サトーホールディングス株式会社様

サトーホールディングス株式会社様

パフォーマンスが劣化した基幹システムを性能改善することで安定稼働を実現し、業務の効率・品質を向上

導入前の問題

  • 基幹システム(Oracle EBS)のパフォーマンスの劣化が進行し、しばしば遅延が起きていた
  • 夜間バッチが所定時間内に終わらず、翌日のオンライン処理の開始が遅れる
  • 処理遅延起因のシステム障害の頻発により、担当者の負荷が増加
→

導入後の効果

  • 性能改善により入金引当時間の短縮など、業務の効率化・高品質化が実現
  • 夜間バッチが4時間以上短縮され、当日中に完了するように
  • システム障害が大幅に減少し、監視ツールの導入によりトラブルの早期把握が可能に
サトーホールディングス株式会社(以下、サトーホールディングス)は、バーコードやRFIDなど「自動認識技術」を駆使してあらゆる人やものに情報を付け、その情報を可視化する事で社会のうごきを最適化すべく、ラベルプリンターやハンドラベラーなどのメカトロ製品、ラベルやシールなどのサプライ製品、そしてトレーサビリティ、サプライチェーンマネジメント、資産管理などのソリューションを提供する株式会社サトーの純粋持株会社で、グループ経営戦略の策定・経営管理を行っています。同社は業務のコアとなる基幹システムを2015年に刷新しましたが、トランザクションや蓄積されたデータの増加に伴ってパフォーマンスの劣化が進行、当初の性能を満たせなくなり業務に支障をきたしていました。そこでコベルコシステムに基幹システムの性能改善を依頼。SQLの課題分析、パラメータの最適化、ディスクI/Oチューニングなどの実施を経て、前述の問題を解決しました。これにより、業務の効率化・高品質化が実現。システム障害も大幅に減少しています。

導入のきっかけ

システムのパフォーマンス劣化の進行や障害の頻発で、担当者の負荷が増加

原様
IT推進部
運用グループ
エキスパート
原 秀彰 氏

さまざまな分野へ自動認識ソリューションを提供することを通じ、社会インフラとして多くの人々の生活を支えているサトーホールディングス。同社の基幹システムは、ラベルプリンターやハンドラベラーといったメカトロ製品から、ラベルやシールなどのサプライ製品、業務アプリやクラウドサービスなどのソフトウェアまで、同グループの各種商品の販売・製造を管理しています。同社は当初、大型汎用機上に販売管理システムを構築。その後、2004年にオープン化とともに販売管理とサプライ製品の生産管理の機能をフルスクラッチで再構築しました。さらに2015年に販売管理と会計管理をOracle EBSで統合してリプレースしています。一方で業務プロセスが複雑なサプライ製品の生産管理はフルスクラッチしたシステムを継続して利用し、インターフェースを介してOracle EBSと接続しました。

しかし稼働から時間が経過し、トランザクション量や蓄積されるデータの増加に伴い基幹システムにパフォーマンス劣化が発生し始めます。その原因は、同社特有の複雑な業務プロセスを実現するために構築した多数のアドオンと、インターフェースを介して周辺システムと連携する構成の複雑性にありました。IT推進部 運用グループ エキスパートの原秀彰氏はこの点について次のように説明します。

「当社の基幹システムはOracle EBSを中心としてはいますが、サプライ製品の生産管理を筆頭に、物流倉庫管理、受発注、顧客管理など、さまざまなシステムが接続されています。日中だけでも200本近いインターフェースが常時稼働し、数分に1回の間隔で連携しているのですが、これらが性能要件を満たせないようになり、しばしば遅延が起きてしまっていたのです。具体的には、販売管理からサプライ製品の生産管理への生産指示や納期変更の指示が期待された時間通りに連携されない、反対に納期回答が販売管理に届かないといった状況が発生し、業務に支障を招くようになりました。これがお客様への価値の提供の阻害要因になってしまったこともあります。また、夜間のバッチ処理も想定時間内に終わらず、翌日のオンライン開局が遅れるといったことも起きていました」

加えてシステム障害も頻発し、システム運用の担当者や現場業務の担当者の負荷も増加していたことから、同社は基幹システムの性能改善へ乗り出すことになりました。

基幹システムの問題点
基幹システムの問題点

導入の経緯

選んだ決め手は「人」。担当者のレベルが高く、相性も良さそうなコベルコシステムを採用

サトーホールディングスが基幹システムの性能改善を進めるに際し、複数社の中からパートナーを検討。最終的にコベルコシステムを採用しました。その決め手になったのは、「人」だったといいます。

「コベルコシステムとは、2017年11月にセミナーへ参加したことがきっかけでつながりができました。今回の問題を相談した際には実際に性能改善を担当する技術者の方と直接会話することができ、その場で改善の具体的な話ができました。またシステム運用の現場や業務にも理解があり、これなら信頼できると思いました。他に2社ほど声をかけましたが、実際に担当する技術者が明確でレベルも高かったコベルコシステムへ依頼することにしました。結局、泥臭い性能改善の世界は最終的に“人”なんだと考えていました」(原氏)

今回のプロジェクトは最終的に4つのフェーズに分かれ、2018年2月から14カ月にわたって進めることになりました。2018年2月からのPhase.1では現状分析とプレ改善を目的とし、コベルコシステムの視点から現状の調査を実施、並行してアプリケーションのロジック改修を含まないOSとDBのチューニングによる性能改善を実施します。その後、2018年4月からのPhase.2では、DBサーバーのメモリーを増強。同時に実施したPhase.3では、抜本的対策に向けて、DBサーバー稼動状況の分析を行い、将来性能の劣化を引き起こす可能性のある問題を解決するための方針を決定します。その後、2018年8月からのPhase.4で抜本的対策に着手。SQL単体のチューニングにアプリケーションのロジック改修を含めたOSとDBのチューニング、ファイルシステムチューニングなどを実施しました。

プロジェクト進行スケジュール
プロジェクト進行スケジュール

「Phase.1では現状分析と大きな投資が必要ないOSとDBのパラメータチューニングを行いました。Phase.2ではPhase.1の分析結果を元に手をつけやすいハードウェアレベルでの改善を実施、当面のボトルネックを解消して抜本的対策を行うPhase.3以降の時間を稼ぎました。さまざまなチューニングが発生するPhase.4に入ってからは、当社、コベルコシステム、保守ベンダーの3社体制でプロジェクトを進めました」(原氏)

サトーホールディングスからの性能診断のリクエストに対し、コベルコシステムが提案したのが「SQLの課題分析」「全般的なパラメータの最適化」「ディスクI/Oチューニング」「CPU/メモリー利用の効率化」「その他(管理ツールOracle EMの構成変更など)」の5つです。

「性能劣化は特定の機能だけではありません。基幹システムの全体的な問題でした。Phase.2で得られたボトルネックが解消された状態を維持するため、コベルコシステムには将来に性能劣化を引き起こす要因となる問題を実行時間が長い処理、実行回数が多い処理、ディスクI/Oの多い処理を手掛かりに抽出をお願いしました。同時に保守ベンダーからは業務観点からボトルネックとなる業務処理を抽出してもらい、チューニングすべき対象を洗い出して優先順位を付けました。その後は膝をつき合わせて一つひとつ丁寧に分析し改善を進めました」(原氏)

導入の効果

性能改善・負荷耐性の向上・運用改善が実現し、将来にわたって安定稼働可能な環境を確保

サトーホールディングスが行った今回の施策により、基幹システムの性能改善、負荷耐性の向上、運用改善の3つが実現しました。中でも、システム間のインターフェースに起因する遅延が解消され、生産指示も想定どおりの時間に出せるようになったことが大きいといいます。夜間バッチも以前より4時間以上も早い0時過ぎには終了するようになり、翌日のオンライン処理が遅れることもなくなりました。

「業務面での分かりやすい変化としては入金の自動引当が挙げられます。これまでは入金が集中する月末になると自動引当の処理が12時ぐらいまでかかり、それから未引当分を確認する業務を開始していました。今では10時前に終了するようになり早い時間から確認を始めることが可能になっています。確認に充分な時間が取れるようになったことで精度が上がり、性能改善の前と後で自動引当率が大幅に向上しました。入力ミスの件数も平均で70%以上の削減ができました。性能改善による業務品質の向上が数字として示された好例と言えます。」(原氏)

乾様
IT推進部
部長
乾 英一 氏

さらに性能改善が実現したことで、これまで悩まされてきたシステム障害の件数も大幅に減りました。IT推進部 部長の乾英一氏は「これまでのシステム障害は、インターフェースの遅延がシステムの処理プロセスに影響を与えていたことに起因していたようです。よって性能が改善されたことで障害も減り、担当者のリソースを対応に取られることがなくなりました。また、本番環境および開発環境へ監視ツール(Oracle EM)を導入したことで、DBに関する詳細なアラートが通知されるようになり、何か問題が発生した際もすぐに気づけるようになっています」と語ります。

今回の性能改善は、ハードウェアのみを増強するのと比べても、大きなメリットがあったといいます。

「ハードウェアの増強は手っ取り早く性能向上が期待できますが、OS、DB、SQL、プログラミングなどのチューニングをしなければ根本的な解決になりません。一方、今回の性能改善では目先の課題を解決するだけでなく、将来にわたって安定性が維持できるようになりました。費用対効果もハードウェア増強のみと比べて4倍以上高く、この点は経営サイドにも評価してもらいました」(乾氏)

サトーホールディングスの要望とコベルコシステムからの提案
サトーホールディングスの要望とコベルコシステムからの提案

今後の展望

業務改革と次世代の基幹システム構築を構想。グループ全体のコミュニケーション基盤も再構築

サトーホールディングスは、プロジェクトの終了後もコベルコシステムと引き続き連携し、データベース管理者(DBA)支援のかたちで定期的なヘルスチェックやアドバイスを受けています。また、現行の基幹システムのハードウェアリプレースと並行して、業務改革と次世代の基幹システムの構想に着手、複雑な業務プロセスを支えるシステムの構築も見据えているといいます。

一方、IT推進部内で進んでいるのがグループ全体のセキュリティを強化するためのID管理と、コミュニケーション基盤の再構築です。国内外に拠点を置く同社にとってこれは重要なプロジェクトです。乾氏は「基幹システムの性能改善が実現したおかげで、エース級の社員をこれらのプロジェクトに投入できるようになりました」と語ります。

今回のプロジェクトにおけるコベルコシステムに対する評価と将来の期待について、乾氏は「コスト以上の高いメリットを得ることができ、コベルコシステムには感謝しています。コベルコシステムの担当者はSEから営業まで、ざっくばらんに話すことができ、約束もきちんと守ってくれる印象があります。今後も技術的な面から継続的にお話を聞かせてもらえたらと思います」と述べ、原氏も「コベルコシステムは高い技術力と豊富なノウハウをもとに、最初から最後まで丁寧に対応してくれました。今後もDBに関する支援を中心に、引き続き力を貸していただけたら思います」と語ってくれました。

お客様とともに
左からコベルコシステム 岡本(担当営業)、森(担当エンジニア)、サトーホールディングス 原氏、乾氏、コベルコシステム 都築(担当エンジニア)

※この記事は2021年7月時点の内容です。

導入された企業様

サトーホールディングス 社ロゴ

サトーホールディングス 本社展示ブース

サトーホールディングス 本社展示ブース

サトーホールディングス株式会社

設立:1951年5月
所在地:東京都港区芝浦3-1-1 msb Tamachi 田町ステーションタワーN
URL:https://www.sato.co.jp/
資本金:84億円(2021年3月31日現在)
売上:1,091億円(連結:2021年3月期)
従業員数:5,451名(連結:2021年3月31日現在)

〈事業内容〉
自動認識ソリューション商品の企画・開発、設計、製造、販売、保守および販売促進ソリューションの販売

〈会社概要〉
創業者の佐藤陽が1940年に竹材加工機の製造を開始、1951年に佐藤竹工機械製作所を設立。1962年より製造販売を開始したハンドラベラーは世界的なベストセラーになった。その後、バーコードの普及とともに製品や原材料などの「物」や「人」の動きと「情報」を1枚のラベルで結ぶ「DCS(データ・コレクション・システムズ)& Labeling」の独自ビジネスモデルを展開。現在は、「あらゆるものを情報化して、社会のうごきを最適化する。」をブランドステートメントに、業務の生産性を高める自動認識ソリューションを90超の国と地域で提供している。

導入したソリューション&サービス

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