレスな連携が可能になるのではないかと考えています」(鈴木氏)
より精緻な原価管理も期待するところです。新製品の設計を進めながら、製造に必要なBOP情報を積み上げることで、新製品のより精緻な原価企画を実現できる可能性があります。そうすることで新製品の企画段階からどれくらいの原価が必要で、売れる見込みのある製品なのか、判断しやすくなるからです。コベルコシステムとの連携もさらに強化したい意向です。「今回、当社で導入したDELMIA Aprisoを他社でも運用支援されていると伺いました。コベルコシステム様から他社様の運用状況など、最新ノウハウを享受したいです。」(坂本氏)
「当社では重要なシステムの構築や保守運用をコベルコシステム様にお願いしていますが、当社のことを最もご理解いただいているビジネスパートナーだと思っています。これからも遠慮なく意見を交わし、お互いに成長し、ともに新しいことに挑戦し続けられる関係でありたいですね。」(山本氏)

前列左からノーリツ 坂本氏、山本氏、鈴木氏
後列左からコベルコシステム 小田原(MES営業)、上埜、鎌田(担当営業)
※この記事は2025年7月時点の内容です。
導入された企業様


ノーリツの代表製品
株式会社ノーリツ
創業:1951年3月
所在地:神戸市中央区江戸町93番 栄光ビル
URL:http://www.noritz.co.jp/
資本金:201億6,700万円(2025年6月12日現在)
売上:2,022億400万円(2024年12月期)
従業員数:連結 6,128名/単体 2,038名(2024年12月31日現在)
〈事業内容〉
温水空調分野を中心とした住宅設備機器の製造、販売、サービス
〈会社概要〉
1951年に設立された住宅設備機器メーカー。給湯機器や温水暖房機器など温水空調分野の製品の製造、販売、サービスに取り組む。
特にガス機器のシェアは国内2位であり、独自の基準の耐久性試験を行い、安全な製品づくりに尽力している。一方、独自のUV除菌ユニットを開発するなど、技術革新にも熱心なメーカー。
導入したソリューション&サービス
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