豊田通商システムズ株式会社様
日本の商習慣に対応したテンプレートを用いDynamics 365による新会計システムを導入、今後はシステムのグローバル統合も目指す
- 導入したソリューション
- Dynamics 365クラウド会計テンプレート:HI-KORT 365
- キーワード
- Dynamics 365、クラウド会計システム、システム統合、グローバル展開、テンプレート
導入前の問題
- 分社後、経理担当者が半減するため業務負荷が高まる懸念があった
- (新システム検討にあたり)将来グローバルに迅速な意思決定をおこなうには、拠点毎に異なる会計システムのままでは難しい
- (新システム検討にあたり)海外製ERPを日本の経理業務で運用するには、アドオン開発に時間とコストがかかる懸念があった
導入後の効果
- テンプレート活用によりアドオン開発を抑え、短期間でDynamics 365による新会計システムを構築
- 新システムで入出金処理を自動化するなど、大幅な業務の効率化とガバナンスの強化を実現
- 海外でも実績のあるDynamics 365を採用することで会計システムのグローバル統合が視野に入った
導入のきっかけ
会社分割を機に新たな会計システムへの移行が必要に
コーポレート本部 経営管理室
財務経理チーム
チームリーダー
堀井 康博 氏
2019年4月、トヨタグループおよび豊田通商グループに向けてIT事業を展開してきた豊通シスコムから、トヨタグループ向けの事業を中心にビジネスを展開するかたちで誕生した豊田通商システムズ。同社は「人・社会・地球との共存繁栄を図り、ICT事業活動を通じて社会に貢献する」を経営理念に、インフラを支えるクラウドサービスから、モビリティ社会に対応した自動車向けサービス、ブロックチェーンを活用した電子商取引サービスまで、さまざまなITサービスとソリューションを提供しています。
同社の事業を支える会計システムは、これまでスクラッチで開発したシステムを利用してきましたが、会社分割を機に新たな会計システムへ移行することになりました。このことについて、コーポレート本部 経営管理室 財務経理チーム チームリーダーの堀井康博氏は「2021年3月までに新たな会計システムへ移行することを検討していました。また新システムによって、より一層の業務の効率化とガバナンスの強化を推進したいと考えていました」と語ります。
導入の経緯
日本特有の商習慣に対応したテンプレートを活用
豊田通商システムズは複数のソリューションを比較・検討、その中からコベルコシステムが提案した「Dynamics 365クラウド会計テンプレート:HI-KORT 365」を採用しました。HI-KORT 365は、マイクロソフトのクラウド型ERP「Dynamics 365 for Finance and Operations」の会計機能に、コベルコシステムの持つノウハウをもとに日本特有の商習慣に対応した各種機能を追加したテンプレートです。同社がHI-KORT 365を採用した理由について、堀井氏は次のように語ります。
「グローバルでのシステム統合を視野に入れていたため、海外拠点でも利用することができ、当社の事業規模に見合ったシステムであることがDynamics 365の導入を決めた第一の理由です。また、コベルコシステムのHI-KORT 365は、日本特有の商習慣に対応した機能を標準で備えていたこと。そして、HI-KORT365の導入実績が多数あったことを評価し、採用を決めました」
導入プロジェクトは2018年11月にキックオフ。要件定義フェーズ、実現化フェーズ、移行・検証フェーズを経て、11カ月後の2019年10月に本稼働を目指すスケジュールでした。会計システムとして導入するモジュールは、買掛金管理、売掛金管理、総勘定元帳、手形管理の4種類でした。
同社は、経理のコア業務を担当する経理チームと、周辺業務を担当する業務チームの2つをプロジェクトの推進主体とし、IT部門は全体のマネジメントやインフラ領域をサポートする体制をとりました。要件定義フェーズでは、実際のマスタデータを使ってプロトタイプ環境を用意し、経理チームや業務チームが中心となってFit&Gapを実施。また実現化フェーズでは、HI-KORTの機能強化やインターフェース開発を行い、検証フェーズでは本番データを利用した統合テストや受入テスト、エンドユーザーの操作教育などを実施しました。
Fit To Standardを貫き、アドオン開発を抑え11カ月で導入
プロジェクトは、HI-KORTテンプレートの標準機能を徹底して活用する「Fit To Standard」を基本方針とし、現行業務と合わない部分は運用方法を変更することでカバーするなどして、アドオン開発を極力行わずに進められました。わずか11カ月という短期間で移行できたのは、こうした方針と経理・業務チームが積極的に開発へ関与したことにあるといいます。
「今回、試算表(TB)、貸借対照表(BS)、損益計算書(PL)、部門別のPL、単月・累計の財務諸表など、帳票の設定はすべて内製で開発しました。将来的にはキャッシュフロー計算書(CF)まで内製化する予定です」(堀井氏)
コーポレート本部 経営管理室
財務経理チーム
有村 紗耶香 氏
検証フェーズの受入テストでは、経理チーム、業務チームの各担当者が実データを使い、通常の月次処理が滞りなく進むか、入金処理が銀行システムと連携できるかなどを確認しました。コーポレート本部 経営管理室 財務経理チームの有村紗耶香氏は「月次処理のテストでは、経理チームの担当者が過去のデータを使って正しいデータが出ることを確認したのですが、これが結果的にユーザートレーニングとなり、移行後もスムーズに業務を始めることができました。入金処理では、新たに相殺処理を実行する夜間バッチ機能を追加しましたが、コベルコシステムの専門性の高いサポートのおかげでスムーズに検証を行うことができました」と振り返ります。
新システムの本番稼働は、分社前後の業務の混乱を避けるべく、分社化から半年後の2019年10月に設定。新旧システムを並行稼働させることなく切り替えています。
「切り替え前の8月、9月の2カ月でデータ移行を実施しました。移行リハーサルを念入りに実施したこともあり、トラブルなくスムーズに切り替えができました。プロジェクト全体を通してコベルコシステムからは手厚いサポートを受け、人財力や技術力の高さを実感しました」(堀井氏)
新会計システム移行のプロジェクトスケジュール
導入の効果
新システムにより業務を自動化、入出金処理業務などの効率化とガバナンスの強化を実現
今回、豊田通商システムズが導入したシステムは「GATTS(Global Accounting System for TTS)」と名付けられ、順調に稼働しています。
「これまでは入出金処理において銀行から取得した伝票データをシステムに入力する際、入金先を取引先コードに紐付ける作業があり、人の手で対応していましたが、新システムでは自動で紐付けされるようになりました。また、入金消込も債権データと一致していれば自動的に処理されるようになったため、大幅な業務の効率化と品質向上が実現しました」(有村氏)
同社は分社化により経理担当の社員が半分に減ったとのことですが、新システムのおかげで負荷が増えることなく業務が回っています。さらに、新システムのチェック機能も有効的に働き、ガバナンスの強化も実現しています。
今後の展望
新システムをベースにDynamics 365によるグローバル統合を目指す
コーポレート本部 経営戦略部
経営企画グループ
近藤 昂也 氏
今後、豊田通商システムズは国内の新会計システム「GATTS」をベースに、現地特有の税制や帳票などへのローカライズをおこない海外7カ国11拠点へDynamics 365を展開し、会計システムの統合を図っていく方針です。既に2拠点には導入済みで、その他の拠点にも今後導入していく予定です。海外への導入においてもコベルコシステムの支援を受けており、さらなるアドバイスに期待を寄せています。
コーポレート本部 経営戦略部 経営企画グループの近藤昂也氏は「国内外のシステムが統合されることで、日本と同じ粒度かつ同じタイミングで海外の財務状況などが確認できるようになり、意思決定のスピードアップや不正のチェックなど企業ガバナンスの向上を実現する見込みです。コベルコシステムには海外の導入においても、プロジェクトやクラウドの管理面などで引き続き支援をお願いしたいです。」と語ります。
世界を視野にいれた豊田通商システムズのチャレンジは今後も続いていきます。
左からコベルコシステム横川(PM)、豊田通商システムズ 堀井氏、有村氏、近藤氏、コベルコシステム 岡(営業)
※この記事は2021年7月時点の内容です。
導入された企業様
豊田通商システムズ株式会社
設立:1994年3月
所在地:愛知県名古屋市中村区名駅4-11-27 シンフォニー豊田ビル
URL:https://www.ttsystems.com/jp
資本金:4億5,000万円
従業員数:348名(2021年4月1日現在) ※グローバル全体:1,097名
〈事業内容〉
海外を含むトヨタグループを中心とした企業向けIT機器およびサービス/クラウドインフラ/エンジニアリングサービスの提供
〈会社概要〉
2019年4月、会社分割に合わせて豊通シスコムから商号を変更した。トヨタグループの企業に向けて、クラウドサービス、セキュリティ、コネクテッド、デジタルエンジニアリング、エンタープライズなど、多彩なソリューションとサービスを提供。自動車向けセキュリティサービスやソフトウェア配信サービス、ブロックチェーンを活用した電子商取引クラウドサービスなど、画期的なサービスの開発にも取り組んでいる。現在は、シンガポール、タイ、中国、インド、インドネシア、米国、ドイツ、ベルギー、英国のグループ会社と連携し、ワールドワイドに事業を展開中。
導入したソリューション&サービス
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