丸文株式会社様
技術者の枯渇リスク解消と柔軟性の高いシステムの実現に向け、AS/400のRPG資産を安価かつ短期間でJavaへ移行
- 導入したソリューション
- FREEKS Translate 言語移行
- キーワード
- RPG資産、コンバージョン、自動変換
導入前の問題
- RPGを扱う技術者は減少傾向にあり、将来枯渇するリスクがあった
- RPGによる開発では迅速な対応に制約が生じ、将来的なシステムの発展の足かせになる
- スクラッチによるRPGからJavaへの移行は多大な手間がかかる
導入後の効果
- Javaを用いたオープンシステムへの移行により、技術者枯渇のリスクが解消
- Javaへの移行と独自フレームワークの活用で、開発生産性・保守性が向上
- 自動変換ツールを活用することで移行期間を短縮、コストも抑制
導入のきっかけ
技術者の枯渇リスクに対応し、柔軟性・拡張性を備えるべく、ITモダナイゼーションを決断
ICT統轄本部
情報システム開発部
担当部長
椎名 豪 氏
最先端のエレクトロニクス製品を世界中から調達し、電機メーカー、自動車関連メーカー、研究開発機関などに販売している丸文。同社は3,000社を超える顧客へいち早く製品を届けるため、システムの強化を図っていますが、業務のコアとなる基幹系業務システムの領域において、古いシステムでは20年以上前に導入したIBM iを利用しており、その上で、RPGで開発したプログラムが稼働しています。
RPGはIBM i上で運用するシステムでは豊富な実績があり、扱いやすい言語です。しかしシステムのオープン化が進んでいる昨今、RPGを扱う技術者は年々減少傾向にあり、枯渇化が進んでいます。また、RPGの特性上、将来のシステムの発展の足かせになるリスクがありました。これらの点についてICT統轄本部 情報システム開発部 担当部長の椎名豪氏は次のように語ります。
「当社では協力会社に依頼し約10名のRPG技術者を確保、常駐で開発や改修に当たってもらっていましたが、技術者の年齢層が高くなる傾向にあり、将来まで安定して要員の維持・確保できるかどうか不安がありました。また当社が今後、新たな事業領域に進出していく上で、ホストシステムのままではちょっとした変更もすべて自前で対応しなければなりません。小回りの利いたシステムの拡張・縮退ができないというのは、今後のビジネス変化に追随できない可能性がありました」
そこで同社は、基幹系業務システムをJavaベースのオープン系システムへ移行する「ITモダナイゼーション」を決断。2016年から本格的な検討を開始しました。
導入の経緯
高い変換率を誇るツール、RPGに関する知識やノウハウ、ITモダナイゼーションの実績を評価
丸文は、複数運用している基幹系業務システムのうち、「預り品システム」と呼ばれる修理品やサンプル品を扱う管理システムを最初に移行することにしました。まずは規模が小さく、業務への影響が少ないこのシステムからITモダナイゼーションをスタートし、その経験をもとに大規模な販売管理システムを移行する構想です。そのパートナーにはコベルコシステムを選定、「FREEKS Translate言語移行」を用いて移行を実施することにしました。
FREEKS Translate言語移行は、コベルコシステム独自に開発した純国産の自動変換ツールを用いてRPGのソースをJavaへ移行するサービスです。通常、スクラッチによってRPGからJavaへ移行しようとすると多大な手間がかかります。しかしこのツールを活用すれば、約90%以上の高い変換率で自動的に移行でき、移行後の保守性の向上に加え、移行前と同等のレスポンス&操作性を実現します。
このツールの存在が、同社がコベルコシステムをパートナーに選んだ理由の第一ですが、他にもコベルコシステムが日本IBMの関係会社でありRPGに関する豊富な知識やノウハウを持っていること、ITモダナイゼーションで多くの実績があることなどの点が評価されました。
「RPGからJavaへの移行に対応できるITベンダーは国内でも限られており、中でも知名度と数多くの実績を有していたのがコベルコシステムでした。当社が挙げた短期間の納期、安価なコストなどの条件にも対応できるということで、お願いすることに決めました」(椎名氏)
ICT統轄本部
情報システム開発部
DX推進課
担当課長
井畑 吉貴 氏
なお、発注前の2019年秋には概念検証(PoC)を実施。既存のRPG資産が確実に移行できることを確認しています。特に今回は、標準的な開発フレームワークのJava EEではなく、同社が全社システムで採用している固有のフレームワーク(WACs)と3層アーキテクチャへの移行が必須要件となっていたため、PoCで念入りに確認する必要がありました。ICT統轄本部 情報システム開発部 DX推進課 担当課長の井畑吉貴氏は「このPoCにより、WACsへ移行できると技術的に検証できたことから、安心して本番に移ることができました」と語ります。
プロジェクトは2020年1月から開始。移行設計、コンバージョン、テスト、本番移行を経て、11月にすべてが完了しました。行程は計画通りに進んだものの、手動変換の部分で苦労があったといいます。
「ツールを使った自動変換の部分は、バッチ処理を筆頭に極めて順調、かつ品質よく変換することができました。一方で、ユーザーが操作する画面周り(UI)は、ユーザビリティを考慮し大幅にカスタマイズしていたため、ツールでは変換できず、手動で変換する箇所が数多く発生。テストフェーズでは想定外の不具合も出てきました。そこで、コベルコシステムと密に連携をとり、手順をパターン化したり、課題部分を重点的に改善したりすることで、品質を維持しながら移行することができました」(井畑氏)
導入の効果
RPG技術者なしでの運用が可能に、開発生産性と保守性も向上
今回のITモダナイゼーションにより、丸文はRPG技術者の枯渇リスク解消に対する目途が得られ、将来も継続してシステムが運用できる環境を得ることができました。また他の効果としては、丸文の開発標準に準拠したコード生成により、要件の変更に応じたシステム改修に対して開発生産性が向上し、システムの拡張が容易になりました。預り品システムに関しては、コードの40%が自動化。人力でコーディングする部分は約60%まで減っています。
「要件定義や設計の工数はこれまでと変わりませんが、コード生成が40%削減されたメリットは大きく、開発生産性や保守性は確実に向上しています」(井畑氏)
今後の展望
メインの販売管理システムのモダナイゼーションに向けて準備を加速
丸文は今後の計画として、メインの販売管理システムをRPGからJavaへ移行する準備を進めており、最終的にはすべてのシステムをITモダナイゼーションする計画です。これと並行してWACsの改善も進めており、開発生産性と保守性のさらなる向上を図っていくといいます。
「預り品システムはあくまで第一歩であり、今後はより大規模なシステムのモダナイゼーションを順次進めていく予定です。これにより、RPG技術者なしでもシステムを回せるようになり、柔軟な開発体制を整備することが可能になると思います」(椎名氏)
今回のプロジェクトを支援したコベルコシステムについては、コストと納期を厳守したプロジェクトマネジメントを高く評価。次なるITモダナイゼーションにも期待を寄せています。
「当社にとってRPGからJavaへの移行は初めての経験で、最初は不安もありました。しかしコベルコシステムの担当プロジェクトマネージャーのご支援のもと、協業してスムーズにプロジェクトを進めることができました。移行後のシステムはトラブルもなく、順調に稼働しており、非常に助かっています。今後の移行もスムーズに進むよう、引き続き技術的な支援やアドバイスを期待しています」(井畑氏)
左からコベルコシステム 鄭(PM)、丸文 椎名氏、井畑氏、コベルコシステム 岡本(担当営業)
※この記事は2021年7月時点の内容です。
導入された企業様
丸文 本社ビル
丸文株式会社
創立:1947年7月
所在地:東京都中央区日本橋大伝馬町8-1
URL:https://www.marubun.co.jp/
資本金:62億1,450万円(2021年4月1日現在)
売上:2,892億8,300万円(連結:2021年3月期)
従業員数:1,145名(連結:2021年3月31日現在)
〈事業内容〉
半導体・電子部品、システム機器の販売
〈会社概要〉
エレクトロニクス商社として、半導体、電子部品、システム機器などを販売。創業来の「先見」「先取」の精神を継承し、エレクトロニクス商社業界をリードし続けている。最大の強みは、標準品からカスタム品まで網羅した豊富な品揃えと、顧客のニーズに合わせデバイス事業・システム事業が一体となったソリューション提案力、高度な技術サポート力。2021年度を最終年度とする中期経営計画では、「新たな価値を想像するビジネスモデルの構築」、「成長市場に向けた事業開発の促進」、「持続可能な社会に貢献する取り組みの強化」の3つの方針を掲げる。2020年からは空間伝送型ワイヤレス給電技術のライセンス提供サービスやAI 搭載型介護支援ロボット導入、スマートファクトリー向けソリューションなど成長市場に向けた商材の開発に取り組んでいる。
導入したソリューション&サービス
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