株式会社神戸製鋼所様

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グループ全体の財務会計のガバナンス強化に着手。現地に合わせた会計標準テンプレートで、Dynamics AXを中国4拠点に導入

導入前の問題

  • 会計ルールの高度化・複雑化による会計処理でのミス発生リスクの高まり
  • 事業が多岐にわたるため会計事象が多様であり、会計処理も複雑・高度に
  • 事業の海外展開の加速により決算精度の維持が困難に
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導入後の効果

  • グループ標準の展開による財務会計のガバナンス強化および決算精度の向上
  • 会計業務の標準化・可視化、帳票やデータ連携のシステム化による業務効率化

導入のきっかけ

グループ全体の財務会計のガバナンス強化に着手。現地に合わせた会計標準テンプレートで、Dynamics AXを中国4拠点に導入

素材系と機械系を中心に幅広く事業を展開する株式会社神戸製鋼所は、会計ルールの複雑化に起因するリスクなどに対応するため、2020年度を目標に神戸製鋼グループ全体の会計業務の標準化を進めています。この際、海外のグループ企業への展開を進めていくにあたり、標準会計システムとしてMicrosoft Dynamics AX(以下、Dynamics AX)をベースとしたコベルコシステムの会計テンプレート「HI-KORT AX会計テンプレート(現:365 for Operations/Finance)」の導入を決定。最初の展開地域である中国に向けて、会計標準テンプレートを新たに開発し、2017年3月に先行4社への導入を終えました。

財務会計のガバナンス強化や決算精度向上などを目指すグループ経理業務標準化プロジェクトが発足

コベルコシステム株式会社 SO本部 第1サービス部 本社・技開システム室 木戸 貴之
コベルコシステム株式会社
SO本部 第1サービス部
本社・技開システム室
木戸 貴之

1905年の創立以来、広く社会や産業の発展に貢献してきた神戸製鋼グループ。今では世界16カ国・97拠点で事業を展開しており、取引先である製造業の顧客に寄り添うかたちで海外進出を続けています。しかし、海外の拠点の数が増えるにつれ、グループ各社の会計プロセスや事業の違いによる処理が複雑化、国内外の精度の差などの課題が顕在化してきました。 この点について、同グループでシステム開発・運用などを担うコベルコシステム SO本部 第1サービス部 本社・技開システム室の木戸貴之は「1つは会計ルールの複雑化に起因するリスクです。国が変われば会計の基準も変わる上、業務プロセスも年々複雑になっており、ミスの増える可能性が高まりつつありました。2つめは事業の多様性に起因するリスクです。神戸製鋼グループの事業は多岐にわたるため会計事象も多様化しており、処理が複雑になりがちでした。3つめは海外展開に起因するリスクです。新規の法人設立やM&Aで積極的に海外展開を仕掛けている中、現地の会計監査だけでは決算の精度を保つことが難しくなっていました」と説明します。

同グループではこれら3つのリスクを回避するため、グループ共通の(1)会計基準(2)会計業務プロセス(3)会計システム・コード体系の3つを定めた「グループ経理業務標準セット(以下、標準セット)」を作成し、各社に適用することを決定しました。財務会計のガバナンス強化、決算の精度向上、業務の効率化の3つを実現するべく、2020年までに標準セットを国内外のグループ各社に適用完了を目指すプロジェクトがスタートしたのです。

「グループ経理業務標準化プロジェクトは、会計の領域に横串を通し、将来的には他の業務領域についても標準化することを見据えたキープロジェクトです。コベルコシステムは、この取り組みの初期段階からチームの一員として参画しています。」(木戸)

導入の経緯

導入実績と操作性などを評価しDynamics AXを採用、HI-KORT AXテンプレートを活用し開発効率アップを狙う

グループ経理業務標準化プロジェクトは、国内のグループ企業に対する標準セットの展開から始まりました。日本の会計基準と業務プロセスに沿った国内向けの標準会計システムの開発を2014年12月にはじめ、2015年4月から適用を開始、およそ20社に展開が完了していました。

そして、海外のグループ企業への標準セットの展開については、中国をその最初の展開先とし、2015年4月から要件の整理、ベンダー選定が開始しました。

「海外での展開については、連結/非連結の子会社あわせて約100社への適用を検討していますが、事業の重要度、会社の規模、緊急度の高さ、既存システムの更新時期などを考慮し、中国で先行することになりました」(木戸)

一方、プロジェクトで海外に展開するシステムについて神戸製鋼グループでは、企業規模に応じてSAP ERP、Microsoft Dynamics AX(以下、Dynamics AX)の2つのERPパッケージを「グループ標準会計システム」として規定しました。中国のグループ各社にシステムを展開するにあたっては、日本独自の商習慣に対応したアドオン機能などを付加し、国内のグループ展開でも導入実績を持っていたコベルコシステムのDynamics AX導入テンプレート「HI-KORT AX会計テンプレート(以下、HI-KORT AX)」をベースに進めることに決定。Dynamics AXとHI-KORT AX会計テンプレートを選定した理由について木戸は次のように語ります。

「パッケージには、導入実績、優れた操作性、アドオンによる容易な開発などを総合的に評価しDynamics AXを採用しました。さらに、神戸製鋼グループの業務を知り尽くし、長きにわたってシステムを支えてきたコベルコシステムのHI-KORT AXを活用することで、中国向け標準会計システムの開発効率を高めることができると考えたのです」

現地の会計業務に必要な機能を盛り込んだ「中国神鋼標準テンプレート」を開発

コベルコシステム株式会社 ERPソリューション本部 副本部長 (兼) ビジネス開発推進部長 菊地 英
コベルコシステム株式会社
ERPソリューション本部
副本部長
(兼) ビジネス開発推進部長
菊地 英

2016年中国での展開がスタート。約30社が対象となる中、最初の導入先を現地の統括会社である「神鋼投資」に定め、ここでの経験をもとに他の3社へ横展開することにしました。

展開に際しては、まず日本で構築した「神鋼標準テンプレート」をベースに、「中国神鋼標準テンプレート」を作成。具体的には、日本で開発した神鋼グループ標準のアドオン機能と会計テンプレート機能の中から、必要な機能を選んで中国版に移植。さらに中国の会計業務で必要とされる機能や連結決算データの出力機能などを追加し、アドオン機能も新規で開発しました。当時についてコベルコシステム ERPソリューション本部 副本部長 (兼) ビジネス開発推進部長の菊地英は次のように振り返ります。 「パイロット導入先の神鋼投資に加え、3社の経理担当者と一緒に必要な機能について検討しました。やみくもに開発の本数を増やしてしまうとコスト高となるため、中国の会計で必須か、既存環境で代替できる機能があるか、ガバナンスを維持する上で必要かの3つの観点から検討し、アドオン開発を25本に絞り込みました」

中国神鋼標準テンプレートの構成
中国神鋼標準テンプレートの構成


2016年1月、神鋼投資への導入プロジェクトがキックオフ。要件定義、試行環境の構築を経て、7月から既存システムとDynamics AXの並行運用を開始しました。これと並行して残り3社への導入に向けた要件定義に着手し、11月には3社の試行環境を神鋼投資の環境に追加。2017年1月、神鋼投資ともう1社が本番運用に移行し、残りの2社も3月から本番運用を開始しました。

今回の導入で苦労した点について菊地は「中国の担当者に移行を納得してもらうまでが大変でした。というのも、中国は中国で主流の会計パッケージがあり、多くの担当者はそのシステムに慣れ親しんでいるからです。また、Dynamics AXは中国当局から認可が降りないのではという不安の声もありました。そこで中国当局や、中国で事業を展開しているコンサルティングファームなどに問い合わせ、Dynamics AXが中国でも使え、導入実績もあることなどを確認し、これをもとに説得を行いました。システム開発中も、考え方の異なる中国人技術者とのコミュニケーションには苦労しましたが、粘り強く対話を重ねながら信頼関係を築いたことが、短期導入の成功に結びついたと思います」と語ります。

中国固有の勘定コードについては、極力現地に合わせることで業務効率の低下を防止しました。また、インフラをプライベートクラウド化し、神鋼投資が中国の他の3社に対して課金・回収するスキームを構築。コスト軽減に繋げています。サポート体制については、現地にサポートベンダーを置いてオンサイト対応ができるようにしました。

導入の効果

承認フローを追加し、ガバナンスの強化が実現

移行を終えた4社では、業務に承認フローが追加され、ガバナンスは確実に強化されました。また、複雑だった処理が標準化されたことで業務の効率化を果たしました。また、業務プロセス上のミスも減って、決算の精度も向上したといいます。エンドユーザーからも概ね好評だそうです。

今後の展望

中国での経験を活かし米国、東南アジアにも展開

神戸製鋼グループでは今後、標準化の対象となっている残りの中国の会社に対し、順次Dynamics AXに切り替えを進めていきます。また、今回の中国での経験を活かし、米国や東南アジアなど他国へも展開していく予定です。「現在は東南アジアへの展開に向けて、テンプレートの要件定義、協力パートナーの選定に着手していますが、国ごとに会計基準が異なるので、タイ、シンガポールと優先順位を付けて取り組んでいます」(木戸)

神戸製鋼所本社(グループ経理業務標準化チーム)は、今回の導入においてコベルコシステムから全面的な協力が得られた点を高く評価しており、今後についても引き続きサポートを受けることで、グローバル規模でシステムを展開していく難易度の高いプロジェクトを完遂させたいと語っている。

※この記事は2017年3月時点の内容です。

導入された企業様

KOBELCO 神戸製鋼グループ
神戸製鋼所 本社
神戸製鋼所 本社

株式会社神戸製鋼所

創業:1905年9月
設立:1911年6月
所在地:神戸本社 兵庫県神戸市中央区脇浜海岸通2-2-4
東京本社 東京都品川区北品川5-9-12
URL:http://www.kobelco.co.jp/
資本金:2,509億円(2016年3月31日現在)
売上:1兆8,228億500万円(連結:2016年3月期)
従業員数:連結 36,338名/単体 10,833名(2016年3月31日現在)

〈事業内容〉
鉄鋼事業、溶接事業、アルミ・銅事業、機械事業、エンジニアリング事業

〈会社概要〉
大手鉄鋼メーカーとして、鉄鋼、溶接、アルミ・銅、機械、エンジニアリングの5つの事業部門を持つ「複合経営」で事業を展開。2016年度からは「2016~2020年度グループ中期経営計画」をスタート。素材系事業・機械系事業・電力事業の3本柱による成長戦略をいっそう深化させ、盤石な事業体を確立させるための新たなビジョン「KOBELCO VISION "G+"( ジープラス)」に取り組み、グローバル規模での成長を目指している。

導入したソリューション&サービス

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